エンパ夢 第七話<夢小説:三國無双TOP
第七話
青・諦めろ
今回の生産はこの程度か……。作物の作りは悪くはないが、これでは大した強化は見込めぬな。
兵もこのままでは増やすに増やせぬ。今のところでは、二千が妥当なところか。
ふむ、次は……。騒動か。減ってはいるが、まだ無くなってはいないようだな。
姜維に城下の見回りを強めるよう、言っておくか。
む、これは何だ? ……なんだ、これは陸遜のものではないか。私の仕事の中に混じっていたようだな。
……届けに行くとするか。




ガチャ。




そういえば、あの女はどうしているものか。
今のところは何に使えるかも分からぬな。あの体つきでは、武将として戦えるようにはあまり見えぬが……まぁ良い。いずれ分かる事となるだろう。
それに戦えぬとしても、利用する方法はいくらでも――
「――で戦なんて! 避ける方法はないの!?」
……今の声は、あの女か。
見た陸遜の部屋の戸は全開になっている。緑の服が少し見えている……姜維もいるのだな。
「一つだけ、ある事はあります。……ですが、私にはその方法は選べません」
「何で!? その方法って、何なのさ!」
扉の前まで来ると、姜維の奥でわめいている女の姿が見えた。そのさらに奥に見える陸遜の顔は、いつもと違いがない。
当然だな。奴がこの程度でうろたえる事など、あるはずがない。
どの、落ち着いて――」
「それは貴様を奴に譲ることだ」
私の声に、三人の視線がいっせいにこちらへと集まった。女――は目を見開いて呆然としている。
理解は余り速くないようだな。
「譲る……って?」
「言葉どおりの意味だ。貴様の身を奴に引き渡せば、これ以上こちらに手出しはしないと言っている」
この顔は、まだいまいち納得がゆかぬというところか。
「そういえば、司馬懿どのはなぜ此方に?」
その言葉に私は陸遜を見、持っていた書簡を奴に投げた。
陸遜は驚く事も無くそれを受け止める。
「忘れ物だ」
奴は中身を見て自分のものだと確認すると、私のほうを向き笑みを見せた。
「あぁ、わざわざどうもありがとうございます」
特に言葉を返す事なく、私は女を見る。どうやらまだ悩んでいるようだ。
「そんな条件……あったりするの? なんであたしなんて……」
どの」
姜維の言葉に、はそちらを向いた。
どのはご自分が思っている以上に、この世界にとって稀な存在となっているのですよ。空から降ってきたのに無傷の女性、とくれば『天女』だと考える者すら出てきます」
「てっ、天女!? そ、そんな訳無いでしょ!?」
その言葉がよほど予想外だったのか、うろたえながらが言う。
「もちろん、私たちはどのがそうではないと思っています。ですが世の中には……」
「あっ……」
やっと納得したか。姜維も面倒が多いだろう。
「珍しいものに興味を持つ輩は少なくない。無駄な金ばかりある奴ならなおの事だ。肝に銘じておくことだな」
「ぁぅ……」
女が俯く。それでもまだ戦を避ける方法を考えているのか。
……馬鹿めが、早く気づかぬか。
私は息を吐き、陸遜を見た。
(話しても良いな?)
陸遜からの肯定の視線を受け、私は目の前の女に視線を戻す。
「奴は貴様が陸遜の妻となった事を知りながら、そのような条件を出した。この状態で貴様を差し出せば、陸遜の立場は傍目からどう見える?」
「え? ――あっ……」
はっと驚いたような顔をし、女が陸遜を見る。陸遜は女の視線を感じると、その表情を『苦笑』へと変えた。
相も変わらず、作るのが上手い顔だ。
「そうなれば、人質を取られたと等しい状態になるでしょう。我が国にとってこれから有利な方向へと転んでいくとは、到底思えません。……分かって頂けましたか?」
その顔での陸遜に言われ、女は困った顔を作る。
やっと納得したか。
「お二人とも、意地が悪いですね」
と思ったところに突然の姜維の言葉に、私のみならず女と陸遜もそちらを見た。姜維は呆れたような顔をしている。
果たしてその顔は誰に向けてのものか。
「い、意地が悪いってどゆこと!?」
「嘘は言っていませんが」
陸遜は困ったような顔で姜維へと言う。その顔は恐らく――本物だな。
騙されたとでも考えているのか、はその意味を知りたがってしきりに聞いている。
どのの身柄をという条件は確かにありましたが、陸遜どのはそれを承知で貴女を妻へと迎えたのですよ。……つまり、初めから周瑜の条件をのむつもりなど全く無かったという事です」
姜維が言うと、女はしばらく呆然としていた後、その顔をゆっくり陸遜へと向けた。
その顔には、うっすらと笑みが張り付いている。
「りっくそぉん? ……なぁんか、話が違わない?」
「うーん、嘘を言ったつもりはありませんでしたが――」
「そういうのもりっぱなごまかしです! 詐欺よ詐・欺!」
『さぎ』とは何だ? とりあえず、女の言い方からして騙す事に関わりのあることなのだろうが。
女はその後もしばらく陸遜に幼稚な文句を言い続けた。やがて腹の虫が収まったのか、大きなため息を一つつき口を閉じる。
「すみません、。ですが、貴女を手放したくなかったというのは本当の事です。それだけは、信じていてください」
真面目な顔で言われたためか、女もそれには『はぁ』とため息をついてから、笑顔で答えた。
「ありがと、陸遜」




