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第二話
森のお友達たち
とある日曜日の朝。郵便受けから取ってきた新聞を見ながらロイは呟いた。
「なーマルス、トキワの森でドンキーが暴れだしたってよ。まーた食いもんなくなったのかな」
カービィはマルスの頭の上で、昨日買ってもらったキャンディーを口に含んでいる。リンクは今料理当番だったので台所で洗い物だった。
「え、ドンキーがトキワの森にいるの?珍しいな、いつもはコンゴジャングルにいるのに」
ドンキーコング、と言う名のそいつはいわばただのゴリラである。よく町にやってくるのだが今まで捕まった事はなく、目撃証言はあるものの被害もほとんどなかった。彼にその名前をつけたのは近所の少年だと噂されている。
「トキワの森はポケモンばっかだからな…って違う!俺はトキワの森で『暴れてる』って言ったんだよ!」
「えっ、暴れてるのか!?」
マルスは急に大きな反応をした。
「どうしたんだろう、食物が足りなくなったのかな…」
「マルス、それ俺が言った事と同じじゃねーか」
ロイの返事は頭に入らなかったらしく、マルスは俯き気味で不安そうな表情をしていた。
食器を洗い終えたようで、ここでリンクがやってくる。
「あれ、マルスさん。どうしたんですか?」
そう言いつつ視線をロイに移すと、彼の持っている新聞には大きくドンキーコングの白黒の絵が描いてある。近くに『トキワの森』という単語もあったので、大体の予想はついた。
「あぁ、ドンキーがトキワの森で暴れてるって…。…不安だなぁ、捕まったりしたらどうしよう」
動物好きなマルスにとっては、たとえお世辞にも可愛いとは言えないゴリラだろうとも『好き』の範囲に入るらしい。
ロイが新聞の文字を拾っていくと、『ドンキーコングが暴れたせいで、今や町の人気者であるピカチュウ兄弟にも何かしら被害があるのではと思うと、不安が絶えない』という一文も発見した。
「ポケモン大好きクラブの人に取っちゃ、大問題みたいだなぁ」
「ポケモン環境保護委員会の方も、黙っていませんよ」
前者は名前の通りであり、後者は一昔前のロケット団のような悪の組織がポケモンの生態系を壊すのを防ごうと言う取り組みである。
リンクの声が聞こえた後、ずっと何かを考えていたらしいマルスはガバッと立ち上がった。
急だったので頭の上のカービィが滑り落ちそうになり、慌てて青い髪にしがみつく。
「よし!僕らでドンキーをコンゴジャングルに帰してあげよう!」
言いながらガッツポーズを取るマルスに、『やっぱり…』と二人は苦笑いした。
キャンディーを舐め終えたカービィが、頭の上からプッと棒をゴミ箱に捨てた。

トキワの森の入口の所に三人が行くと、そこには既に先客がいた。
赤い野球帽と背中のバットが特徴的な、マルスの家の近所の少年である。
「あ、ネス君も来てたのか」
マルスの声に、ネスも気がついて振り向く。
「あぁ、マルスさん達。うちのママがポケモン大好きクラブの一員で、ピカチュウたちに被害が遭ったらダメだから何とかしてこいって家を追い出されて」
一応、ネスも目的は同じらしい。この返事を聞いてリンクはあることを思い出した。
「あれ、ネスさんのお母さんはF-ZEROファンと言ってませんでした?」
F-ZEROとは、この都市でも人気爆発中のレースゲームである。名レーサーのキャプテン・ファルコンなどはF-ZEROファンでなくともかなり知名度が高い。
ネスは曇りのない、だが味わいもないような笑顔を見せた。
「ママ、会があると入りたがる人だから。週一回のハイリア語講座にも欠かさず通ってるし」
ハイリア語は、言葉の通りハイラル学校でハイリア人に使われる言葉。彼らにとってはそれが母国語扱いであり、リンクにとってこの会話は英語で話している様子と考えた方が合っている。
英語のようだと言っても、保育の部から学ぶためさほど劣るものでもないが。
トキワの森の内部を外から見ようとしていたロイがリンクにこう聞いた。
「そういや、リンク確か前にここでキャタピーだっけか捕まえてなかったか?」
ロイの質問に、リンクは『あぁ』と思い出したような声を出した。
「もうバタフリーに進化しましたけどね。今は子リンクに預かってもらってますよ」
子リンク…子供リンクとは、リンクの弟。生まれたときあまりにもリンクにそっくりだったためそういう名前になったらしい。本名かどうかはマルスもロイも知らないが、これで誰にでも通じるため問題はなかった。
「リンク、ロイ、ドンキー助けに行くよ!」
ネスと話していたらしいマルスは会話中の二人にビシッとそう言った。

