AS 第三話<小説:スマブラTOP
第三話
お仕事探し
マルスもロイも学校に行ってしまって暇になったリンクは、いつものゲームセンターへ行こうと足を進めていた。
「……!」
何気なく歩いていたリンクは、求人広告を発見してふと足を止める。目を通してみると、『18歳〜35歳までの車を運転できる方のみ』という一文が見つかった。
リンクは『ハァ』と一つため息を落としてから、再び歩みを進めた。
(やはり、中卒じゃ採ってくれるところは少ないですね…)
いつまでもマルスの家にタダで居候させてもらうわけにも行かない、とは考えているのだが、このあたりで中卒でも採用する所は無いに等しい。
ではどうしてハイラル学校に高等部が無いのかと言うと、理由は単純。
つまりは、ハイラルそのものが田舎に分類されるのである。
親も弟もそれに満足していたのだが、リンクはそれを嫌がって家を飛び出していた。ひょんなことからマルスと知り合い、友人のロイも居候していると聞いたので自分もダメかと質問した所、快くOKをもらった、と言う事である。
ちなみにその二人には『親とはきちんと話をつけてある』と言ったが、実際は家出に近かった。飛び出した手前のこのこ帰るわけにも行かず、どうすればいいか迷っているのが今の状態である。
「サリアやミドたちは、元気にしているんでしょうかね…」
子供リンクは唯一リンクの考えに賛成してくれて、家を出る手伝いをしたりリンクの行方を誤魔化す役をしていた。
そのおかげで少なくとも捜索願は出ていなかった。有難い事である。
「リンク!」
ふと自分の名を呼ぶ声がして、リンクは振り返った。少し離れたところから、長い金髪の少女がこちらに向かって走ってきている。その耳は、リンクと同じく、長かった。
はっと気づいて、リンクはその名を呼んだ。
「ゼルダっ!?」
近づいてくる相手の表情が笑顔に変わる。近づいてみるとそれは間違いなく彼女だった。
「リンク、お久しぶり。スマブラに来てたなんて知らなかったわ」
「それはこっちの台詞ですよ、ゼルダ。ハイラルより危ない事も多いですし…。ガノンみたいなやつに絡まれたりはしませんでしたか?」
「平気よ。リンクだって知ってるでしょ?私の魔力」
「ええ、まぁ…でも、万が一という事もありますし」
ゼルダは…言うまでもなく、ハイラル学校でのリンクの友人。そして、ハイラル学校校長の娘でもある。
小学の部の頃からお上品に振舞うようしつけられていたゼルダは、どちらかというと人見知りが激しく、友人が少なかった。そんな彼女に何のためらいも無く(もちろん恋愛感情も全く持たず)話しかけてきたのがそう、リンクである。それからはゼルダも心を開き、お互いを呼び捨てに出来るほど仲が良くなった。
変わってガノンドロフは…こちらもまた、ハイラル学校でのリンクやゼルダのクラスメイトだった。歳に似合わず身体は大きく、また黒っぽかった。
彼はよくゼルダにちょっかいを出し、そのたびにゼルダを庇うリンクとケンカまがいの事をしていた。
中学の部の頃には『いじめっこ』から『不良』という表現の方が正しくなるほど激しくなり、教師達を困らせていた。その悪戯は確実にゼルダのみだったので、当人もリンクも十分、迷惑を感じていた。
まぁ、気になる子にはちょっかいを出したくなるというあれにその行動が似ているとは、誰も気づくはずは無く。
「ゼルダは…どうしてここに来たんですか?」
そうリンクが聞くと、ゼルダは苦笑いを見せた。
「リンクと同じようなものよ。私も、大きな街で働いてみたいと思ったから」
「え、じゃあ仕事はあるんですか?」
「それが……」
リンクはその表情がそのまま答えなのだと気がついた。自分は見つけていないのにもし彼女が見つけていたらどうしようかと思った、と心の中で安堵のため息を落とす。
「リンクはどこで働いているの?」
「え…あっ…」
ゼルダの何気ない問いに、リンクは口ごもり、その後、眉をハの字の形にしながら答えた。
「僕も…まだ、職が無いんです」
「え…えぇっ!?」
ゼルダが大声を出す。通行人の数人がこちらを向いてきたので、ゼルダは慌てて顔を背けた。
「…だって、リンク、この町に住んでいるんじゃないの?お金は平気なの?」
心配そうな表情でゼルダがそう問いかける。ゼルダの家は当然だがリンクの家より金は多く、恐らく今も親に援助してもらっているのだろう。
リンクは『えーと』と言葉を探している素振りを見せた。
「今は…友人の家の居候になっています」
「居候!?」
先ほどより抑えた声だったが、ゼルダはまた驚いた。何か言おうとしたのをリンクが遮る。
「でも、今のところは平気ですよ。僕もマルスさんも」
「そう…。なら、いいんだけど」
その時、唐突にあるポケモンの鳴き声が聞こえた。
「プリーッ!!」
「…え?」
驚いてリンクがそちらを見ると、そこにはもはや有名になった風船ポケモンがいた。
頭に青いリボンをつけたそのプリンは、とことことゼルダのそばまで歩いてきた。ゼルダは屈んで、話しかけながらその頭を撫でる。
「ごめんね、プリン。待たせちゃって」
「…ゼルダ?」
その行動に驚いたのか、リンクは控えめにそう呼んだ。
ゼルダはリンクの様子を見て、驚いているのに気づくと、片手でプリンの頭を撫でながらリンクの方を向く。
「家の近くで仲良くなって、スマブラに行くって言ったら彼女もついて来ると言っていたから、私のポケモンになったの。今では大事な家族よ」
そう言い、『ね?』とプリンのほうを向くと、そのプリンはさも当たり前と言うように『プリ!』と強気な返事をした。
その言葉にリンクは納得すると、もう一度ゼルダからプリンに視線を移した。
すると目が合って、プリンは顔を傾け、可愛らしくにこっと笑う。
「道理で。ゼルダはあまりポケモンバトルを好んでいなかったから、どうしてかと思いましたよ」
「まぁね」
リンクの言葉にゼルダが苦笑いを返した頃、プリンは自分の主人の服をぱしぱしと叩いた。
見たところ、何か言いたいことがあるらしい。ゼルダはプリンの頭をもう一度撫でてから、リンクのほうを向いた。
「それじゃ、これから用事があるから、私はこれで」
「あ、ええ」
どこかぎこちない笑顔を見せて、リンクは別れの挨拶として手を振る。ゼルダはそれに返した後、くるっと身体の向きを変えて反対方向へと歩いていった。
当然、プリンも一緒にである。
相手の姿が小さくなってから、リンクはまた小さくため息をついた。
「……やっぱり、無職では格好が付かないですね……」
振り向く事なく歩いていくゼルダの姿を余裕がありそうに見続けながら、だがリンクの心には十分な焦りがあった。