昼食後。
「では、戦える、と?」
私の問い掛けに、姜維は頷く事で返した。
話によれば、は姜維と一騎打ちで戦い、こやつを本気にさせるほどの力があるという。
あの女にか……。何事も、見た目では判断出来ぬものだな。
「ですが、どのは戦がお嫌いなようですからね……。出るかどうかは、私には分かりません」
それでも、あの様子では何かしら行動は起こすのでしょうが、と姜維は言う。
それについては同感だ。
「今まで戦場に立った事はないそうだな?」
「ええ。戦のない平和な世界にいた、とおっしゃっていました」
「それではほぼ役には立つまい。まぁ、足手まといにならぬだけ増しというものか」
「相変わらず、厳しい判断ですね」
姜維は苦笑を見せる。そのような事、今に知った事ではあるまい。
「貴様や陸遜が言わぬから私が言うだけの事だろう。貴様らは甘すぎる」
「司馬懿どのがそういう事を言って下さるので、私たちは厳しい事を言わずに済んでいるのですけどね」
唐突に言葉がやってきて、私は後ろを振り向いた。
と話していたはずの陸遜が、こちらを向いている。
「え、何? なんの話?」
「いえ、姜維どのが司馬懿どのに厳しいと言っていたのが聞こえたので。少し口を挟んでみただけですよ」
は多分聞こえてないので、ご心配なく)
そんな陸遜の視線に、私は小さく笑みを作った。
何でもありませんよ、とに話を戻す陸遜を見てから、こちらも体勢を戻す。
「奴が宣戦布告をするのは、三日後だったか。どのように踊らせてくれようか……」
「司馬懿どの、あまり相手を激しく怒らせるような事はしないで下され。後が大変です」
「あ、うんうん! 周瑜は普段冷静だけど火がつくと相当熱くなるから気をつけたほう良いよ〜!」
またも突然に入ってきた声に、私は少し眉をひそめながらそちらを見た。
だが、その内容に有る違和感で、に向けられていたそれはすぐに好奇の視線に変わる。
「何故貴様がそんなことを知っている?」
姜維の表情もさほど変わらず、驚愕の顔をしていた。
先ほど何かを聞いたのか、陸遜は納得しているように苦笑しているが。
「んー、あたしが前にいたとこで、そういうのを知る方法があったから。その方法はちょっと言えないけど」
『ってか言ったって分かんないと思うし』と呟く女に、私は少し表情を濁らせた。
「有名な武将40人以上くらいならばっちり頭に入ってるよ。あっもちろん、陸遜も姜維も司馬懿もね」
そう言いながら、自分の頭をぽんと軽く叩く。それに間を置かず姜維が言う。
「という事は、名乗る必要はなかったということですか」
「そのようです」
ふむ。有名な武将40そこらというのは曖昧だが、その情報が正しいのであればこれは大いに利用できる。
「おい、その情報は確かなのだろうな?」
女に向けてそう言うと、は一瞬間を置き何やら考え込むような素振りをした。
「多分合ってると思うけど、あたしの説明は下手だと思うから肝心なとこは抜けてるかもしれないから」
言い、舌を出しながら少し首を傾げる。私はを見下ろす視線を冷たくした。
「なんだそれは。役に立たぬではないか」
「悪かったねぇ。でもとにかく何かでは役に立ってやるんだから! 天下統一しなきゃ下手すりゃ帰れないかもしれないんだし」
私は、いや私のみならず、姜維や陸遜も、その言葉には驚いた。
「天下統一しなければ、帰れない……?」
「元のいた場所に、という事ですか?
「あー、ごめん今の無しって事で……無理? ぃや、と、とにかく推測だからさ、気にしないで」
二人の質問を、女はあからさまに困惑の色を見せながらごまかしている。
それが本当の事なのかは知らぬが、私にはあまり興味の対象にならなかった。
「それでは、天下統一を成し遂げる時まで、はずっとここにいて下さるのかもしれないという事ですね」
「あー……って、陸遜!? そういう考えになるの!?」
「それは心強いですね。どのがいて下されば天下統一も狙えるかもしれないというのも、満更でもないように思えます」
「え、姜維!? どっからそういう結論になるの!? ちょっと、司馬懿もなんか言ってよー!」
「知らぬな」
「酷いー!」
暴れる女を見ながら、この国の未来を想像し、私は小さく笑みを作った。



司馬懿や陸遜の仕事って、具体的にどういうものがあるのかよく分かりません。(爆
なので、違和感のない程度に誤魔化してるつもりなんですがー……(爆)。
三国時代の風景の知識はさっぱりないので、その辺りは間違っててもあざ笑っていて下さい(何。

平成17年8月29日UP


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最終更新:11:54 2006/06/27




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