本編 第七十九話<小説:スマブラTOP
第七十九話
候補が二人増えました!
「おーい、カービィー! いたら返事してくれー!」
走りながらそう叫んだロイを、同じようについていっているナナは『おいおい』という思いで見つめた。
「ロイ君、ロイ君ってこの城では結構偉いんでしょ? そんな叫んでていいの?」
「……あ」
言われてふと気づいたのか、ロイが小さな声を上げた。その表情を困ったものにしながら、だが彼は続ける。
「つっても、カービィが心配なんだよ……。あいつだったら色んな人にちょっかい出してそうだし、俺は見慣れてるけど他の皆は見慣れてない訳だし」
完璧に口調が屋敷の頃に戻っているロイに、ナナが呆れた苦笑を作った。だがナナはロイの一歩後ろを走っていて、ロイは前方を見ながら喋っているためその表情は見えない。
ふと、彼が走っている通路の進行方向に赤い人影が見えて、ロイは速度を落とした。ナナの目には、赤い服を着た長めの黒髪の女性の後姿、に見える。
歩いているその女性を追い抜かしながら、ロイは何気なく言った。
「スー、カービィを見つけたら俺が探してたって伝えといてくれ!」
その口調にナナが驚くのと同時に、スーと呼ばれたその女性は振り向きロイのほうを見た。女性と記したが、年齢はロイとさほど変わらないようである。
「ロイ様……分かったわ」
「頼む!」
口調の事をすっかり忘れてしまっているのか、ロイはそう言い残すと再び走る速度を上げた。ナナはその様子を意外そうに見ていたが、ロイとはぐれては自分の目的を達成できない、という事を思い出し再び走り出す。
こんな様子でまさか彼女が本命なわけないわよね、とナナは思った。




「で、ロイ君がいなくなっちゃったら僕らはどうすればいいかな」
ポポが何気なく呟いた言葉に、リンクが苦笑を返した。
「よくよく考えれば、別にロイ君が走って探さなくても平気なんじゃ?」
そう言うのはゼルダ。その様子を眺めていたサムスが、ふとぽつりと言った。
「そもそもネスに尋ねれば良いだけのことじゃない」
「「あ」」
なんでそれを思い出さなかったんだろう、と思いながら、リンクやポポなど数人はネスのほうを見た。
彼は相変わらず、笑っている。
「まぁ、僕が何か喋る前に走っていっちゃったしね」
未来予知が出来るのにそんなことを言っても説得力がないだろう、とサムスが思う。
「でも、本当にこれからどうするでし? プリン達はカービィしゃんを探せないでしよ」
「驚かれるのは嫌だし……」
プリンとピカチュウが言うと、今まで発言出来なかったウォルトが声を出した。
「とりあえず、客間に移動しましょうか? ロイ様の事は気がかりですが、いつまでも大人数で外に立たせているわけにはいきませんから」
「そうですね。面倒をお掛けしてしまい、本当にすみません」
マルスがそう言うと、ウォルトも苦笑して対応する。今さっき来たばかりのセシリアとララムも、同じように城に入った。







