第六話 緑・武将並み どのの要望に応えて、城の中を歩き回りながら説明している最中。 ある部屋の前を通ったとき、ふと私はあることを思い出した。 「どのは、戦えるのですか?」 その問いに、どのはとても驚いた表情を見せた。それほど驚かれることだっただろうか。 「いや、全然全然! 武器なんて今まで一度も持ったこともないよ」 「一度も?」 言い返す私の表情に疑問を持ったのか、どのは不思議そうな顔でこちらを見た。 だが、私としては刀の存在が気になる。 「では、あの刀はどのの物ではないのですか?」 「……刀?」 あの後、どのがずっと眠っていたこともあり、どのと共に拾った刀は武器庫に収容されていた。 その武器庫へと行き、あの時に拾った大きな刀を取り出してどのに見せる。すると、どのは驚いた顔をしてから、なぜかその表情をゆっくりとこわばらせた。 ずいぶんと長い時間、まじまじとその刀を眺めた後、どのは視線をゆっくりとそれを持つ私に向ける。 「これってさぁ……。その、『孤刀』、だよねぇ?」 「やはり、ご存知でしたか。どのを……その、保護したとき、そばにその刀がありましたので」 私がそう言う間にも、どのは視線を刀に向けて眺める。 どのが刀を求めたので渡すと、彼女は慣れた手つきでそれを持ち、腰を低くして構えた。 その姿は素人の真似事には私には見えない。 「戦えるではありませんか」 だがどのは体勢を直し、苦い表情を作った。頭を掻き、苦笑する。 「いや、ホントに武器持ったのも初めてなんだよね……」 「? では、今のは……」 「ただの見よう見まね、というか」 そのどのの表情が変わらない事から、嘘を言っているのではないという推測はできる。が……その言葉が私には信じられなかった。 「先ほどの様子は、ただの真似事にはとても見えませんでしたが」 「やっぱり? んー……やっぱエディッ……が……なのかな……」 どのは俯き加減で何かを呟いていた。聞きなれない単語があったが、どのは構わず私のほうを向いた。 「これって、あたしと一緒に落ちてたんだよね?」 「あ、はい」 「って事は、やっぱ、あたしの物って事だよねぇ?」 「そうだと思っていましたが」 どのは『はぁ〜』と、大きなため息をついた。私は何か、おかしい事を言っただろうか? そのままどのは私に刀を見せながら続けた。 「さっき姜維さ、『真似事には見えない』って言ってたよね」 私が肯定すると、どのは苦い表情を変えないまま続けた。 「もしかしたらあたし、戦えるって事かもしれない」 どのの言葉に、私は眉をひそめた。なぜ、『もしかしたら』という言葉が繋がるのだろうか。 「それはどういう意味なのですか?」 「いや、言葉どおりの意味なんだけど」 そう言い、どのは苦笑いしながら頭を掻いた。そうして、ふと何かを思いついたように表情を明るくする。 「ね、姜維。手合わせとかって、できる?」 「? ……今、でしょうか? できなくはありませんが……」 この返事に、どのはにこっと可愛らしい笑みを見せた。 「じゃ、宜しく! あたし、ちょっと調べたいことがあるからさ」 「調べたいこととは?」 「あ、いや、こっちの話」 手合わせして一体何が分かるというのだろうか。 そうは思ったが、どのは誤魔化しているようだったので、細かく聞くのは止めておいた。
姜維の口調が分かりません(爆)。 というか、ここまで『丞相』と言わない姜維も珍しいような気が(笑。 なんだか良い役がないような気がする彼ですが、別にお笑いキャラではありませんので悪しからず。 平成17年8月13日UP 五話に戻る 七話に進む |