本編 第八十話<小説:スマブラTOP
第八十話
実は最初からここにいた。
「ロイ様、いたいたー!」
進行方向から大声で話しかけてくる青い髪の女性に気づき、ロイは走る速度を落とした。
今度は先ほど出会った髪の長い二人の女性とは違い、ぱぁっと明るい笑顔を見せている、短髪の少女である。
「シャニー!」
ロイが名を呼んだ事で、それがその人なのだとナナも気づいた。シャニーと呼ばれたその女性は、手を降りながら走って近づいてくる。
「ロイ様、聞いたよー。なんか、変わってる人探してるんだって?」
いきなりそんなことを言われて、ロイは驚いた。だがシャニーは悪気も何もないまっさらな笑顔のままである。
「え、どこでそれを……?」
「どこでって、もう皆知ってるよー。ロイ様が走り回ってるんだもん」
それは当然よね、とナナは思った。ロイも言われて気づいたらしく、乾いた笑いを作る。
「ピンク色の髪の、丸っこくて可愛い女の子を探してるって、みんな噂してたよ」
「は!?」
シャニーの口から出てきた『探し人』の様子に、ロイは開いた口が塞がらなかった。言った彼女も、ロイがまさかそんな様子をするとは思っていなかったらしくきょとんとしている。
「あれ、違った? おっかしいなー、そうやって聞いたのに……」
「違うって言うか……そもそも、人じゃないしね」
顎に手をあて考える素振りをするシャニーに、ナナが呆れたような口調で言った。シャニーはナナの発言の意味が分からないらしく、首を傾げる。
「人よりは、猫とか犬とか動物に近い姿なんだよ。身長がこのくらいだから……」
そう言いながら、ロイは両手で20cmほどの幅を作って見せる。それを見たシャニーは目を真ん丸くした。
「そんなにちっちゃいの!? 小人!?」
「いや、小人って言うか……その様子じゃ、やっぱりシャニーも見かけてないのかな」
ふぅ、と溜息をつくロイ。シャニーはやはりカービィの姿が想像できないらしい、しきりに首を傾げるばかりである。
「ボールみたいな、丸い体なんだ。一度でも見れば印象に残るだろうから、すぐに分かると思うんだけど……」
「ピンクのボールに顔と手足が生えた感じだよね」
ナナの言葉に、ロイも頷く。シャニーはそう言われどんな感じなのかと考えてみるが、イメージはやはりまとまらなかった。
「うーん……とりあえず、見ればすぐ分かるんだよね? あたしもロイ様探してうろうろしてたけど、まったく見かけてないんだよねー……」
そう言うシャニーに、ロイはやっぱりか、と頷いた。
「カービィの事だから、興味がないところにずっと留まっている事はないと思うんだ。とすると……やっぱり、厨房に?」
「もし厨房にいるんだったら、早く行ったほうが良いんじゃない?」
隣のナナからの言葉に、ロイはハッとした。先ほどから厨房にいるんじゃないかと推測していたが、厨房で何をするかと言われればすることはほぼ一つだけである。
シャニーはナナの言葉の意味がいまいちよく分からないようだった。
「何か問題あるの?」
「カービィは大食らいなんだ! 下手をすれば食料が無くなっちゃう……ごめんシャニー、急がないと!」
言うだけ言って、ロイは返事を聞かずにシャニーの横をすり抜けていった。え、え? と驚いた様子を見せるシャニーの横を、今度はナナが通り過ぎる。
少し過ぎたところで、ふとナナはある事を思い出しシャニーのほうに振り返った。
「ねぇあなた、ロイ君の事って好き?」
ロイはそれに気づかずそのまま走り続けている。シャニーは一瞬きょとんとした様子を見せたが、すぐに笑顔を作った。
「え? うん、好きだよ。どうかした?」
さらりと答える相手に、ナナは内心でガッツポーズを作る。ううん、と何気ない素振りを見せてから、ナナもロイを追いかけて走り出した。
(案外こういう人のほうが合ってるかも……?)




