本編 第七十話<小説:スマブラTOP
第七十話
不思議な人もいるもんだ。
「そう、ネスは元気でやってるのね。一安心だわ♪」
そう言い、にっこりと紅茶の入ったカップに口をつけるその女性を見て、ナナはプリンやピカチュウと呆れたように視線を合わせた。
カービィはというと、先ほど入れてもらった紅茶のカップに悪戦苦闘している。
ピチューは器用にぺろぺろと舌で舐めながら飲んでいるようだった。
相手がかたんとカップをテーブルの上に置いたのを見計らって、ナナが口を開く。
「ママさんの話を聞く限りでは、ネス君って家でも普通だったんですね」
「ええ、私の自慢の息子よ♪ あ、紅茶、もう一杯入れる?」
何とか飲み干したカービィとピチューの様子を見て、その女性――ネスのママがにっこりと笑って言う。
その質問にその二匹は『Yes』を答えようとしたが、ナナが頭を軽く叩いてきたのでやっぱり止めていた。
その様子を見て、ネスのママはもう一度笑う。
「別にいいのよー? ネスのお友達なんて来るのは珍しいし、おもてなししたいもの♪」
何気ないネスのママの一言に、ナナの目が一瞬きらりと光った。
「ママさん、ネス君って友達を連れてくることはなかったんですか?」
数回そう呼んで、ナナはそろそろこの呼び方に慣れてきたようだった。
この呼び方は、自分達が誰かと聞かれネスの友達だと答えたら、『私はネスのママよ』との返事を頂いたことが理由である。
それからはあれよあれよという間にお客様用の紅茶を出され、テーブルの周りに座って、と今の状態に至る。
ネスの幼い頃の話を聞いても、超能力に関するような事は一切と言っていいほど無かった。
「うーん、あんまりねぇ。外で遊びたい盛りだから、友達がいても家に連れてくることが少なくてママは淋しかったわ」
この返事に、ナナの興味は少しそれる。外で遊んでいるというのなら、親が知らなくても不思議ではない。
「ただ――」
その一言で、ナナとピチューの視線がそちらにまた移った。
「地球を救う旅に出てたとき……あ、このこと学校には内緒ね? 旅の途中では、3人のお友達と一緒にあちこち走り回ってたわね」
きらん、と、ピチューの目が光ったように見えたのをピカチュウは見ないふりをする。
友達という単語に反応したらしく、カービィも興味しんしんでネスのママのほうを向いていた。
「その3人の友達って、ママさんはよく知ってるんですか?」
「何回か遊びに来たから、顔は覚えてるわよ。可愛いリボンをつけた女の子と、メガネをかけてる礼儀正しい子、それと……」
考える素振りをするネスのママを、ナナや他の者達はじっと見つめた。
が。
「あら? ネスちゃんのお気に入りのあの子、どんな格好だったかしら……」
天井を眺めるように考えていたネスのママのその言葉に、一同はがくっと滑った。
だが、その言葉を理解し、ピチューはふと気になった事を質問する。
「お気に入りって、どういうことでちゅか?」
そうピチューが質問すると、ネスのママはピチューの頭を軽く撫でながら答えた。
「ネスちゃん、あの子のことが大好きなのよ♪」
「「「――――えぇ!?」」」
ナナとピカチュウとカービィの声がぴったりと重なった。プリンやピチューもぽかんと驚いた様子を見せている。
「ネス君に好きな人がいたなんて……!」
「ねぇ、その人ってどんな人なのー!?」
未だに信じられない様子のナナとは裏腹に、カービィはその友達の事に興味しんしんなようである。
色恋沙汰が好みなプリンも同意見のようだった。
「どんな人って言われても、言いにくいのよね〜……。確か、どこかの国の偉い子だったはずだけど、忘れちゃったわ」
「偉い子……」
“姫!?”というイメージが浮かんで、ナナとプリンは同時に目を合わせた。
ピチューやピカチュウも何となく予想が出来ているらしい、驚きとも戸惑いとも取れる表情をしている。
「礼儀正しいっていうよりは慎み深い子だったわね♪ お菓子なんかも遠慮しちゃうもんだから、ネスが食べさせてやったりとかしてたわね〜」
「「!?!?」」
さらに一同は訳が分からなくなるばかりのようだった。
ネスがどこかの偉い身分の女の子にお菓子を食べさせているという姿を想像し、ナナは首を小さく横に振る。
「あのネスちゃんはもう、類を見ないくらいに大胆だったわ♪」
その事を思い出しているのか、ネスのママの顔は面白いくらいに笑顔である。
だが大胆なネスというのも想像できず、ナナを始め一同は不思議そうな顔をするだけだった。
ナナは、ネスのママに聞こえないような小声で、共に来た者達に話しかける。
「ネス君の意外なところが見えたような……。ねぇ、誰か何か知ってる?」
「ピチューは初耳でちゅ……。びっくりでちゅね、そんな風には見えないでちゅから」
「ボクも聞いたことないよー。前に友達のこと聞いたような気もするけど、忘れちゃったし」
「プリンはネスしゃんが大胆な行動を取るなんて見たことも聞いたこともないでし……」
「ボクも知らない……。友達っぽい人と電話で話してるのは見たことあるけど、いつもの調子だったし」
ピチュー、カービィ、プリン、ピカチュウと聞いて、だよねぇとナナはまた一つ溜息をついた。
だがここでふと、彼女は発想の転換をする。
「大胆って言っても、普段に比べてってことだよね? もしかしたら普段があの調子で、大胆って言ってたのが普通なのかも」
「そうも言えるでし……!!」
こちらが集団で小さくまとまってそう話している間も、ネスのママはにっこりとその様子を眺めているだけだった。
やがてその話し合いが終わったのか、ナナがまたネスのママに向けてこう話しかける。
「その子といるときって、ネス君はどんな様子だったんですか?」
「とっても楽しそうだったわ♪ ずっとにこにこして、ママの美貌にも負けないくらいだったもの♪」
自分もにこにこと笑みを見せながら、ネスのママはさらりとそう言った。その言葉に、ナナは呆れたような笑顔を見せる。
「ずっとにこにこ? あのネスがー?」
カービィが横からずいっとそう聞くと、ネスのママは視線をそちらに向ける。
「えぇ、それはもう今とっても幸せですってように♪ あんなネスの顔を見れて、私もとってもしあわせだったわ〜」
にこにこ、にこにこ。
それはもう周りにオレンジ色の花が飛んでいるかのように、ネスのママは楽しそうに喋る。
その様子を見てから、ナナは視線を隊員に合わせて、聞けるかぎりの事を聞いてみようと決心した。





