第八十四話 最初に当てたのこの女性。 「で、ネス?」 会話からネスが離れた隙に、ピーチは小声でそう尋ねた。 何のことを尋ねているのかこの台詞だけでは全く分からないが、そこは相手がネスである。 相手はピーチの方を見ると、にこっとまた笑った。 「うん、そゆこと。おめでと、一番だね」 そのネスの返事が聞こえて、ナナはハッとした。そして、その顔を勢いよくピーチのほうへと向ける。 「もしかして、ロイの好きな人分かったってやつ!?」 ナナが悔しそうにしているのを見て、ピーチは上品さを見せた笑みを作った。 それに大きく驚いた様子を見せたのはゼルダとプリン。サムスも意外そうにピーチのほうを眺めていた。 ロイはというと、やっぱりか、と肩を落としている。 「ええ、嘘!? どこで!? なんで分かったの!?」 ピーチの服を掴みながら、ナナは不満そうな顔を隠しもせずにそう言う。 さすがにこう迫られると迷惑なのか、微妙な表情をしていたピーチを見て、ナナをなだめたのはポポだった。 ふぅ、と呼吸を整えてから、ピーチは意地悪そうな笑みを作る。 「ナナから教えてもらったことで分かっただけよ。女の勘は働いてなかったの?」 挑発するように言われ、ナナはムーっとした表情になった。だが反論できない彼女は、その不満の矛先をロイへと変える。 「ロイ君、好きな人って誰なのよー!」 「ナナ、それじゃ絶対分からないでしょ……」 ポポは呆れた様子を見せているが、ナナは構わずロイの方を向いている。相手はやれやれと苦笑いしていたが、ふと思いつくと他の女性達のほうにも視線を移した。 「バレちまったもんは仕方ねぇしな。どうせなら、最初から調べてたのに分からなかった人には罰ゲームとかでもしてみるか?」 「「え」」「ぷり?」 ロイの発言に、ナナとゼルダ、プリン、ついでにリリーナもきょとんとした。一瞬遅れて、サムスがふふっと小さく笑う。 「随分急に態度が変わるのね」 さり気ないその言葉に、ロイは『あー……』と髪を掻いた。 (だって、一番知られたくない人に知られたしなぁ……。今さら) 「くすっ」 そのロイの心を読んだのか、ネスが堂々と笑みをこぼした。それを見たロイが焦るような表情を作ったのに気づき、ピーチがロイに迫る。 「今、私に失礼なことでも考えたりしたのかしら?」 「さーてな」 あからさまに視線を逸らしながら、ロイはそう言う。ピーチが睨んでいるのを無視していると、横からサムスが声を掛けてきた。 「それじゃあ、分かりやすくしたりするわけ?」 あれだけ教えるのを嫌がっていたのに、と言外に含めているサムスに、ロイは『まっさか』と強気で答えた。 「ピーチ姫が分かったってことは、何か分かる原因があったってことだろ? 俺は今までどおり隠しとおすつもりだから、頑張ってみなよ」 余裕のあるロイに、ナナは不服らしい。その後ろでは、ゼルダがピーチに対して質問していた。 「ピーチは、どうしてロイの好きな人が分かったの?」 これまた分かりやすい質問である。その質問を側で聞いていたナナ、プリン、サムスも、ピーチに視線を動かした。 その様子を少し面白がりながら、ピーチは口を開く。 「そうねぇ……。ロイの行動が普段と違っていたから、ってところかしら。ロイの性格を考えるとね」 一体俺をどんな奴だと思ってるんだ、とロイは思った。ちなみに、ロイ自身もピーチが何で気づいたのかは分かっていないのだが。 「ねぇ、ロイ、本当に良いの?」 と声を掛けたのは、先ほどから呆然としていて発言の無かったリリーナだった。ロイはそれに気づくと、どこか諦めの入ったような笑みを見せる。 「どうせなら楽しんだ方が得だからな」 「でも、ロイは楽しくないんじゃない? こんな、調査でもされてるような感じなのに……」 リリーナのこの発言に、面白くないのはナナである。だがロイは小さく笑って、いや、と否定した。 「皆が楽しんでるのを見るのは楽しいからな。まぁ、素直には喜べないけど」 「ロイ……。もうっ!」 言い残すと、リリーナはふいっと背を向けて歩いていってしまった。ロイはそのリリーナの突然の行動の意味が分からず、驚きと疑問が混じったような表情をしている。 「あーらら」 そう言いながら、ネスは相変わらず笑っている。こいつも思いっきり楽しんでるよな、とロイは思った。 「俺、何かまずいこと言ったか……?」 「さてね」 先ほどのロイのように笑って済ませるネス。次に何かを言おうとすると、ゼルダがロイに声を掛けてきた。 「ねぇロイ君、これって長期滞在をするのではないんでしょう? そんなに簡単に分かるものではないと思うのだけど……」 つまりは罰ゲームという言葉が嫌なのだろう。 「まぁ、そこは頑張れってことで」 「ロイが何か行動してくれないと、頑張りたくても頑張れないんだけど」 ゼルダに続いて、サムスの口での攻撃。ロイはそれを聞き、やれやれとため息をついた。 ロイが誰かと会ってくれないと、誰がその人なのかが分からないから行動しろというのである。 「はいはい。……って、俺のこと付けるのはいいけど、相手に迷惑掛かんねぇようにしてくれよな」 「おっけー♪ で、最初は誰にする?」 「え」 ナナの返事とその次の言葉に、ロイは驚いたというより困った。 この様子では、こっちの指定する人と話してね、と言われているようなものである。 ロイが呆れたように息を吐くのと、ゼルダがある人を推薦するのはほぼ同時だった。
話を重ねるごとに、キャラの性格とか行動とかが変化してきているような気がします……。 というか一話ごとに態度が違うような。(汗 楽しんでもらえれば嬉しいんですけどね(苦笑)。 平成18年8月14日UP 八十三話に戻る 八十五話に進む |