と言っても、結局彼が良く来る場所は変わる事なく。
そういえば新作のDDRが出たとか言っていたな、と思い出しながらリンクはゲームセンターの中を歩いていた。
(この店は入荷が早いから、多分もうあってもおかしくない頃だと思いますけど……)
そして、ある一箇所の近くを通った時に物の配置が変わっている事に気づく。
以前と違っている所へと歩いていくと、自分がよく知っている、だがテンポがもっと速くなっている曲が近くから聞こえてきた。
(あ!)
リンクの見た先には、どうやら新作らしいDDRをやっている人がいた。
距離を置いて後ろに回り、その成績を見てみると、それなりに悪くはないが所々ミスが見られる。
(反応が少し遅いようですね……)
そうやってリンクがしばらくそれを眺めていると、やがて入れた料金分の曲を終わったのか、青年は悔しそうな声を上げた。
続けて金を入れようとするが、後ろに人気を感じて青年はしぶしぶその場を離れる。
その青年が違う所へ行った後、リンクはそれをやるための踏み場へと足を踏み入れた。
料金を入れる前に、今までこのゲームをやった最高得点のスコアが画面に映ったのに気づき、彼はそれを見る。
一位の所に書いてある成績を見て、リンクは小さく感嘆の声を上げた。
「これは……なかなかやりますね。ほとんど全てパーフェクトじゃないと出ないでしょうに」
そして、視線をその名前が書いてあるほうへと移す。
「エス、エー、エム……サム、でしょうか」
少しの時間それを見ていた後、『それじゃあ僕も』と料金を入れ、彼もまたゲームを始めた。
帰るときにはしっかり一位の欄に『LIN』という自分の名を入れて。