トキワの森は、虫ポケモンの多く生息する森である。入口近くにはキャタピーやビードル程度の弱いポケモンしか出ないので近所の虫取り少年たちが捕まえに来る事もあるが、奥にはスピアーの巣もあるので注意が必要だった。もともと薄暗く迷いやすい場所なので、入る場合は注意したほうがいいと近所でもよく言われている。
「それにしても、ポケモン大好きクラブの人って心配性だよね」
母がそれに入っているという事にも関わらず、ネスは他の者たちにそう言った。ロイが理由を聞くと、ネスはくすっと笑って言う。
「ドンキーに簡単にやられるようなピカチュウじゃないし。多分、ピカチュウの静電気でドンキーのほうが痺れちゃうよ」
ドンキーコングと言えども一応はただのゴリラ。掴んだ時にピカチュウの特性である静電気で麻痺してしまえば、それ以上何も出来ない、とのことである。
だがその意見を打ち切るようにマルスが喋りだした。
「ドンキーがピカチュウに攻撃なんてするはずがないよ。彼はバナナと友達にしか関心がないからね」
『彼はとても優しいのに、どうして皆そんなに怖がるんだろう』と呟いたのに、ロイがすかさず突っ込んだ。
「マルス、他の奴らにはドンキーとか動物が何喋ってるのか分かってないんだからな」
「あ、そういえばそうだったっけ」
はははと苦笑いするマルスと呆れ顔でそれを見ているロイの二人を見ながら、ネスはふと思ったことを聞いた。
「ところで、リンクさんは?」
「「…え?」」
二人の声が同時に出て、直後静かになった事にカービィが不思議そうな声を出した。
「ぽよ?」

リンクがいなくなっている。

『あれ、そういえばいつの間に…』と悩んでいるようには見えない様子で呟くマルスに対し、ロイはわざとらしいくらいに大きくため息をついた。
「…ったく…すっかり忘れてたぜ…」
ネスが『何のことを?』とロイに聞くと、相手は性格の事がな、と答えた。
キョロキョロと辺りを見回して、リンクの姿がどこにも見えないのを確かめてから、ロイはすぅ、と大きく息を吸った。

「リンク、勝手に歩いてんじゃねぇ!」

ロイが言い終えて小さなため息をついた頃、自分達が歩いていた道の随分前のほうから がさがさと草が揺れる音が聞こえた。
現れたのは金髪。服の色も緑なので、保護色となって見つけにくいが、髪なら分かる。
「ロイさん、あんまり大声を出すとスピアーの集団がやってきますよ」
あっさりそう言いながら近づいてくるリンクにムカついたのか、ロイは『誰のせいだと思ってんだ』と低い声で答えた。
マルスがリンクにどうしたのか聞くと、相手はニコッと笑った。
「丁度ついさっき、トランセルからバタフリーに進化するところを発見して…つい見入ってしまいました」
その返事にもう一度ロイがため息を落とす。ネスが未だ分かっていないような表情をしていたので、呆れた顔をしながらロイは言った。
「リンク、めっちゃくちゃ虫好きだからな…。…ここに来ると、いっつも勝手に歩き回るんだよ」
「ロイさん、別に迷子になっているわけじゃないんですからいいじゃないですか」
リンクが口を挟んだので、ロイは今度はリンクのほうを向く。
「って、こうやって一緒に来てるときにいなくなったら心配するだろ!」
「でも別に大声で呼ばなくても聞こえますよ!」
相変わらずだなぁ、と二人の様子を見ていたマルスは、カービィがある方向を指差し何か喋っているのに気がついた。
そちらの方向に視線を移すと、見えるのは黄色いポケモンの姿。
「あ、ピカチュウ、いたんだ」
ピカチュウは嬉しそうにマルスに返事をする。当然だが、ピカチュウもマルスの友達の一人である。
ネスはそちらを見ていたが、居候二人はまだ何か言い争っているようだった。
「ねぇピカチュウ、ドンキーコングを見なかったかい?」
「ぴか、ぴかぴか?」
「あ、そっか、会った事がなかったっけ。うーん…大きくて、茶色い毛皮をしていて、バナナが好きなゴリラなんだけど…」
ちなみに今の説明ではゴリラだと言えてもドンキーだとはっきり分かりはしないのだが、本人はそれには気付いていないようである。
ピカチュウは思い出したように返事をすると、こちらを見ながらある方向へ駆けていった。何と言っていたのかネスが聞くと、マルスは笑顔で言った。
「あっちに彼らしき人物がいるって。ついていこう」
ピカチュウの後を追うように駆け出したマルスに、ネスもついていこうとして、はっとこちらの二人を思い出した。
「ロイさんにリンクさん。マルスさん行っちゃったよ」
え、と思い出し、二人とも慌ててついていった。

