本編 第七十二話<小説:スマブラTOP
第七十二話
彼の好きなのはあんな人。
「ネスのお友達ぃー!」
ロイやナナより一歩遅れて玄関に到着したとき、カービィは呆然としている二人を見た。
が、ネスの姿は玄関には見当たらない。ということは外にいるのかと判断して、カービィは他の二人を放って外へと駆け出した。
そして、こちらを見ている金髪の少女――ポーラと目が合う。
「君がネスの友達ー? ネスはー?」
「ネスならこっち」
そう言いながら、ポーラは右を指差した。玄関から既に飛び出ていたカービィは、そちらに視線を移す。
と――そこには、とある人物に抱きついている、ネスの姿があった。
その会話を聞いて、カービィも外に出てきたということに気づいたネスは、腕を相手の首に回した状態のまま、カービィのほうに顔だけを向ける。
「あ、カービィ。彼らが僕の友達だよ」
そのネスと抱かれている相手のほかにも、もう一人少年の姿がある。カービィがネスの隣にいる人物を呆然と見ている間に、ナナとロイも靴を履いて外に出た。
「ネスッ!!」
言いながら、ナナはそちらを見る。そして、ネスが抱きついている相手の姿を視界にとらえた時、ナナはまた硬直した。
白い道着で、髪は弁髪と呼ばれる形。ネスよりも少し身長が高い、彼が抱きついている相手は、少年だったからだ。
少々釣り目のその顔には、感情の様子は全く見受けられなかった。
「……ネス?」
ロイもその様子に驚きながら、確認するように問いかける。
ネスはロイのほうを見てにっこりと笑ってから、もう一人の眼鏡をかけた金髪の少年のほうを向いた。
「ジェフ、ポーラも、久しぶり」
「まったく、僕らはプーのおまけかい? 酷いなあ」
肩をすくめ、冗談のように言う少年にネスはまたくすっと笑う。
「とりあえず、中に入れてくれよ。玄関で立ち話ってのもなんだろ?」
「そうだね。んじゃ、いこっか」
回していた腕を放し、代わりにその少年と手を繋いで、ネスは玄関のほうへと歩き出す。
その様子を見てロイとカービィは早速屋敷の中に戻ったが、ナナは相変わらず固まったままだった。
カービィに言われて屋敷の中に入っていくポーラとジェフを見ながら、ネスはナナの目の前で手を振る。
「ナナちゃん、彼が僕の友達のプー。聞こえてる?」
だが凍っているナナからの反応はない。ネスが更に何か言おうとしたとき、プーが手を繋いでいないほうの手をナナの額に近づけた。
「PKヒーリングγ!」
その言葉と共に、手から淡い光が現れる。その光が消えた頃、はっと気づいてナナはネスをきちんと見た。
「ありがと、プー」
「別に構わない」
プーにそう言ってから、ネスは改めてナナを見る。ナナがぽかんとその二人を見ていると、ネスはニッコリと笑った。
「彼がママの言ってた、僕の大切な友達。名前はプー、チョンモ国のランマ宮殿の王子なんだよ」
王子、という言葉をナナは頭の中で反響させる。そういえばネスのママは偉い子としか言っていなかったような。
「でも、今それは関係ないぞ。俺はネスの友達ということで呼ばれたんだからな」
「うん。とりあえず屋敷に入ろ、ナナちゃん」
驚き半分の状態のまま、ナナは言われるとおり屋敷の中へと入っていった。
時折後ろの二人を振り向きながら。





