本編 第八十一話<小説:スマブラTOP
第八十一話
さあ当たるのは誰かしら?
「ロイったら、やんちゃばっかりしてたのね。全くもう」
そう言いながらリリーナが笑っているのを見て、ロイは安堵の溜息を一つ落とした。
カービィが見つかったことでひとまず事件は一件落着という形になり、全員が客間へと移動したのである。
その際にロイが自分の父と会って、これまでの事を話したりと様々なことを済ませたのもあって、分かりやすく言えば自由時間に近いような状態だった。
元からフェレにいた者も客の様子を見ようと訪れていたりもし、各々が自由にしているにぎやかな風景である。
「で、何かそれらしい収穫はあったの? ナナ」
ある一部では、サムスがナナに向かってそのように尋ねていた。その側にはピーチ、ゼルダ、プリンと、女性陣が集まっている。
収穫と言えば、何のことだかは一目瞭然だった。
「んー、数人と出会ったんだけど、ピンと来るのがいなかったのよねぇ……。とりあえず、あの子とあの子、あの二人はロイと仲良さげに話してたんだけど」
『あの子』というところで、薄紫色の長い髪の女性と、青い短髪の女性とを指差すナナ。立ち位置による距離もあるためか、両方ともナナに指差された事には気づいていないらしい。
「城門前で聞いた名前の女の人は誰でし?」
次のプリンの質問に、あの人がシャニー、あの人がソフィーヤと順番に答えてゆくナナ。
「えーっと、あの人が……スーって人だっけ? なんか印象薄かったのよねー、ロイも一言声掛けただけだったしさ」
「一言?」
ナナの台詞に、ピーチが考えるような素振りを見せた。
「うん、一言。カービィ見つけたら、俺が探してたって伝えてくれって」
「本当に用件だけなのね……。あれ、口調は――」
途中まで言ってから、ゼルダはその様子に不自然を感じ、そう続けた。そういえば、とナナもそこで思い出す。
「ロイは忘れててそのまんまだったんだろうけど、相手も普通に応えてたっけ……。分かったわ、って一言で」
「出発前に、ロイ君の好きな人は口調が変わっていてもあんまり気にしないだろうって、ロイ君が言ってたのよね……」
離れた位置にいる、赤い服の黒髪の女性をなんとなしに眺めながら、ゼルダが言う。でも、とサムスが続けた。
「あんまり動じてないみたいだから、元からそういう性格なんじゃない? ロイに会いに行こうって様子も見られないし」
そう言いながら、サムスは視線を動かしロイのほうを見る。そこではララムとマルスとカービィが、ロイを含めて楽しそうに会話をしていた。
「どうなのかしら……」
「他の人は?」
うーんと考えるゼルダを他所に、ピーチは再びナナへとそう問いかける。ナナは辺りを見回しながら考えるが、リリーナを視界に捉えたときにふと思った。
「あのリリーナって人は、ロイと幼馴染なのよね?」
尋ねるナナに、確かそうだったはず、とゼルダが答える。そのリリーナは、ピチューの頭を撫でているところだった。
「でも、ロイのあの言い方だと『好きな人』と『リリーナ』は一致しないはずよね」
ピーチが言うと、プリンは考える仕草を作る。プリンがその人物をじっと見つめていると、その視線に気づいたリリーナがこちらを見た。
直後、にこっと笑顔を作りながら歩いてくる。プリンはその行動に驚いてしまったようだった。
会話をしていた他の者達も、リリーナがこちらに歩いてくるのに気づき、口を止める。
「初めまして。私はリリーナ、あなたのお名前は?」
少し屈み、プリンの目線に合わせるようにして尋ねてきたリリーナに、プリンは意外な表情を隠さなかった。
ただ、元から目が大きいため、リリーナにはそれが驚いている表情だと分からなかったらしい。
「プリンはプリンでし」
「そう、プリンちゃんね。可愛らしい名前なのね」
そう言いながら、リリーナは笑顔でプリンの頭を撫でる。撫でられること自体は嫌ではないようだったが、プリンの表情は微妙なままだった。
「……驚かないんでしか?」
「驚く? どうして?」
笑顔を絶やさず、リリーナがそう問いかける。プリンはむぅ、と返答に困り少し口を尖らせた。
そこに口を挟んだのはサムス。
「ロイの故郷のここでは、ポケモンは珍しいんでしょう? カービィに驚いていた人もいたことだし」
そう言われて、リリーナはサムスに視線を移した。見た目で年上と判断したらしく、敬語で言う。
「初めは驚きましたけど、でも、ロイの連れてきた人が悪い人なはずがありませんから」
にっこりと笑顔で言うリリーナを、ナナもピーチもゼルダも凝視するように見る。その様子に本人が首をかしげた頃、サムスがぽつりと言った。
「……あなた、ロイが好きなのね」
「「!!」」
「な……なに言ってるんですか!」
ゼルダやナナが驚いているそばで、リリーナはほんのりと顔を赤らめながらそう返した。だがその顔色は、サムスの言った事が事実だと肯定しているようなものである。
赤くなった顔を少し俯かせているリリーナに気づかれぬように、ナナがピーチやゼルダに小声で言った。
「ロイが好かれてるのは間違いなさそうよね、これ」
「でも、ロイはそれに気づいてるのかしら?」
ピーチの疑問に、ゼルダは『気づいてなさそう』と答える。
「他人のことについては敏感だけど、ロイ君ってこういうことには疎いんじゃないかしら……」
「ロイ君は女心って、あんまり分からないだろうしねぇ……」
ナナがそう言った辺りで、やっとそこでの会話に気づいたのか、リリーナが不思議そうにサムスの後ろを見る。
尋ねられても困る、ということでどうしようかナナが慌てた時、だが意外なところからこの場に声が掛かった。
「こんにちは。ロイ君の幼馴染のリリーナさんて、君?」
その質問に、リリーナが後ろを振り向く。そこにいたのはナナと同じ形の色違いのフードを被った少年、即ちポポだった。
「あら、こんにちは、初めまして。ええ、私がリリーナよ。あなたは?」
突然声を掛けてきたポポを、ナナが不思議そうに見る。だがポポは相棒のほうを見る事なく、リリーナに自分の名を名乗っていた。
「ロイ君って、幼い頃どんな性格だったの?」
その質問をそばで聞いて、どうやらポポは本当にそれが聞きたくて来たらしい、ということをナナは直感で理解する。
リリーナも先ほどのサムスの発言から調子が戻ったらしく、そう尋ねられてにっこりと笑顔を作った。







