第八十五話 まとっているのは何の色? 「セシリアさん」 ロイが声を掛けた、緑色の髪をしたその女性は、振り返ってロイを視界に入れるとその顔を微笑みに変えた。 シャニーやリリーナとは違い、立派な大人の女性の体つきをしている人物のため、ロイは相手の顔を見るために視線を少し上にしている。身長がロイより高いのである。 「ロイ、立派になったわね」 「そうでしょうか? 自分では分からないものですが……」 そう答えるロイの顔は、傍目に見ても幸せそうな柔らかい笑顔だった。 それを眺めているスマブラの女性陣の表情は、それとは打って変わって真剣そのものである。 「城門で見た様子と、なんら変わりがないわね」 「ロイが年上好みだって言うなら、あれで間違いないと思うけど……」 綺麗な人だし、と呟くゼルダに、ナナもプリンも頷いてみせる。そのまま会話を聞いていると、ふとセシリアがこちらの一同を見た。 視線が合い、ゼルダとナナはパッと目をそらす。 「それで、今は何をしているところなのかしら?」 「! セシリアさん、気づいていたんですか?」 ロイもセシリアの視線の先が分かっていたらしく、その相手の発言に驚いたまま続けた。セシリアはロイのほうを見て、にこ、と笑みを見せる。 「楽しそうにしているようだったから、何かしらと思っただけよ。でも、人の事をじろじろと見るのは失礼に当たるから、そこは注意しなくてはね」 「あ、はい」 それを聞いてから、ロイは少し離れた位置にいる女性陣のほうに『おーい』と声を掛けた。ゼルダやナナ、サムスなどはそのロイの行動に驚きを見せる。 「もうバレてるんだから、そんなそっちで見なくたって良いだろ。こっち来いよ」 ロイの口調の変化に、セシリアは少し意外そうに目を見開いた。この台詞を聞き、ナナが走ってロイとセシリアの元へとやってくる。 そしてロイの目の前まで来ると、両手を腰に当てて不満そうな表情で言った。 「もう、私たち呼んだらムードが台無しでしょ!?」 「は?」 その意味が分からずきょとんとするのはロイ。セシリアはナナのその発言を聞き、口に手を当ててフフフと笑った。 ゼルダやサムス、プリンも後から歩いて近づいてくる。誰に対してなのか呆れた表情をしているサムスに、ロイはその意味が分からなかった。 「初めまして、ゼルダと申します」 挨拶をするゼルダに、セシリアも返す。そちらでそうこうしている間に、ナナは不機嫌そうな状態のままロイに詰め寄っていた。 「肝心なのはどういうムードでどういう状態になるかなんだから、私たち呼んだら意味ないの! もう、分かってよね!」 「って、言われてもなぁ……」 頭を掻きながら困った顔で応えるロイ。そういうのをロイは分からないんじゃないのかとプリンが言おうとした時、セシリアが小さく笑って言った。 「ふふ。私とロイは、そんな関係ではないわよ」 「「「えっ」」」 その発言に驚いたのはゼルダとナナ、サムスとプリンと、そしてロイである。 ナナは自らとロイの状態がそうではないと告げたセシリアに、だが不満そうな表情で言った。 「それを言っちゃったら調べる余地がなくなっちゃうじゃない! もう、言わないでよ!」 「ちょ、ナナ……。セシリアさん、すみません」 ずんずんと言い寄ってくるナナをなだめながら、ロイが言った。セシリアはナナの行動に驚きつつも、いえ、と応える。 「では、先ほどからずっとその事を調べていたの?」 「そ! もう、面白くなくなっちゃった! ロイ君、次行こ!」 自分をなだめようとするロイの腕を掴み、ナナが他所へと歩き出す。ロイはおいおいと呆れた様子を見せながら、セシリアのほうを向いて言った。 「セシリアさん、お先に失礼しますね」 苦笑しながら言うロイに、セシリアは小さく笑う。人気者は大変ね、と小声で呟いたが、それはロイの耳へは届かなかった。
というわけで、そろそろ終わりに近づいてきたかなと。 なんだかFE色が濃くなっちゃってすみません……知らないと面白くないですよね; もう少し続きますので、ご了承くださいな〜。(何 平成18年8月27日UP 八十四話に戻る 八十六話に進む |