本編 第八十三話<小説:スマブラTOP
第八十三話
困ってるわけじゃ、ないけれど……
やばい。
……やばい、やばい、多分やばい。
心の中でそう思っているのを周りに悟らせないように、ロイは笑顔を薄く浮かべた。
ゼルダやナナ、サムスなどは特に気にしていないようだが、こちらを見るピーチの視線は真剣そのものである。
やばい、と焦っている一方、ああこりゃバレたな、と妙に冷静に考えている自分もいて、ロイはどう行動するべきか困り渇いた笑みを作っていた。




正直に言えば、ロイは恐らく本命が誰なのかは誰にも分からないだろう、と思っていた。
行軍中にも恋人のような行動を取ったこともないので、軍の仲間に尋ねられても分からないだろう、ということである。
相手も、ロイと親しくしていることを自慢するような性格ではないので(そこが、ロイが彼女を好きなところの一つでもある)、相手に聞かれても判明しないだろう、と考えていたのだ。
いったい何処でバレたのか。
真剣に見つめてくるピーチに何でもないような表情を見せながら、ロイは思った。
「ロイ君? どうかしたの?」
ナナの声に、ロイははっとして視線をそちらに移した。どうやら何か会話をしていたらしく、『いや、なんでもない』と慌てて応える。
「ちょっと考え事。っつーかナナ、お前最初っからカービィ探す気なかったんだろ」
先ほどリリーナに言われた事でもう吹っ切れたのか、ロイは何の気兼ねもなくそう言った。それを聞き、ナナがあは、とぎこちない笑みを作る。
「うーん、バレちゃしょうがないわね。いやー、多分どこかでカービィも見つかるかなーって思って」
「で、ロイ君の観察ばかりしてた、と」
ナナの言葉に繋げるように、ポポが呆れた様子で言った。ナナは相棒の方を向き、そんなこと言わなくてもいいじゃない、と言いたげに口を尖らす。
「でも、あんまり得たものもなかったみたいだけど」
呟くように言ったのはサムスである。そうなのよねぇと相槌を打つナナと、苦笑しながらも肯定しているゼルダを見てから、やっぱりこの三人はまだセーフだなとロイは考えた。
「ロイ、いいの? 迷惑だったら迷惑だって、ちゃんと言わなくちゃ」
そう言ってきたリリーナに、ロイは少し驚きながら『あー』と苦笑を見せる。
「別に迷惑だって言うわけじゃないけど……。そんなことをしてて、楽しいかなと思って」
とはいえやはりリリーナが相手の時には口調は微妙になるらしい。
そうなの? と疑問を見せているリリーナに、だがナナは『えー、楽しいじゃん!』と本当に楽しそうに答えた。
それを見て、ふとロイは思い出したように言う。
「それって、答え合わせはどうするつもりだよ? 俺が正直に言うとでも?」
まぁ態度でバレそうな気がしなくもないけど、と思いつつ言ったその言葉に、ナナはにっこりと笑顔を見せる。
「そりゃもちろん、ネス君の出番でしょ♪」
「あ」
そういえばその手があった、とロイが思うのと、次の言葉が発せられるのはほぼ同時だった。
「ネス君の出番……って、どういうことなの?」
自分のほうを向いて尋ねてきたリリーナに、どう答えるべきかとロイは髪を掻く。代わりにそれに返事をしたのは、やはりというか楽しそうなナナだった。
「ネス君は人の心を読んだり、未来を予知したりできるの。だからロイ君がどう思っているかもネス君にはバレバレってわけ」
「あんまり言う気はないみたいだけどね」
ナナの後に続けて言うのもやはりポポ。そこはどうにかするのよ、となぜか握り拳を作っているナナに驚きながら、リリーナは話し易さからかロイにまた尋ねた。
「人の心を読む、とか……本当に……?」
「うん、本当に」
と、答えたのは、ロイではなく話題になっている野球帽の少年だった。横から突然入ってきた人物に、ロイもリリーナも驚く。
「ネス!」
「あなたが、ネス君?」
こんな一見普通そうな少年にそんな凄い能力が……? と、リリーナはネスを見たまましばらく固まっていた。
それを見て、ネスはまたくすりと笑う。
「まぁ、見た目はふつーな少年だからねー。言動は普通じゃないけど」
「良くも悪くも、ね」
アイクラの二人がそう言っている間も、リリーナはそのままネスを見ていた。
すると、ネスが自分に向けてにこっと笑った。
「初めまして、リリーナさん。確かに人の心とか読めるけど、それを悪用するつもりはないから安心して」
「えっ、あ、初めまして」
慌てたのか、リリーナはそうとだけ答えた。ネスの言葉を聞いて、隣のロイがこう呟く。
「まぁ、悪用されてたら恐ろしい事になりそうだしな」
それにもネスは小さく笑う。その会話を聞いていたポポが、ふと思った。
「……で、好きな人を聞くってのは悪用とは違うの?」

間。

「ってポポ! ここでポポがそういうこと言っちゃ駄目でしょ!」
微妙な沈黙を遮って、ナナが言った。リリーナはどう反応して良いのかわからなかったらしく、微妙な表情を見せている。
「本当に嫌だったら言わないから、まぁ平気って言えば平気なんだけどね」
その当人であるはずのネスはあっけらかんとした様子で、簡単にそう言った。それを聞いて、ふとゼルダがロイを見ると、彼は困ったような、呆れたようにも見える表情をしている。
「それじゃあ、ネス君に聞いて答え合わせが出来るんだったら、本当にイヤだって思っているわけじゃないってこと?」
ポポが何気なく言った台詞に、ロイは『わざわざ言うなよ』と溜息を落とした。なるほど、とナナは妙に嬉しそうに納得している。
「――別に嫌だってわけじゃねえけど……。恥ずかしいっつーか……。……なんでそんなに興味持つんだよ、ったく」
頬を掻き、目をうろうろとさせながら、困ったように言うロイ。そんな相手を見ながら、ナナはまた元気よく答えた。
「だって楽しいんだもの♪」
やれやれ、とロイが思ったのは言うまでもない。



進展がなくてすみません!;
内容的にもシナリオ的にもやばい状況に陥っております……ロイじゃないですが。(何
なんか『おいおい……』と思うような終わり方になっても許してやってください(爆。

平成18年7月23日UP


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最終更新:18:26 2006/08/14




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