翌日。
同じゲームセンターに今日も来たリンクは、あのDDRを誰かがやっている所を発見した。
新しいせいか、空いているほうが珍しいようである。
今度のプレイヤーは女性で、動くたびに短めの金髪が揺れていた。
「へぇ……」
と、リンクが感心したのは、決して女性が綺麗だと感じたわけではなく。
(上手い……)
今リンクがいる場所からはゲーム画面が見えないので、後ろの方に回って様子を見ようとしたが、その辺りにはすでに数人の観客がいた。
その表情が驚きそのものなので、どうやらそちらはその女性よりも下手なのだろうなとリンクは無言で思う。
他の観客と必要以上に近付かないように注意しながら、リンクもその女性の後ろに回って、成績を見た。
(やっぱり、上手ですね……グレートが数えるくらいしかありませんし)
一歩踏むたびに点数がぐっと上がる。画面に書かれているコンボとやらは400以上の数字を出していて、今も上がり続けていた。
そのまましばらくは他の者と同じようにリンクもその女性の様子を見ていた。だが、画面を見ている途中でふとある事に気づく。
(あれ、あれだけ4分の1……?)
リンクがそう感じた直後、画面には青い“Good”の字が出て、コンボと書かれていた数字は消えた。
自分を除く観客の残念そうな声が聞こえ、リンクは無言で苦笑する。
やがて曲が終わると、最後の曲だったらしく名前を入力する画面になった。
ベスト3の一番上の欄に、である。
リンクの記録は押し下げられて二位になっていた。
(あらら、負けちゃいましたねぇ)
そう気軽に考えながら入力し終わるのを待っていたリンクは、決まった名前を見て少し驚いた。
三位の場所にも、同じ名前が入力されているのである。
『SAM』と入力した女性は、ふぅ、と小さく息を吐いた後、DDRの機械の上から降りた。
これだけ人が集まっているんだから、次に誰かやるのかなと周りを見るが、どうやらゲームをやろうとする人物はいないようである。
リンクは少し首を傾げてその様子を見ていたが、少し待っても誰も動かなかったので、『それじゃあ』と自分が足を進めた。
それはその女性が上手すぎて、直後にやると比較されてしまいそうだという不安からなのだが、リンクは全くそんな様子はなかった。
台に乗る直前に先ほどの女性とすれ違い、ふとリンクは相手にこう言う。
「なかなかやりますね、貴女も」
そう言いすぐ料金を入れゲームを始めたリンクを、女性はその言葉に驚いた顔で振り返った。
リンクは周りの事など気にせず、昨日やらなかった曲を適当に選ぶ。
曲が始まると、また観客は驚くしかなかった。

そして全ての曲が終わり。
塗り替えられる一位の名前に、観客はもはや呆然とし、女性は驚いた顔をしていた。
リンクは名前を入力し終わると、あー楽しかったと言わんばかりの笑顔で台を降りる。
降りた直後、あの女性がこちらを見ていたのに気づき、リンクは言った。
「負けっぱなしというのも、悔しいものですからね」
だが相手はその言葉には反応がなく、代わりにジッとリンクを見つめた後、こう呟く。
「当たったらゴメン」
「え?」
そして唐突に、右手を振り上げた。リンクが戸惑っているのもお構い無しに、まるで思いきりビンタをするように手を動かす。
誰が見ても叩いたと思ったそれは、だがリンクがギリギリの所で後ろに跳ねたために空を切った。
「な……何するんですか、いきなり!」
やっと事態を理解したリンクが声を大きくしてそう言うが、相手の女性はそれについて反応はない。
そして唐突にこう、リンクに言った。
「ねぇ君、今何の仕事してる?」
「……は?」
リンクの声は呆れ声である。
「耳が長いって事は、ハイラルの人でしょ? 今、どこで働いているのか聞いたのよ」
「え……えーと……」
もう一度繰り返して言われ、リンクは急に周りを見た。ここはゲームセンターであり、先ほどまで凄いプレイを見せていたせいもあって人気は多い。
そして当然ながら、二人への視線の数も少なくはなかった。
「と、とりあえず……ここにいるとDDRをするのに邪魔ですから、移動しませんか……?」
苦笑いで言われたその言葉に、女性は少し驚いた顔をした後、周りを少し見て答える。
「あ、そうね……」
この女性がOKしてくれた事に、リンクは喋らずに、だが内心はとても喜んでいた。


