サカ草原へ。<小説:FE封印TOP
サカ草原へ。
「ここがサカかぁ…。…とっても広いね」
今やエトルリア軍となったこの軍を統べる赤髪の少年が、とても将には見えない幼らしい様子でそう呟く。
「結局、戦争の途中で帰ってくることになっちゃったね、スーにとっては」
正直、ここに来れる事は嬉しかった。母上の故郷だと聞いていたのが一番初めの理由だったけど、今は違う。
ロイの近くでは、スーが愛馬を傍に寄せ何も無い草原に腰掛けていた。
「えぇ…。…風も、川も、何一つ変わっていないわ…」
ロイがスーを見たときには既に、スーは目の前の草原に映る故郷を眺めていた。
ベルンに攻撃されて、部族の裏切りにあって、戦う同士を残して逃げてきたスー。
やはりその故郷との別れは急すぎて、帰りたい気持ちはとても強くなっていたのだろう。
ロイは何も言わず、スーのとなりに座った。スーも不思議がる事もなくそれを受け止める。
言わなくとも、すでに互いが感じている事は分かっていたからだ。
草原独特の風が二人を包む。
「……スー」
ロイが不意に声をかけた。スーがそちらを向くと、彼の表情は一軍の将の顔ではなく、まるで他人に悪戯をする子供のような顔になっている。
「…皆に内緒で、少し駆け回ってみようか」
『って言っても僕はスーの後ろに乗るしかないんだけど』と付け加え、苦笑いする。
彼がそういう表情になっているときはいつもこんな様子だったので、スーも特に驚かなかった。
子供っぽいロイの顔。スーには見せる事のあるこの顔は、戦う仲間に向けての顔とは違う。
「…何てったって、僕も自然体のサカを見てみたいし、ね」
…嘘。…いえ、嘘ではないか。
ロイの心を読み、彼の本心と自分に対する優しさとを感じ、スーは故郷のそれとは違う風を覚えた。

「わぁっ…風が凄いねー」
ロイはスーの後ろに乗っているので、風を感じるのも微々たるものだとは思えるのだが、それでも歓声を上げるほどそれはロイにとって新鮮だった。
普段こんなに速く走っていただろうかと思うほどのスピードで、二人を乗せた馬が走る。
ロイが『いつもは真面目に走っていなかったのかな』と冗談めかして言うと、スーは自分の座る馬の背を軽く撫でて呟いた。
「…お前も、喜んでいるのね…」
馬がブルルン、とうなる。これだけで意思疎通が出来るんだからサカの人は凄いよなぁ、とロイは改めて思った。
「どうしたの?」
後ろで笑っているロイに気がつき、スーが問いかける。
ロイは隠す事なく正直に思ったことを口にした。
「いや、凄いなぁと思ってさ。自然と一体になっている、っていうか…。なんだか、僕だけ別世界みたいだなあ」
言いながらふと思ったことを喋り、今ここにいる自分だけがフェレの人間だから当然だよねと続けようとした時、スーがそれを遮った。
「ロイ様をも、草原の風は愛してくれるわ」
え?、とロイが後姿のスーに視線を向ける。スーは当たり前のことを言うように平然とした口調だった。
「ロイ様にもサカの血が流れているのだから、私達となんら変わりないわ。サカを想う気持ちがあるならロイ様をも同じように愛してくれる」
「そ、そうかな…」
「きっと」
急に、ロイは嬉しいと感じた。サカの民は仲間意識が強く、それはつまり、外の者がその中に入るのは難しいということである。
「…じゃあ、僕もスーと同じだね」
「…ロイ様は、草原だけでなく、誰からも愛されると思うわ」
いきなりスーがそんなことを言ったので、ロイは驚いてしまった。
え、えーと…と戸惑っていると、背中からでもその様子が分かるのかスーは微笑する。
ロイはぷくーっと頬を膨らませた。
「…もしかして、からかってる?」
彼女だからそんな事は無いんじゃないかとは思いつつも、ロイはそう質問する。
スーは返事をせず、もう一度微笑したようだった。

「…そろそろ、時間ね」
視界の半分を占める空が、赤く染まってきている。
しばらく無言でいたのだが、流石にそろそろ戻り始めないと軍の者達に心配されるのではないかと思い、スーが呟いた言葉だった。
だが、それに対するロイの返事はない。
「…ロイ様?」
腕は相変わらずスーの腰に回してあり、当然ながら落ちていると言う事はない。
ふとスーは、先ほどからずっと自分の背にかかっている重さに気が付いた。
「…すぅ…すぅ…」
返事がないのは当然だった。ロイは、スーの背に寄りかかり眠っていたのである。
「…クス」
小さく笑ってから、スーは静かに元いた場所へと馬を走らせた。



やはりほのぼのした感じのものが一番だな〜と改めて思ったり。
確かこれ、FE封印で初めて書いた小説です。6章のや8章のはその後に学校で。(をぃ
やはりスーには自然体が一番でしょう♪
そしてロイにもスーのそばでは彼女を通して自然に触れてほしいなぁとも思ったり。
私のFE封印小説の、原点の作品でした!

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最終更新:12:43 2006/06/27




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