エンパ夢 第五話<夢小説:三國無双TOP
第五話
黒・面白い
自分ちのベッドじゃないせいか、あたしは思ったより早い時刻に目が覚めたみたいで。
じゃあ陸遜の寝顔でも拝めるかなと一瞬思ったけど、そこに行くとその相手はすでにばっちり起きていた。
「おはようございます、どの」
「おはよー」
陸遜はすでに普段着で、これからすぐに仕事を始めますよという雰囲気をかもし出している。
でも、あたしはこれから一体何をすればいいのかがさっぱり分からない。
「ねぇ陸遜、一応妻って事になったけど……あたし、何すれば良いの?」
そう聞くと、陸遜はあぁ、と思い出したようにこちらを見た。
「特に、しなければならない事というのはありませんよ」
「え、そうなの?」
后という身分にもやっぱり何かしなきゃいけない事があるのかと思ってたんだけど。
という顔をどうやらあたしは見せてたらしく、陸遜はにこっと優しげに笑みを見せた。
「伝統をないがしろにするというつもりはありませんが、形式に囚われてばかりいるのもいけませんから」
ってか、それで良いのか。
「ですから、どのは好きなように過ごして構いませんよ」
陸遜はさっきの笑顔のまま、あたしにそう言ってきた。
……って、言われてもなぁ……。
「あたし、城の構図とかそういうのがさっぱりだから、多分迷子になると思うんだけど……」
「なら、姜維どのに案内をお願いしましょうか?」
「え!? でも、姜維にも仕事があるんじゃ……?」
わざわざあたしのために他の仕事を押しのけて、なんて図々しいでしょ。
あたしがそんな感じで考えてた時、急に陸遜の寝室の扉が開いた。
そこから入ってきたのは、なんとまあその姜維で。
「私はお二人とは違い、それほど多く決まった仕事はありませんから、構いませんよ」
姜維は、そう言いながらあたし達のほうへと歩いてきた。ってか、寝室に入るのって相当親しくないと失礼なんだよね?
「聞こえていたのですか?」
「はい、周りも静かでしたから」
陸遜は驚く様子も無く姜維に話しかける。この様子からすると、どうやら珍しくもないみたい。
姜維は陸遜と十分話した後、あたしの方を向いた。
「では行きましょうか、様」
……ん?
「ちょっと待って、『様』って何?」
あたしに『様』なんて似合わないっての。
姜維にあたしがそう言うと、目の前にいた二人はぽかんとした。
陸遜のそれは一瞬だけで、すぐ笑みに変えてたけど。
様は私より位が高くなりましたので……」
「じゃあ陸遜はどうなるの? 前に『陸遜どの』って呼んでたよね?」
「それは――」
「私が『好きなように呼んで良い』と言ったのですよ」
姜維に聞いたはずの質問に、答えたのは陸遜だった。そっちを向くと、陸遜はくすっと笑みを漏らす。
「普通の将軍と同じように対応して欲しい、と伝えてありますから。どのも、どうやら同じように思っているようですが」
はっと、あたしは姜維を見た。姜維は少し驚いているみたい。
「うん、あたしのことも好きなように呼んでよ! そのほうが気楽でいいし」
「あ……はい」
姜維は表情を苦笑に変えた。その後、それをちゃんとした笑顔に変える。
「では行きましょう、どの」
その台詞に、あたしはニッと笑ってみせた。



