第六十七話 極秘任務を遂行します。 トーナメント戦から数日後。 カービィが広間に入ったとき、何やら小さく固まって小声で話している一団がそこにいた。 メンバーは、プリン、ナナ、そしてピカチュウとピチュー。 その数人はカービィが入ってきた事に気付くと、こちらを一瞬見てからまた何やら会話を始める。 「カービィは?」 「口が軽いんじゃないでしか? 不安でし……」 「でも、相手は彼でちゅよ」 その会話の中に自分の名前を発見したことで、カービィは何やら面白そうなその一団へと近づいた。 自分の名前があったからというのは、ただの口実なのだが。 「何してんのー?」 後ろを向いているプリンへと近づいて、そこでなされていた小声よりも大きな普通の音量の声で話しかけると、プリンは驚いたような動作をした。 びっくりして耳を押さえながら、プリンは振り返り、カービィを見る。 乱闘時、この二匹の大きさはほとんど同じだが、普段の大きさはプリンのほうがよっぽど大きい。というのも、カービィの約2.5倍である。 「びっくりさせるなでし!」 ぷんぷん、と体をさらに少し大きくさせながら、プリンが言う。 別にびっくりさせたわけじゃないのに……と思っているカービィに、次に声を掛けたのはピチューだった。 ピチューの身長は0.3m、カービィの身長は約20cm、カービィの約1.5倍である。 「ヒミツの作戦会議してたんでちゅよ」 その言葉で、カービィの目に星が飛んだ。 「なになにー!? ボクも混ぜてー♪」 嬉しそうに輪の中に入ろうとするカービィに、だがピカチュウは不満そうな顔をする。唯一人型なナナはといえば、やっぱり、と言いたげに小さく息を吐いていた。 「カービィだとうっかりバラしちゃったりするでしょ! ヒミツなんだから絶対人にバラしちゃいけないんだよ!」 自分は駄目だと言われ、カービィがむくれる。『平気だもん!』と怒ったそぶりをするカービィを見て、ナナがため息をついた。 「じゃあカービィ、もしカービィがバラしちゃったら一週間おやつ抜きの刑って言っても、自信ある?」 さすがにそんなことを言われるとは思っていなかったのか、カービィの動作が一瞬ぎこちなく止まる。 ピカチュウがふん、と鼻で笑った直後、すぐにカービィは頭(むしろ体全体)をふるふると振った。 「だいじょぶだもん!」 「ホントにー?」 「ホントにだいじょぶだもん!」 「もしバラしちゃったら、カービィしゃんのおやつピカ兄ちゃんと一緒に半分こして食べまちゅよ?」 「うっ……平気だもん!」 「あっずるい、プリンも食べたいでしー!」 「皆、本題がずれてる!」 わあわあと騒ぎ出したこの場を収めたのはナナの一言だった。 そうだった、と静かになるこの場で、ナナはもう一度カービィを見て問いかける。 「じゃあ、約束できるのね? 信じるからね!」 「了解でーす! で、何話してたの?」 プリンとピチューの間にすっぽりと入って、敬礼のポーズをしながらカービィはあっさりそう言う。 ナナは両手を腰にあて、ふぅ、と一言息をついてから、カービィが来る前と同じような調子で話し始めた。 「ネス君のヒミツを暴こうって話なの」 「……ネ――」 大声でネスと言いそうになったカービィを、すんでのところでピチューが口を押さえて止めた。 しぃー! とプリンに言われ、カービィはその口を閉じる。次に発したカービィの声は小声だった。 「ネス? ネスのヒミツって?」 「ネスのヒミツって言ったら、あの超能力以外にないでしょ!」 びしっとピカチュウがカービィへと言う。その声の音量が他と比べて少し大きめなのを、本人は気づいていない。 次に声を発したのはプリンだった。 「ネスしゃんのあの超能力……どう考えても尋常じゃないでし」 「人が何を考えているのか知ったり、ミュウツーと喋らないで会話してたり……ネス君ってなんか、凄い事ばっかりしてるでしょ?」 ナナの言葉を聞き、今までのことを思い出そうとしているのか、カービィがうーんと首(むしろ顔)を捻る。 「たまにふらっといなくなったりするし。聞いても『知り合いのところに行ってた。皆は知らない人』で終わらせられちゃうしさ」 隠されるのはやはり不満なのか、ピカチュウが眉を寄せながら言う。だからネスを調べようとしているの、とナナが言うと、カービィは納得したように頷いた。 「で、どうするの?」 当たり前のように、カービィが聞く。するとピカチュウは何やら悩んでいるような顔つきになった。 「そこで止まってたんだよ。ネスのことだから、ボクらが何かやってるってこともすぐに分かっちゃうだろうし。