エンパ夢 第四話<夢小説:三國無双TOP
第四話
赤・始めます
式が終わって寝室に戻ると、どのは着物を脱ぎ、身軽な格好になって、すぐ寝台に寝転がりました。
「つっかれたー!! 式とか堅い事はやっぱり好きじゃないわ〜……」
ため息をつきながら言うどのに私は小さく笑います。
すると、どのは何か聞きたげな様子で私を見ました。
「ねぇ陸遜、本当にあたしなんかを妻にして良かったの?」
「では、どうしてそのような事を聞くのですか?」
式の前にあった謙遜から言う否定の言葉とは理由が違うと感じ、私がそう返すと、どのは一瞬ぽかんとしました。
「……あ、えーと、だって、どこの馬の骨なのかも分からないような女な訳だし」
どのの事は、もう誰でも知っていますよ」
小さく笑ってそう言うと、どのはムッと口を尖らせました。
まぁ、式場では誰からともなくどのを『眠り姫』と呼ぶ人が現れ、そう噂されている事を知ったどのはとても恥ずかしそうにしていたので、そのような反応をされるのは当然なのですが。
「そーゆー意味じゃなくて! その、隕石みたいに落ちてきたのに無傷だとか、人間かどうかすら疑わしいでしょ!?」
自分で言いながらそのありえなさに悲しくなってきたのか、だんだんどのの顔は俯き加減になってきました。
「では、どのは人間ではないのですか?」
「……人間デス」
ボソリと呟くように言ったどのに、私は微笑みを見せました。
「じゃ、じゃあ、なんであたしを妻になんて考えたの!?」
ふむ。それの正確な返答としては、『貴女がいてくだされば我が国のためになると思ったから』ですが。
これは彼女の期待する答えではないでしょうね。
「貴女を私の側に置いておきたいと思ったから、です」
言うと、どのは驚いた表情をしたまま、その顔を朱に染めました。それを見て、私はまた小さく笑います。
「かっ、からかわないでよー!!」
「からかってなどいませんよ」
「だって顔が笑ってるじゃない〜!!」
「これは素です」
「嘘付けー!」


その後、私たちは違う寝床につきました。
夫婦と言っても、形だけという事になっていますからね。




翌朝、私は今までの仕事を預けていた司馬懿どのの部屋へと赴きました。
「司馬懿どの、昨日はどうもありがとうございます」
私がそう言うと、司馬懿どのは相変わらずの斜に構えた態度のまま、小さく返事をしました。
見れば、司馬懿どのの部屋の中にある書簡はきれいに二分されています。
「貴様の分の仕事は多い方の山だ。さっさと持ってゆけ」
「随分と多いようですね」
そう私が答えると、司馬懿どのは当然の事のように眉を寄せました。
「貴様が仕事をさぼっていたからだろう。周瑜も、もはや聞く耳を持っていないぞ」
「それについての書簡はどれですか?」
聞くと、司馬懿どのはわざわざ立ち上がり、私の仕事の山から迷う事なく一つを抜き出しました。
渡されたそれを手に取り、内容を確認します。
「三日後、少女を貰いに行く。聞けないというのなら、君とこれから肩を並べる事は出来なくなるだろう。野暮なことにならないように、よく考えた上で返事を出して欲しい……周瑜どのらしいですね」
「どうする気だ?」
そう問いかける司馬懿どのに、私は笑顔を返します。まぁ、元から私が何と答えるかは、司馬懿どのはすっかり分かっているのですが。
「もちろん――戦の準備を始めねばなりませんね」
司馬懿どのはそれを聞いて、不敵な笑みを見せました。
私は続けます。
「長安の劉禅どのは、相変わらずですか?」
「ああ。普段通り、自らが戦に巻き込まれなければ良いらしい。他国と手を組んだという話も聞かぬ」
我が領土・天水の南にいる漢中の周瑜どのと戦端を開くとなれば、北側に兵力はあまり割けません。
となればそのガラ空き同然の北からも同時に攻められれば、我が国は圧倒的不利の状態に陥るのですが……西涼・長安を治める劉禅どのは戦が嫌いらしく、決して攻めて来ようとはしません。
私達にとっては、これほどありがたいことなど無いほどですが。
「暗愚だな」
「ええ、そうですね。だからこそ、劉禅どのには感謝しないと」
「フッ」
私の返事が可笑しかったのか、司馬懿どのが小さく笑います。
私はそれににっこりと笑みを返しました。
「そういえば、その疫病神の女はどうした?」
「私の妻に対して、そんな呼び方は酷いですね」
眉をひそめてそう返しますが、司馬懿どのは変わらず嘲笑の表情をしていました。
「今は城の中を回っていますよ。迷子になると悪いからと、姜維どのも共に」
「そうか。……何かに利用できそうか?」
「まだ分かりません。あと、人を物のように言わないで下さい」
「女など物同然だろう」
「そんな事を言ったら彼女が悲しみますよ。それに、貴方にとっては兵も同じでしょうに」
司馬懿どのはフッと小さく笑いました。


自室に仕事を持ってきて、それの処理を順調に進めていた頃、急にどたばたと騒がしい足音が聞こえてきました。
あの様子では、来る方は恐らく――。
「陸遜、周瑜のとこと戦するってホント!?」
室内に入るなり、私の予想通りのその人物――どのは大きな声でそう言いました。
後ろには追い掛けて走ってきたであろう姜維どのの姿があります。その表情を伺うに、うっかり口を漏らしてしまったのでしょうね。
私は視線をどのに移し、真面目な表情で答えました。
「はい、本当の事です」
「何で戦なんて!? 避ける方法はないの!?」
どのは感情を高ぶらせて、まくしたてるように言います。
私は小さく息を吐きました。
「一つだけ、ある事はあります。ですが、私にはその方法は選べません」
私の返事に不服だったのか、どのはさらに怒りの表情を濃くしました。
「何で!? その方法って、何なのさ!」
どの、落ち着い――」
「それは貴様を奴に譲ることだ」
姜維どのの制止の声を遮ってどのにそう言ったのは、さらに部屋の外から現れた司馬懿どのでした。
どのはどうやら司馬懿どのの言っている意味がまだ分かっていないらしく、きょとんとした顔をして彼の顔を見ています。
「譲る……って?」
「言葉どおりの意味だ。貴様の身を奴に引き渡せば、これ以上こちらに手出しはしないと言っている」
そう聞いてからもどのは驚きの表情が隠せない様子です。
ふと、私は口を開きました。
「そういえば、司馬懿どのはなぜ此方に?」
司馬懿どのはこちらを向いて、左手に持っていた一本の書簡を私のほうへと投げました。
「忘れ物だ」
私はそれをきちんと受け止めます。中身を確認すると、それはまさしく私のものでした。
「あぁ、わざわざどうもありがとうございます」
その中身とは、今回の戦で必要になる武器や防具の数や民の情勢など。
戦の準備は、滞りありません。



タイトルには『戦』という主語が入ります。(何
ってか、この陸遜って黒いんでしょうか? 自分で書いててよく分かりません(爆)。
私の小説はほのぼの目指してるんで、戦になってももぉ無理やりに行きますよ。(爆

平成17年8月10日UP


三話に戻る   五話に進む

三國無双

TOP

最終更新:11:45 2006/06/27




100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!