というのも、リンクが先ほどの質問を言い渋ったからである。
店の外まで来てから、女性はまたリンクに同じ質問をした。
「それで、どこで働いているの?」
「えーと……」
それでも少し言い渋るリンクに、だが相手の女性は返事をただ待っている様子。
リンクは意を決して言った。
「無職、ですけど……」
「え……えぇっ!?」
女性のその返事に、リンクは内心のため息を見せずに苦笑いをした。女性はその後、ふーんと何か考えるそぶりをする。
今度はリンクが質問しようとしたのだが、それも相手に遮られてしまった。
「何で、そんなこ」
「ねえ、君!スタントマンとして、働いてみる気はない?」
その言葉に、リンクの思考は一瞬停止した。
女性はそれを微妙だと答えているように取ったのか、こう繋げる。
「ごめん、自己紹介がまだだったわね。私はサムス。一応、アクション俳優なんだけど」
「は、俳優……なんですか?」
何とか心を落ち着かせ、リンクが言ったのはそんな相槌だった。
「ええ。君の運動能力だったらスタントマンとして働けると思うんだけど……嫌、かしら?」
「え……あ、いや、そんな、とんでもない!願ったり叶ったりですよ!」
慌てながら、だがやはり嬉しそうに、リンクはそう強く答えた。
答えると同時に、本人としては無意識なのだが…サムスの手をガシッと掴んでいる。
相手はその様子に少し戸惑ったようだった。
「いつまでも無職じゃいけないと思っていたんですが、良い仕事が見つからなくて……ずっと困っていたんですっ」
「そ、そうなの……?それじゃ、丁度良いわね」
そう言い、にこっと笑ってから、とりあえず事務所に連絡してみるとサムスは繋げた。
「手……離してくれないかしら?」
「え? あ、すみませんっ」
気づかずにずっと手を握っていたリンクは、後から恥ずかしくなって顔を少し赤らめた。







「あれ? リンク、なんか随分と嬉しそうだな」
夕食時、ロイはリンクの様子からそう話を切り出した。
そうですか?と答えてはいるものの、リンクの表情は微笑である。
「うん、とても嬉しそうだよ。何か良いことでもあった?」
「ぽよよ?」
彼の言葉に繋げるように、マルスの隣に小さく座ってパンをかじっているカービィもそう言う。
リンクは『えーと』と言葉を探してから、にこ、と笑顔で報告をする。
「ちょっとした人と知り合って、仕事が見つかったんです」
その言葉に、ロイとマルスはやはり驚いた。カービィは直後、食が止まった二人を不思議に思って顔を上げる。
「良かったじゃねぇか!」
「本当に。一体何の仕事をすることになったの?」
まるで自分の事のように嬉しそうな様子を見せる二人に少し照れながら、リンクはマルスの質問に答えた。
「スタントマン、だそうです」
「…………へ?」
さすがにそんな仕事だとは思っていなかったらしく、ロイもマルスも今度は呆然とした。
「スタントマンってあの、映画とかで危険なシーンを役者に代わって行うっていうあれ!? リンク、大丈夫!?」
だが、慌てるマルスとは違ってロイは、そう来たか、というように笑い始めた。
「大丈夫だろ、リンクなら! じゃあ何だよ、知り合った人は俳優とかなのか?」
カービィが何も分かっていないようにボーっと見守る中、ロイは軽い気持ちでそう聞く。
リンクは考える素振りをしてから答えた。
「はい、サムスさんという女性で……」
そしてまたロイは、今度はその名前に驚く事になる。
「って、あのサムス・アラン!?」
「え? あぁ、知ってるんですか?」
「知ってるも何も、リンクは知らねえのかよ! スタントマンを一切必要としない本格派アクション女優って、かなり有名だぞ!?」
「……そうなの?」
横から口を挟むのは、こちらも全く聞いた覚えのないらしいマルス。
ちなみにカービィがそんな話を知っているはずはなく、やはりロイは、この家の者の偏った知識に呆れるしかなかった。



ちなみにメトロイドってほとんど分からないので、サムスの周辺はかなり捏造です…;; すみません(汗
ゼルダはお嬢様って感じです。ちなみにまだ登場してませんがピーチも金持ちです(笑)。
ガノンドロフも同い年ってかなり無理があるような気がしてなりませんがー(爆

平成16年8月27日UP


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最終更新:17:59 2006/07/09




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