ピカチュウにつれられて獣道をしばらく通っていると、視界が開けた所に目的の人物が寝転がっているのが見えた。
ころん、と背を地面につけて、赤ん坊のように眠っている。
「ドンキー!」
だがマルスの言葉にドンキーはハッと目を覚ました。慌てて周りを確認するその人物にこちらは不思議がるだけである。
それは警戒しているようにも見えたので、マルスは近づいていったが他の三人はその場に立ち止まっていた。
「どうしたの、こんな所で」
「ぽゆ?」
ドンキーコングは周りを一通り眺めて、ホッと胸を撫で下ろした。その後、マルスのほうに向き直ってその質問に答える。
しばらく話していたが、何を喋っているのか、ロイやリンクには分からなかった。
「…で、こっちに来たらスピアーに追われて、慌てて逃げてきた、ってこと?」
マルスの最後の問いに、うんうんと肯定の意でドンキーコングは頷く。会話が終わったように見えたのかそのあたりで他の者達も近くにやってきた。
「マルス、どういうことだったんだ?」
「あぁ、ロイ。ディディーと…あ、ドンキーの親友ね、彼とバナナの本数でケンカして飛び出してきたって」
マルスの簡単な説明に、ロイとリンクは合図もなしに同時に答えた。
「「…は?」」
ネスはそのマルスの答えにか、二人の様子にか、分からないがクスッと笑みをこぼす。
「適当に走ってきたせいか、スピアーの巣に突っ込んじゃったらしくて。そのせいで大暴れしてたのがきっと他の人たちにはドンキーがただ暴れているように見えたんだね」
そういえば改めてドンキーコングの体を見ると、所々針で刺されたような傷が沢山ある。先ほどの警戒もスピアーの集団を避けるためなのだろう。
「スピアーは、自分の巣に入ってくるものには遠慮しませんからねぇ」
「…まぁ、どーせ、たいした理由じゃねぇんだろうなとは思ってたけどよ」
マルスにつれられてこの森に入ってくる時点で、逆の意味でそのくらいの覚悟はしてた。と、ロイの表情が物語っていた。
ドンキーコングは困ったようなどうすれば良いか分からないような表情でマルスをジッと見る。
マルスはにこ、と笑った。
「大丈夫、きっともう怒ってないよ。ディディーもディクシーも心配しているだろうから、もう帰ろう?」
優しい雰囲気のその言葉に、ドンキーコングはやっと不安がなくなったのか笑顔になった。
やれやれ、やっとこれでこの騒動も終わりか、とロイがため息をついたとき、マルスは思い出したように言う。
「あ、でもここからスピアーの巣に近づかないようにコンゴジャングルに行くにはどう行けば良いんだろう?リンク、分かる?」
「え、ああ…。ちょっと遠回りにはなりますが、行けますよ」
「あと、八百屋も通って」
「…え?」
コンゴジャングルとトキワの森は、実質ほとんど繋がっている。そのまま帰るのは簡単だとしても、八百屋は町の中。
「ディディーとバナナの本数でケンカになっちゃった、って話だから、バナナを買っていけば問題ないからね」
「お節介だな、マルスは…」
たかがゴリラのために、とロイは言いそうになったが、ドンキーコングが凄い形相で睨みつけているのでそれは止めておいた。
こういう動物はそんな気配に鋭いらしい。
じゃあ行こうか、と歩き始めるとき、ネスが『あっ』と思い出したように叫ぶ。
「僕も散歩があったんだ、すっかり忘れてた。マルスさん、あとお願いしちゃっていい?」
「あ、構わないよ。散歩って言うと、チビの?」
「ううん、ミュウツーの」
そう言い残して走っていったネスに、ロイとリンクは数秒置いて『はぁ?』とクエスチョンマークを見せた。
「ミュウツー、って…あの、一昔前に騒動があったポケモンですよね…」
「行方不明になった、凶悪なポケモン…とかって聞いたことあんだけど」
驚く二人を他所に、マルスは頭の上のカービィと楽しく会話しながらドンキーと一緒にコンゴジャングルへと足を進めていた。
「「…マルス(さん)は興味なしかよ(ですか)っ!」」
この二人の息は、こういうときに合いやすい。



微妙なオチでゴメンナサイ(汗)。
こっちのマルスは本編と比べて天然を入れてる…つもり…なんですが、そう見えますかね?(汗
あぁ、こっちの設定もちゃんと載せないと。(汗
ちなみにポケモンとか地理の設定とかはほとんど捏造ですんで、真に受けないで下さいね;

平成16年4月13日UP


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最終更新:17:59 2006/07/09




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