次の門を曲がった時に、ロイはまた髪の長い女性の姿を発見した。またと言っても、今度は薄紫色で、地面に着きそうなほど長い髪である。
その女性はロイの姿を確認すると、ぱっと少し表情を綻ばせた。
「ロイ様……」
「ソフィーヤ!」
遅れてロイも名を呼び、ついでに足を止める。ナナには少し弱々しいように聞こえた『お久しぶりです……』という相手の声に、ロイは笑顔で返した。
直後、ふとロイは思う。
「ソフィーヤなら、カービィのいるところも……」
その呟きにソフィーヤという女性が少し首をかしげた頃、だがロイはハッと思い出した。それと同時にナナが呟く。
「ってかさ、ネス君に聞くのが一番早かったんじゃないの?」
「……俺も今思った……」
ソフィーヤはそのロイの口調に、口を少し開けてぽかんとする。
その反応を見て、そういえば口調がこっちになっていた、とロイはやっと思い出した。
「えーと、ちょっと人……と言えるか微妙だけど、ある人を探してて。城の中にいるはずなんだけど、ソフィーヤならもしかして分かるかな……と思って」
「人……ですか?」
ロイの言い方に少し疑問を感じ、ソフィーヤは首を傾げる。人というか何と言うか……とロイが苦笑しながらどもっていると、ナナが隣から出てきて言った。
「体長がこのくらいで、ピンク色の球体なの。名前はカービィって言うんだけど……分かる?」
このくらい、の所で両手をカービィの身長ほどに合わせる。ナナの説明を聞いて、ソフィーヤは更に謎が深まったような表情を作った。
「あ、いや、無理をさせようって事じゃないから、分からないなら分からないでいいんだけど……」
そう言うロイのほうを、ナナは見る。その表情は相手を気遣ってのものだと分かると、ナナの脳裏にある推測が生まれた。
「いえ……。……できるかどうか、やってみます……」
言ってからソフィーヤは目を閉じる。彼女の顔をじっと眺めるロイを、ナナは横目で見ていた。
(これは脈絡ありそう? でもなぁ、なんかいまいちピンと来ないし……)
普段感じるはずの女の勘が働かないなぁ、とナナは不思議に思う。そうこう考えていると、そのうちソフィーヤが目を開いた。
「もしかしたら……東、のほうかも……しれません……」
「! 分かったの? ソフィーヤ」
ぱっと明るい表情になったロイに、ソフィーヤは遠慮がちに言った。
「いえ、なんとなく……ですけど……」
「その気持ちだけでも十分だよ。ありがとう、ソフィーヤ」
にこっと笑顔を作り、そう言うロイ。その様子が屋敷にいるときとは何とも違っていたので、ナナは少し意外そうな表情でそれを眺めていた。
(そもそも、ロイ君が『にこっと』笑うなんて、なんて言うか意外……!)
別れの言葉を告げ、東に行くための方向へと走っていくロイ。ナナも一歩遅れて走り出したが、ソフィーヤがナナにも頭を下げたのでナナもそれには応えた。



「ねぇロイ君、女の人の友達どのくらいいるの?」
「は!? 急に何言い出すんだよ」
自分と話すときは屋敷の口調になっているロイに内心で面白がりながら、ナナはその事を表面に出さずに言う。
「だって、さっきすれ違った人とか凄く仲が良さそうだったじゃん」
「あのなぁ……スーはもとからあんな感じだし、ソフィーヤは結構内気だからよく話しかけたほうがいいんだよ」
自分としてはソフィーヤという女性のことを言ったつもりなのだが、その前に出会った女性の事も話し出したロイにナナは少し驚く。
「他に……えーと、シャニーさんだっけ? その人も友達なんでしょ」
揺さぶりをかけるように、別の女性の名前を挙げるナナ。だが残念ながらロイはそれほど反応を返さなかった。
「友達って言うかなぁ……。皆、ベルンを相手に戦っていたときの仲間だよ」
「仲間って言うわりには、随分仲が良さそうじゃない? あのセシリアさんて人とか、ララムって人とか」
その辺りで、ナナが実は楽しんで話しているということに薄々気づいたロイが、ムッとした。
「将が仲間と不仲じゃ戦なんて出来ないだろ。ついでに、セシリアさんは俺の先生を務めてくれた人で、ララムさんは元からあんな性格!」
『もうこれ以上変な事聞くな』と言わんばかりに強めて言われた語尾に、ナナはちょっと行き過ぎちゃったかな、と苦笑を作った。
「ところで、この先には何があるの?」
話題を変えると、ロイの不機嫌も収まったらしく口調が普通に戻る。
「ん、この方角だと厨房だな。食べ物の匂いがして厨房に行ったとかそんなところかな……」
それくらい推測できそうなのに、なんで気づかなかったのかな、とロイは一人ごちた。



さて、そろそろ女性キャラも結構出て来ました。(何
サイトを見れば余裕で分かると思いますが、小説内ではまだ謎のまま、ということで。(爆
次にはもう二人も出てきますかね?

平成18年5月28日UP


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最終更新:17:54 2006/07/09




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