どうしようかなって」 「厄介な相手なんでちゅよね……」 場は一気に静かになる。どうしようかと考えながらプリンがふと隣を見ると、ナナは腕を組んだまま目を閉じていた。 何か声をかけようとした瞬間。 「よし!」 ナナは今までより格段に大きい声でそう一言言い放った。 その行動に、他の四匹は何かと思いそちらを見る。 「とりあえず、ネスの故郷から調べることにしない? 皆の家は屋敷から行けるようになってるんだから、ネスのところだって行けるはずだし」 「オネットに行くの?」 乱闘の時にいつも使ってるのに、という意味を込めてピカチュウがナナを見る。 だがナナはちっちっと舌打ちしながら、左手の人差し指を横に動かした。 「オネットには行くけど、『ネスの家』には行ったことないでしょ?」 「……そういえばそうでし」 「というか、どこなんでちゅか? ネスしゃんの家」 うーん、と首を傾げるピチュー。それが問題なのよね、とナナが困った顔をしたとき、カービィがふと声を出した。 「前に町の外れのほうにあるって言ってたよ?」 その一言に、他の四人は驚いた顔でカービィを見た。直後、ピカチュウはそういえば、といった様子を見せる。 「でも、外れのほうにって言っても色々あるよね……。どこがネスの家なのか、やっぱり具体的には分かんないよ」 「誰かに聞いたら駄目でしか?」 またもうーんと黙る一同。だが、それが堪え切れなかったのか、ナナは『ああん、もう!』と唐突に叫んだ。 「そんなの、行ってから考えればいいじゃない。こうやって考えてたって、どうせまとまらないしさ」 普段から考えないもんね、と言おうとして、カービィはふとあることに気がついた。 「そういえば、ポーちゃんは一緒じゃないの?」 こういうことを考えるときは、大抵ナナはポポと一緒にことを行うはずなのに。 そう思っていたカービィに対する返事は次のようなものだった。 「だって、ポポはよくネス君と一緒にいるんだもん。ネス君のヒミツ調査なのにネス君と一緒にいちゃ、色々とマズいでしょ?」 「だから子リンクしゃんもいないんでしよ」 プリンに言われて、そういえば、とカービィは辺りを見回す。 「でも人が少ないと調査がしづらいからって、こういうメンバーになったんだよ」 「ピチューも頑張るでちゅ!」 自分もそれに誘ってもらえたのが嬉しかったのか、ピチューが手を合わせ笑顔で言う。 じゃあもっとメンバーは多いほうがいいかなとカービィが思ったとき、それに気づいたかのようにナナがこう言った。 「でも、あんまり多くなると逆に漏らす人が現れそうなんだよね……。だから、この五人だけで頑張ってみることにしない?」 「ヒミツの調査隊でしか?」 プリンの問い掛けに、ナナは笑顔でこくんと頷く。その響きが良かったのか、他の三匹も嬉しそうな顔になった。 「ねぇねぇ、隊員ナンバーとかつけたら格好良くない?」 楽しそうに言うカービィに、ナナはうーんと考える様子を見せる。 「そうだねぇ……じゃあ、発端の私が隊員No.1で、あとは入った順にピカチュウが2、プリンが3、ピチューが4、カービィが5で良い?」 「良いでしよ!」 「じゃあボク副隊長? わぁ、頑張るぞ!」 「皆の長所を生かして役割分担もしたらどうでちゅか? 仕事があったほうが頑張る気になりまちゅよ」 「そうよね! じゃあ、どうしよっか――」 「おーい、ちょっと……」 唐突に離れたところから声が掛かってきて、一同は少し驚きながらそちらを見た。 見ると、マルスが苦笑したようにそこに立っている。 「何をやってたのかは知らないけど、晩ご飯の時間だよ。続きは後でしたらどうだい?」 言われて、ピカチュウは時計を見る。こんな時間だったんだとナナが気づいたとき、カービィはすでにマルスのほうへと駆け寄っていた。 「それじゃあ、続きはまた今度ね。集合をかけるからちゃんと集まるように! いいね、カービィ!?」 すでにマルスの頭の上まで到達しているカービィのほうを向いて、ナナが叫ぶように言う。それを聞いて、カービィは短い右腕を頭のほうにあて、敬礼のポーズを取った。 「了解ですー、たいちょー!」 「ちょっと、ヒミツなんだからそんなに大声で言わないの!」 その二人の様子を見て、大声で言っているのはどっちやら、とマルスは思った。 さて、これからはどんなシナリオになるのやら。(何 第五部、開始……というかいきなり本題です。前置きないんですか琴根さん。(爆 そんなわけで、この五人の出現率は多分高くなると思われますがお楽しみ下さいな(何。 平成17年11月27日UP 第四部 六十六話に戻る 六十八話に進む |