城に着いた時刻が昼を過ぎた頃だったからか、普段厨房で働いているコックなどの姿はないようだった。
その厨房の扉を、ロイはばたん、と礼儀正しいとは言えない動作で開ける。
「カービィ!」
開けると同時に言った声に、その中にいた者達がロイのほうを見た。
いたのは――。
「あ、ロイ君ー。やっほー♪」
探し続けていた、ピンク色の球体の姿。と、
「ロイ……?」
焼けたクッキーが並んでいる皿を持っている、長く青い髪の、ロイと同年代くらいの女性だった。
「リリーナ……?」
ナナも少し遅れて厨房の中に入る。それとほぼ同時に、彼女はカービィの目の前に何かが乗っていた痕跡のある皿が置いてあるのに気づいた。
「カービィ、やっぱりここにいたんだ!」
「あ、ナーちゃん! ナーちゃんも食べるー?」
のん気なカービィに比べ、ロイはその状況がいまいち理解できていないらしい。ロイが入ってきたときリリーナは動作の途中だったらしく、持っていた皿をカービィの目の前に置いた。
「カービィ、それにリリーナ……。これはどういう……?」
「久しぶり、ロイ。彼、ロイの友達なんでしょう? お菓子をご馳走してあげていたのよ」
にっこりと笑顔を見せながら言うリリーナ。カービィはというと、たった今置かれたばかりのクッキーをぱくぱくとおいしそうに食べ始めていた。
「もしかして、さっきからずっと?」
「ええ。なんでもおいしそうに食べるものだから、つい作りすぎちゃって」
リリーナの笑顔は変わらない。ロイはその顔につられるように笑みを作りながら、だが『はぁ』と妙に重い溜息を落としていた。
「カービィの姿、驚かないの?」
ロイの後ろからひょこっと出ながら、ナナがリリーナにそう問いかける。リリーナはナナに気づくとこんにちは、と挨拶してから答えた。
「最初はびっくりしたけど、でも良く見るととっても可愛いわよね」
そう言ってから、リリーナはカービィに近づいてその頭を撫でた。
クッキーに夢中になっていたらしいカービィは、それに気づきリリーナのほうを見る。彼女が笑顔なのにつられてか、カービィもにっこりと笑った。
「……ちなみに、勝手に食料を荒らされた、なんてことは?」
恐る恐る、といった様子でロイが尋ねる。リリーナは『え?』と不思議そうな表情を作ってから言った。
「私がお菓子を作るからちょっと待っててね、って言ったら、とってもいい子にして待っていたわよ」
何かあったの? と何も知らない様子で尋ねてくるリリーナに対し、ロイは盛大にため息をつく。
「カービィ……。頼むから、勝手に出歩くのはやめてくれ……」
呟くように言った言葉だったため、この言葉はカービィには聞こえていなかった。が、代わりにそれはリリーナの耳へと届いていたらしい。
「ロイ……口調、変わった?」
ハッと気づいて、ロイはリリーナを見た。相手は少しきょとんとした様子である。
あ、いや……と誤魔化すように言おうとした瞬間、だがカービィがそれより先に発言していた。
「ロイ君ならいっつも『俺』って言い方してるよー?」
「ばっ……」
再びハッと、言おうとした言葉を止める。だが、それは立派にリリーナの耳へと届いていたらしい。
「久しぶりに会ったんだもの、ロイ。色々と思い出話を聞かせて欲しいわね」
にっこりと、本日見た顔でとびきりのように見える笑顔で言うリリーナを、ロイはどうしようもない、という表情で見つめていた。



私はリリーナを一体どんな性格にしたいんでしょう……?(ぇ
なんだか彼女の性格がまとまっていません; 色々と変なところはあると思いますが
え? って思うところがあっても見逃してやってください(汗。

平成18年6月11日UP


七十九話に戻る   八十一話に進む

スマブラ

TOP

最終更新:17:54 2006/07/09




100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!