ナナの後に二人が広間にやってきたとき、屋敷の住人の数人が驚いたような、意外そうな顔を作った。
ネスがとびきりの笑顔で弁髪の少年と手を繋いでやってくれば、普段との変化から考えて驚くのは当然である。
ネスはポーラとジェフが座っている隣に自分が座り、プーをその隣に座らせた。
「ネス? ……えーと、その子は?」
ピーチの声に、ネスは笑顔のまま視線をそちらに向ける。彼女以外にも不思議そうな顔をしている人は多かったが、ネスは特に気にしていないようだった。
「二人とも、自己紹介は終えたんだ。彼はプー」
彼がそう言った直後、プーは小さく頭を下げる。その様子にフォックスが『外見は驚きだが、落ち着いているんだな』と思った頃、カービィが飛びつくように尋ねた。
「プーが、ネスが好きだって言ってたお友達ー?」
その発言に、調べていた事がバレるかもしれないと感じてピカチュウがカービィの頭を叩く。
カービィは涙目でピカチュウのほうを向いたが、ネスはなんにも気にしていない、という様子で『そうだよ』と答えた。
「好きだって……どういうこと?」
きょとん、といった様子でそう問いかけるのはゼルダ。ピーチは(ネスらしい言葉じゃないわね)と思いながら、黙ってその様子を見ている。
ネスはゼルダのほうを向いて、またも微笑んで言った。
「その言葉の通りだよ」
余計に困った顔をするゼルダを見て、ポーラが呆れたようにネスに言った。
「もう、訳が分からなくなってるじゃない。ネス、普段からそうやって皆さんを困らせてたの?」
ネスはくすっと笑って、横を向く。
「別に困らせてるつもりはないよ。みんな、僕がこんな感じなんだって思ってくれてるから」
「そういう問題じゃないでしょ、もう。皆さん、ネスがお世話になってます」
途中で視線を変えながらそう言い、ポーラはぺこりと一礼した。
その様子に、リンクが小さく笑う。
「なんだかポーラさんって、ネスさんの保護者みたいですね」
「彼に全く同意だよ。ポーラ、その発言は保護者専用だぞ」
リンクの言葉に繋げて言ったのは、ネスの友達の一人、ジェフだった。ポーラはその言葉に少し頬を膨らませながら、相手を見る。
「仕方ないじゃない、ネスってば全然変わってないんだもの。今でもすっごく心配だわ」
「ネスしゃん、信頼されてないでしね」
プリンがからかうようにそう言うと、ネスはあはは、と明るく笑った。
「でもネス君、屋敷にいるときと今と状態が全然違うよ。いつもより元気が溢れてるって感じがするもん」
次の子供リンクの発言に、ネスはまぁねと同意した。その直後、隣にいるプーの腕に抱きつく。
「だって、プーに会えるの久しぶりだから。嬉しくって」
「ネス、私たちのことは?」
腰に両手をあてぷん、と怒った様子を見せるポーラに、『もちろん二人もだよ』とネスは付け加えた。
その様子を見て、マルスがふと呟く。
「あのポーラって子、なんだかナナと性格が似てるみたいだね」
その呟きが聞こえたカービィは、ナナとポーラの両方を見て、面白いと言わんばかりに笑顔になった。
「どこか抜けてるところはやっぱり変わってないんだな、ネス」
続いてのジェフの言葉に、ネスはまたあはは、と笑う。
「あの性格は、昔からなの?」
ネスの友人の三人にそう問いかけたのは、サムスだった。聞かれて、ジェフとポーラは目を合わせる。
先に発言したのはジェフだった。
「まぁ、ほとんど変わってないかな。昔はもっと元気な少年って感じだったけどね」
「沢山経験して、ほんのちょっと大きくなったとしたら、そのほんのちょっとの分ぐらいしか変わってないわ」
(なんだそりゃ)
ロイは思った事を心の中に留め置いた。
「それじゃあ、皆しゃんは会った時から超能力が使えたんでちゅか?」
次に質問を投げかけたのはピチュー。その質問に、ナナやピカチュウははっとして彼を見た。今までの話の流れで言えば、とくに違和感があるというわけではない。
これに答えたのはポーラだった。
「PSIを使えるのは皆じゃないわ。ジェフだけは使えないもの」
「まぁその代わり、機械に詳しいんだけどね、彼は」
ネスが繋げたその言葉で、ポポの目が見開いた。その様子を視界の隅で確認して、ネスは小さく笑う。
「機械ー? んじゃあ、ポーちゃんとどっち詳しいのー?」
カービィが言った言葉で、ポポはジェフを見た。その視線に気づき、相手のほうもこちらを見る。
「え、君もそういうことに詳しいのかい?」
「まぁ、少しなら……。趣味程度だから、大したことはないかもしれないけど」
そう会話するジェフとポポに対し、ネスが声を掛けた。
「ジェフ、修理したマシンとかポポ君に見せてみない? ねばねばマシンとか」
言われて、ジェフは持ってきていたものを取り出した。
傍目にはどうなっているのかよく分からない代物だが、それを見たポポは驚きの眼差しに変わっている。
「え、これ、君が作ったの!? 凄い仕組み……!」
「ああ、うん。壊れたアイロンから改造して作ったんだ。これをこうして……」
何やら細かな説明を始めたジェフに、ネスやポーラは呆れたような笑みを浮かべた。
「随分経っても、やっぱりみんな変わってないんだねぇ」
何気なく発したネスの言葉に、ポーラはくすっと微笑みを浮かべた。
「人はそんなに簡単に変わるものじゃないわよ。ネスだってそのまんまだもの」
「ふふ、まぁね」
ネスとポーラが楽しげに会話をしているところで、カービィがふと思い出したように叫んだ。
「ねー! みんなで大乱闘しよーよー!」
その発言に、ポーラやジェフがきょとんとする。プーは驚いた様子こそ見せなかったものの、視線はカービィのほうへと注がれている。
大勢の視線がカービィへと移った時、彼はにっこりと笑い、それを眺めていたマルスも呆れたように笑みを浮かべた。



MOTHER2キャラの性格は色々あると思いますが、変でも見逃してやってくだされ……(汗。
うちのネスは見ての通りということになりました。まぁ、元から変わってますから(爆)。
あ、ちなみに、別にやましい意味は含めていませんよー。(何

平成18年2月12日UP


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最終更新:17:53 2006/07/09




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