「ここは宴会などをやるときに利用する大部屋です。……と言わなくても、どのはすでにご存知だと思いますが」
姜維がそう言うとおり、そこは例の『結婚式』で利用した部屋だった。
あのときあたしを『眠り姫』だなんて呼んだのは誰だっけねぇ、まったく。
どの? ……まだ怒っているのですか、『眠り姫』と呼ばれたことに」
それが顔に出てたのか、姜維が苦笑しながらそう言った。
あたしはふぅ、と小さく息を吐いて、表情を元に戻しながら返す。
「ま、悪気があったってわけじゃないから仕方ないんだけどね。どうも、『姫』とか『きさき』とかってあたしには似合わなくてさ」
言うと、姜維はなぜかくすっと笑った。
「やはり陸遜どのとお似合いですね。あの方も、君主となっても昔どおりに接して欲しいとおっしゃってましたから」
その部屋を後にして次のところに歩きながら、姜維はそう言う。
ってか、昔どおりって?
「昔からの知り合いなの? 陸遜と」
「はい。記憶もないような幼い頃から、司馬懿どのを兄代わりによく三人で遊んでいました。といっても、もっぱら学ぶ事の競争でしたが」
はぁ〜、なるほど。エンパで最初から配下にいる人はそういう扱いになっちゃってるわけね。
「じゃ、幼馴染なんだ」
姜維は肯定した。にしても、陸遜と姜維と司馬懿が幼馴染だなんて、違和感があるなぁ。
「今はもういなくなってしまいましたが、私たちがもう少し幼い頃に丞相の位に凄い人がついていたことがあったのですよ」
「丞相!?」
って、やっぱ諸葛……?
姜維が『丞相』って言うと諸葛しか思い浮かばないってか考えられないんだけど。
「どうかしましたか?」
姜維は不思議そうな顔でこちらを見て言った。あたしは慌てて否定する。
「司馬懿どのよりお若いのに、とても大人びた方で。陸遜どのはあの方の事を『先生』だなんて呼んでいたりもしていましたね」
間違いない、諸葛亮だ。確かにエンパでも陸遜は諸葛亮先生って呼んでたけど、それがこんな形になるなんて……。
あれ、それじゃあ司馬懿は――
「でも、私や陸遜どのが丞相にくっついていると、必ずと言っていいほど司馬懿どのが不機嫌になるのですよ。あんな性格ですから、はっきりと表現はしないのですが」
……なるほど、こう来たか。まぁ、諸葛亮のほうが年下だしねぇ。
「あぁ、確かにしなそう。何か言われてもごまかしそうだし」
「恐らくは、弟を取られたような気分になっていたのでしょうね。……あ、そういえば」
手前に何かの部屋が見えた辺りで、姜維が話を止めてそう切り出した。あたしは相槌代わりに『ん?』と返す。
どのは、戦えるのですか?」
は!?
な、な、なんでそうなるの……?
「いや、全然全然!」
大体、あたしの時代で武器なんて持ってたら罪になるってば!
「武器なんて今まで一度も持ったこともないよ」
「一度も? では、あの刀はどのの物ではないのですか?」
え……。
「……刀?」
姜維は頷いて、こちらに来て下さいと言わんばかりに目の前の部屋へと歩いていった。
どうやらそこは武器庫らしくて、姜維は迷う事なくその奥の方から何かを持ってくる。
「……!!」
……そういえば。
あたしはエンパで、キャラクターエディットをしてた事がある。
作ったのは、姫将で周泰のモーションのヤツ。
まさか自分の名前をつけたりなんかはしなかったけど、でもあたしが作った武将はそれたった一人で。
そしてこのあたしの目の前にあるっていうか姜維の持っている刀というと……。
「これってさぁ……その、『孤刀』、だよねぇ?」
「やはり、ご存知でしたか。どのを……その、保護したとき、そばにその刀がありましたので」
周泰の初期武器、孤刀。
エディット武将が持ってるものも、単純な槍とか剣だったらエディット用だけど、そうじゃないなら武将のそのまんま。
「ちょっと、借りていい?」
「あ、はい、どうぞ」
姜維からそれを受け取って、あたしは記憶を頼りに周泰のポーズを取ってみた。
そうそう、こうやって刀の鞘を左手で持って……。
「戦えるではありませんか」
え!? あ、いや……。
姜維はどこか感動しているような目であたしを見ていた。
期待を壊すようで悪いんだけど……。あたしは頭を掻く。
「いや、ホントに武器持ったのも初めてなんだよね……」
予想通りというか、姜維は驚いたような不思議そうな顔をした。
「では、今のは……?」
「ただの見よう見まね、というか」
苦笑しながらそう言うと、姜維は凄く驚いていた表情を見せる。
「先ほどの様子は、ただの真似事にはとても見えませんでしたが」
「やっぱり?」
んー……やっぱエディット武将の能力があたしにある、とかいうことなのかな……?
信じらんないけど。
「これって、あたしと一緒に落ちてたんだよね?」
あたしが顔を上げてそう聞くと、姜維はハッとすぐ肯定の返事をする。
「って事は、やっぱ、あたしの物って事だよねぇ?」
「そうだと思っていましたが」
はぁ〜……。やっぱり、姜維もそう考えるのは当然ってわけで。
この刀……。あたしは姜維に刀を見せた。
「さっき姜維さ、『真似事には見えない』って言ってたよね」
「はい。それがどうかしましたか?」
姜維が真似事に見えない、つまり本当に戦えるように見えるっていう事は……。
「もしかしたらあたし、戦えるって事かもしれない」
まぁ、能力があったとしてもあたしには無理だと思うけどさ。
人を殺すなんて偉業、あたしにはできっこないし出来るようにもなりたくない。
自慢じゃないが、あたしはただの少女なんだから。
「それはどういう意味なのですか?」
「いや、言葉どおりの意味なんだけど」
でも推測のままでいるのも色々とまずいよね。
どうするべきか。んー……。
「!」
あたしは良い事を思いついてしまいました。
ふふふと笑顔を見せながら、あたしは姜維を見た。



昔話の所は随分と楽しんで書いてました。(爆
これからもこんなオリジ設定が沢山入ると思うので、嫌悪感を覚えたのなら今のうちに退場しておく方が無難です。(笑
エンパだとキャラが死なないから良いですよね。やられても敗北だし、悪くても放逐だし。

平成17年8月11日UP


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最終更新:11:48 2006/06/27




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