「ネスちゃんにもよろしく言っておいて♪ それじゃ、またいつでも来てね♪ バーイ♪」
玄関で外に向かって右手の人差し指と中指のみを立て、他を握り、笑顔を作りながらネスのママはそう別れの挨拶を告げた。
ばたんと後ろでドアが閉まる音がするのを聞きながら、ナナを始め調査隊一同は、その近くで立ち止まる。
「情報は友達にしぼられたわね……」
「肝心の友達が会えないなんて、残念でちゅね……」
ピチューが言うように、ネスの『お気に入り』だという友達は住所が割れていなかった。
他の一人の住所は隣町であり、もう一人の住所は少々遠いものの場所は分かっているという状態であるというのに、その一人だけはさっぱりだったのだ。
ネスのママ曰く『ネスは何とか国の何とか宮殿に住んでるって言ってたけど、覚えてないわ』である。
だがその直後、ネスとその友達はテレパシーが使えるから問題ないしと締めくくられていた。
ネスに隠れて行うこのような状態でなければ、それは確かに正しいことである。
「でも、超能力が使える子だってのは分かったよ〜」
「うん、そうなのよね。……とりあえず、今日は遅いからもう帰るとして、明日はその隣町の友達の家に行きましょ!」
まだネスのことを知るチャンスは多く残っている。
まるでそう言うかのように、ナナは左手に作ったこぶしを、天高く上げた。
「「おー!!」」
オネット郊外中にその声は響いたとか。



ネスママ、似てなくてごめんなさい。何か違いますよね……(汗。
さて、そろそろ暴かれてくるかもしれないネスの秘密。(何
うちのネスは、とことん変です。……え、すでに知ってますか?(笑)

平成18年1月8日UP


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最終更新:17:53 2006/07/09




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