第七十四話 楽しく交流いたしましょー。 開始後すぐに自分のほうへと向ってくる足音に、ポーラは驚いた。 はっとそちらを見ると、そこには猛ダッシュで駆けてくるピンク色の球体の姿。 「お、カービィ!?」 こちらを見ながら驚いた様子でそう叫ぶのはロイである。だがカービィはそんなロイには目もくれず、一直線にポーラのほうへと向かっていた。 そんな様子に困るのは彼女である。驚いたためとっさにポーラは、フライパンを握り締めた。 「きゃあっ!」 「わっ!」 自らも叫びながら、少女は武器のフライパンを垂直に振り下ろす。走ってきていたカービィは避ける事が叶わず、べしゃ、という効果音がしそうなほど直撃していた。 「あ」 ロイの声でハッとして、ポーラはフライパンを持ち上げる。その下には微妙に潰れたような形になって痛がっているカービィの姿があった。 「スマッシュ、直撃……ってやつか?」 「だろうねぇ」 他人事のように、実際他人事なのだが、ロイとネスはそんな風に軽く喋る。 ポーラは一瞬困ったような顔をしていたが、よくよく考えればこれが普通なのだと思いなおし、カービィに向き合った。 「もう! びっくりしたんだから!」 カービィもやっと持ち直したらしい。前転回避をしながらポーラの背後に回ると、相手もつられるように振り返っていた。 そして。 「えへへ、ごめんねー?」 と言ってから、カービィはその、体格の割に大きな口を大きく開けた。 何をしようとしているのか分かるのはポーラ以外の人物である。その対象であるポーラは何をする気なのかと、とりあえずガードをしてみた。 が、直後彼女は自分の身体が宙に浮く感じを覚える。 何事かと思った次の瞬間には、視界は真っ暗になり、身体もほとんど動かせなくなった。 「え、何!?」 動けない身体で何とかもがいていると、急にポンッと謎の音がして視界が開けた。 居場所はもちろん、乱闘のステージである戦場である。何か変わったのかとポーラが後ろを振り向いたとき、彼女は意外なものを目に入れた。 「あーあ、コピー能力ゲットか。厄介になりそうだなー」 「そう思うなら、何で止めなかったの?」 「だって、どうなるか見てみてぇじゃん? カービィの姿」 「あはは。で、そのご感想は?」 「予想通り、面白い!」 カービィのほうを見ながら、楽しそうに会話しているのはロイとネスである。 ポーラは、その視線の先にいるカービィの姿を、唖然とした顔で見つめていた。 「ねーねー2人ともー! 金髪金髪ー♪」 そこにいる、ピンクの球体、もといカービィは、ポーラと同じ髪型の金髪がついていたのである。 頭のてっぺんには、本物と同じく、赤いリボンまできっちり付いていた。 「あーそっか、カービィの頭に金髪つくのって今まで無かったもんな」 「うん、そうなのー!」 答えてから、カービィは髪をなびかせるようにくるりとその場で一回転する。その時にポーラと目が合うと、カービィはニッコリ笑った。 「えへへ、似てるでしょー?」 楽しそうにしている相手を見ながら、ポーラはパッとあることを思い出して手を叩いた。 「そういえば、相手をコピーする能力があるって聞いたことある! あなたがそうだったのね」 そう言われ、カービィはYesの返事と共ににっこりと笑みを見せる。が、背後に気配を感じるとカービィはそのまま避ける動作をした。 直後、先ほどまで彼がいた場所には剣の筋が通る。 「ちっ、ミスか!」 そう言いながら、そのロイの顔はポーラには妙に楽しそうに見えた。くるりと避けたカービィは、そのままネスやポーラとも距離を取る。 「急に攻撃してこないでよー」 「開始直後いきなり突っ込んでった奴が何言ってんだよっての!」 口調はとげとげしいが、両者とも表情は何とも楽しそうである。 なるほど乱闘っていうのはこんな様子なのか、と納得してから、ポーラは標準を最も近くにいたロイに合わせた。 「PKフリーズ!」 え、とロイが反応したときにはすでに遅かった。
なんだか短めになってしまいました……;; 本当はもう1シーン追加する予定だったんですが、時間とかの問題で断念。 次は頑張りたいですー……。 平成18年3月12日UP 七十三話に戻る 七十五話に進む |