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第一話
彼らの日常
赤髪の少年は、まさかと言わんばかりの様子でゲームセンターの中に入っていった。
格闘ゲームのコーナーをスルーして、奥にある音楽ゲームのほうに走ってゆくと、だんだん聞こえている曲の音が大きくなってくる。
ギターやら、太鼓やら、色々な装置のある場所に来て、少年はあたりの様子を調べる。
人ごみが出来てるのは…あそこかっ!
少年は走っていくと、人ごみの中を無理やり通り、その中心で軽快にステップを踏んでいる青年に向けて叫んだ。
「おいリンク!何のん気にダンレボなんてやってんだ!」
声が聞こえて、その青年は一瞬振り返った。だがどうやら画面の中で動いている矢印は速いらしく、すぐ視線をそれに戻す。
「ちょっと待って下さい、パラノイアが終わるまで…」
リンクの見ている画面では、次々と矢印が下から上へ流れていく。あるところまで上がるとそれは消え、画面には“Perfect”の黄色い文字が出てくる。
その下にある数字が250を越えた頃、突如画面に赤い“Miss”の字が現れた。
「あっ!!」
また4・5・6・7…とすぐに増えていったが、それが50まで行かないうちに曲は終了した。
「ふぅ…」
リンクのため息とともに、周りの人ごみからは歓声が上がった。
少年は曲が終わったのを確認すると、周りの様子を無視するようにリンクの手を掴む。
「さっ、曲は終わったんだからもう行くぞ!」
「わっ、ロイさん、そんなに引っ張らないで下さいよ」
画面に大きく『A』と書かれているのをそのままに、ロイはリンクをつれてゲームセンターから出た。
急にやってきてリンクを連れて行ったその少年に周りの者たちはかなり不満そうだったとか。

「あーあ、あと一曲分残っていたのに…」
ロイは横で残念そうに呟く青年を睨む。“少年”“青年”と区別しているもののあまり年の差はないのだが。
「リンクーっ、お前いつまでフリーターでいるつもりなんだよーっ!まぁた金使ってるし」
歩きながらロイがそう言う。リンクは最初は苦笑いを返していたが、『金』と言う単語が出ると思い出したように言った。
「僕は百円しか使っていませんよ。周りの人が『金を払うからやってるところを見せて』と言うので…」
ロイにはリンクがあっさりとそう言ったように思えて、少々腹が立った。もう一度リンクを睨むように見て、ロイはハッとあることに気付く。
「お前、…その服、昨日と全く同じじゃねーか?」
リンクは緑色のフード付きの服を着ていた。下は少々色落ちしたジーパンである。
俺もあんまりファッションとかには詳しくねーけど、とロイは思う。リンクはそれ以上なんだよなぁ。
返事はやはりロイが推測できるものだった。
「違いますよ。昨日の服はもう少し青が強いものですから」
「……。…それは、違いのうちに入んねーんだよ」
ロイは呆れ口調で呟いた。リンクが人一倍詳しいものと言えば、音ゲーのことぐらいである。
ここでこの世界について、少し説明してみよう。
まず、さっきまでゲームセンターでDDRというゲームをしていた金髪の青年がリンク。15歳で、ただ今暇を持て余している。高校を中退…というわけではなく、ハイリア人が通うハイラル学校には元々高等学部がないのだ。
中学部を無事卒業し、上京したのはいいものの、その後は見てのとおりだった。
ロイも15歳で、現在高校一年生である。両親もいたって普通だが、自宅から学校まで通うのは距離的に面倒だったので、学校に近い家の友人の厄介になっていた。
つまりは、二人ともマルスの家の居候なのである。
「…お前、ゲームセンターでバイト探したほうがいーんじゃねーの?」
「あぁ、それもそうですね。暇があればDDRも出来ますし」
「…やっぱダメだな。お前がずっといたら営業妨害になりかねねー」
「それはどういう意味ですか!」
何気なく話しながら建設中のビルの前を歩いていくと、ふと前方から青髪の青年が歩いてくるのに気が付いた。
肩に大きめの鞄を下げている。相手もこちらに気付いたようだった。
「ロイ、リンク」
「マルス!」
ロイが相手の名を呼んだとき、マルスの鞄がふと動いたようにリンクには見えた。
マルスは二人の前まで走ってくる。
「良かった、探してたんだ。ちょっと言わなきゃいけないことがあったから」
ロイが『何だ?』と言おうとしたとき、急にマルスの足元で猫の鳴き声が聞こえた。
マルスは屈んでその猫に話しかける。
「どうしたの、クロ?」
マルスの言葉を合図に、その黒い猫はにゃあにゃあと鳴き始めた。猫はずっとマルスを見ながら鳴いている。
はたから見たらこれって変人だよなーなどとロイが思っているとき、急に頭上からやかましい音が聞こえた。
「ん?」
ロイは音のしたほうを見る。どうやらビルの屋上においてあるクレーンの調子が悪いらしく、鉄材を運ぶ動きがぎこちない。
「危ないですねー…。落としたりなんかしたら大事故ですよ」
もしそんなことにあったら被害に合うのは自分達だと言うのに、さほど慌てる様子でもなくリンクはそう言った。
まぁ、彼の運動神経なら避けるのは簡単なのだろうが。
マルスがずっと猫を見ているので、することがなくロイはずっとそれを見ていた。
そういう予測に限って、当たりやすいものである。