「おっちょこちょいで明るくて負けず嫌いの努力家、ねぇ……」
ポポに対して話す内容をそばで聞いていたナナが、呆れたような表情で言った。それに対し、ゼルダも似たような表情を作る。
「少なくとも彼女から好かれてることだけは確実、ね。これは」
リリーナには聞こえない程度の小さめの音量で、サムスが言う。うんうん、とピーチもそれに頷いていた。
「いくら鈍くても、これだけアピールされれば少しは気づくかしら……?」
控えめにそう言うのはゼルダ。でもなぁ、とナナは腕を組んだ。
「ロイだから、何とも言えないんだよねぇ……。恋愛のれの字も知らなそうだし」
その発言に、ゼルダが苦笑を作る。ふとそのままロイの方を見ると、彼はなにやら不安そうな表情を作ってある方向に歩いていた。
「……?」
何となしに、そのロイの進行方向へと視線を動かす。その先には、先ほどナナが指差したうちの一人、ソフィーヤという名前の女性が立っている。
もう一度ロイへと視線を戻すと、顔の向きも目線も何から何までその女性のほうを向いているように、ゼルダには感じられた。
「ロイ君……?」



リリーナが微妙……になってしまいました(汗。
城の中の構図とかは良く分からないので、その辺りは気にしないで下され(ぇ。
そろそろこの話も終盤になりますかねぇ……。

平成18年6月25日UP


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最終更新:17:54 2006/07/09




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