グラッ

「あっ」
リンクの言ったとおり、そのクレーンはバランスを崩し巨大な鉄材を手放した。
落ちてくる場所は自分達のいる所である。
リンクはバッとその場を離れる。ロイもリンクと同じようにしようとしたのだが、そこでもう一人のことを思い出した。
「やべっ、マルス!」

ガッ ボゴ

マルスは急に視界が暗くなったので、何かと思い後ろを見た。自分に影を作っているのは巨大な鉄材であり、それを支えているのはロイの右手。
「あぁ、ロイ、ありがとう」
猫は走り去ってしまった。いつまでも鉄材を持っていても疲れるだけなので、ロイはよいしょとそれを地に付ける。と、すぐにクレーンのあるところを向いて叫び出した。
「おいこらこのビル建築の最高責任者誰だーっ!?けが人が出たらどーするつもりだったんだよっ!!」
腹が立ったのか叫び出したロイをリンクがなだめる。ふぅ、と鉄材を通行人の邪魔にならない場所に置くと、ようやく猫がいなくなったマルスのほうを向いた。
「猫との話は終わったのか?」
「うん。お腹がすいてたようだから、日が傾くころ家に来るように言っておいた」
「で?」
「え?」
マルスは何の事か分からないような素振りをする。やっぱりマルスの鞄の中身は動いている、とリンクはまた思った。
「さっき、話しておかなきゃいけないことがあるって言ってただろ」
「あぁ」
思い出したようにマルスは鞄を地面に置く。ジー、とチャックを開けると、急に中からピンク色の生物が飛び出してきた。
「ぽゆゆ〜♪」
「ゴメン、カービィ。すっかり忘れてた」
自分に飛びついてきた全身のほとんどがピンク色の生物を撫でながら、マルスはロイとリンクのいるほうを見た。
当然、二人の目は驚きで一杯である。
「…な、なんだそいつ!?」
「ポケモン…ですか?」
マルスがカービィと呼ぶその生物は、マルスの身体をひょいひょいと上り頭の上にまで来た。
「ポケモンではないらしいよ。名前はカービィ。ポップスターの住人だって言ってた」
ポップスターとは、今三人が住んでいる大都市『スマッシュブラザーズ』よりかなり離れた地域にある町である。
身長が数十cmほどしかないそこの地域の者たちはスマブラで日常的に使う言語を知らないため、あまり交流が盛んではなく、それゆえにあまりここでは知られていなかった。
ちなみに大都市スマブラは二年前『スマッシュブラザーズDX』に改名されたのだが、いまだにスマデラではなくスマブラと言う人は多い。
マルスはカービィのいた分が空いた鞄のチャックを閉めると、最初と同じようにそれを肩にかけた。
「彼、僕に凄くなついちゃって…。交番に送ろうかとも思ったんだけど、そのほうが嫌がるようだったから、家で飼うことにした」
あっさりとマルスはそう言う。リンクとロイはやはり驚くほかはなかった。
「飼うって…そいつをか?」
「うん。だから一緒に住んでる二人にも教えなきゃ、と思って」
「そいつには家族はいないんですか?」
「それが、ポップスターには家族って概念はないんだって」
そのとき、頭の上にカービィがまた何か喋った。ハッと思い出した様子を見せると、マルスはロイを指差してカービィにこう言った。
「あっちが、『ロイ』」
「ぷい?」
「うんうん。それで、こっちが『リンク』だよ」
『こっちが』の時点で指差すのをリンクに移す。カービィの視線も同じように動いた。
「ぽーゆ!」
「そうだよ。これからも世話になると思うから、忘れないようにね」
にっこり笑ってそう言うマルス。その様子を見ていて、ロイは前々から思っていたが改めて思ったことを喋った。
「やっぱり変わってるよな〜、マルスの誰とでも話せるその能力。はたから見たら変人っぽいぜ」
変人と聞いてムッとしたが、『ロイだって変わってるじゃないか』とすぐ反撃に出る。
「巨大な鉄材を片手でとめることが出来るような高校生なんて、そうそういるものじゃないよ」
確かに、である。ここにいる三人は一見普通の青年達のように思えるが、みんなそれぞれ跳びぬけた能力を持っていた。
物語の冒頭でダンス・ダンス・レボリューションというゲームをやっていた青年、リンク。彼は飛びぬけた運動神経とリズム感を持っており、普段何かしらの邪魔が入らなければA以下を取る事はないと言う。
中学の部のときに多くの運動部に入り、しかも全てを人並み以上に努力して取り組んでいた事もあって、運動能力はずば抜けて高いのだが、フリーターと言う今の状態では宝の持ち腐れとなっていた。
高さ数mのところから落下してくる重さ数tの鉄材をも片手であっさりと支えられる、怪力のロイ。『怪力』と言う言葉を使うと本人が怒りそうだが、それ以外に似合う言葉はない。
鉄材が落ちてきた時に『ガッ ボゴッ』という妙な効果音が聞こえたが、両方ともマルスやロイにぶつかった音ではない。
前者はロイが鉄材を掴んだ音であり、後者はその重さによってロイが足をつけていた地面がへこんだ音である。
当然ながら、ロイにケガは全くない。
「ぽよよ〜」
マルスの頭の上でカービィが喋った。それを聞き、マルスは苦笑いする。
「え、マキシムトマト?…あれって結構高いんだよなぁ…」
一番人間離れしているのではないかと思われるのが、マルスのこの能力である。生物の声を聞き、意志を感じ取ると言う能力のおかげで、マルスには人間外の友も多くいた。
だが、そんな能力があるからこそなのか、マルスは身体的にはいたって普通の高校生である。成績は優秀で剣術もそれなりにあるのだが、一対一対一で他の二人とケンカでもしたら、いつも最初にやられるのは目に見えていた。
「カービィ、ですか…」
リンクがマルスの近くへと歩いていく。マルスの頭の上のその生物はニコッと笑い、先ほど聞いた相手の名前を繰り返した。
ロイは特に動かずマルスに聞く。
「つーか、なんで急に飼うなんて言ったんだ?ノラ猫とかノラ犬にはそんな事なかったのに」
カービィのほのぼのした様子を見ながら微笑していたマルスは、いきなりのロイの質問に『え?』と問い返した後、少し考える素振りをしてから笑顔で答えた。
「彼は可愛いから、かなあ?」
『何で理由を聞いたのに疑問形で返すんだよ』と思い、ロイは笑顔のマルスを呆れた目で見つめていた。



普通じゃない高校生たちの生活は、どうなるのか?
と、そんなイメージで書き続けたいと思いますv
ちなみに書き忘れてましたがマルスは大体16才ぐらいって事にしといて下さい(汗)。
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最終更新:17:58 2006/07/09




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