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ライバル
「リリーナはっ…無事なのか!?」
オスティア城前。街での反乱を抑えた一同は城に突入すべく準備を進めていた。
幼馴染の無事が確認できない為か、今この軍を率いている将はとてもあわてているように見える。
そんなロイの姿を、離れた所からじっと見つめる瞳があった。
「……」
弓の弦を直す作業は中断されている。幼馴染の名を呼ぶロイに、スーは気になって仕方がないようだった。
「あまり良い情報は聞いておりませんが…。しかし、悪い話も聞きませんな。よい事を祈りましょうぞ…」
マリナスがロイをなだめるように答える。
「リリーナ…どうか無事で…」
そういえば、あの男は輸送隊の者だったはず…。
口実を見つけ、スーは二人のほうへと歩き出した。ロイはすぐに気付くが、スーのほうはロイと話す事が見つからない為そちらは見ない。
マリナスがスーに気付くのと、スーが手持ちの弓を見せるように出したのはほぼ同時だった。
「弓がなくなりそうなのだけど、予備はない?」
スーの言葉にマリナスは一瞬戸惑ったあと、『それを決めるのはワシではなくロイ様ですぞ』と言わんばかりにロイを見た。
つられてスーもロイを見る。ロイはきょとんとした顔になり、思い出したように言った。
「あぁ、ゴメン。すっかり忘れていたよ」
そんなロイの返事に、マリナスはまた『そんな様子ではリリーナ殿を助ける前にやられてしまいますぞ』と不満を口にする。
自分も分かっている痛いところを突かれ、ロイは困り苦笑いする。
ロイが視線をスーに戻した時、彼女の口からふと言葉がこぼれた。
「少し…風の声を聞いてみるといいわ」
マリナスの頭の上にはクエスチョンマークがいくつか浮いていたそうな。

オスティアは不屈の城だと言われていても、出入り口付近の警備はわりと手薄だった。
それゆえ難なく奥へと進んでゆく。
やはりリリーナのことが気になるのか、急いで進軍しているようにも見えた。
「ランスはそこの魔道士を!アレンは前方にいる傭兵を頼む!」
軍の者に指示を与えつつ、自らも前線に出て戦っているロイ。
後ろからその姿を見ていたスーは、ふと…ロイの進もうとしている左角に人の気配を感じた。
殺気も、同時に、である。
「ロイ様、危ない」
他の人にとっては大したことでもないが彼女にしては大きな声で叫びながら、スーは馬を走らせる。
「えっ」
勝手に飛び出したスーにロイが驚いている間に、スーは自分の死角の位置に矢を放っていた。
うっ、と言う声とともに剣士らしき男が倒れる。クリティカルヒットしていたようで、即死だった。
ロイは安心の一言を言う前に強く叫んだ。
「スー、前に出ちゃ危ない!早く僕の後ろに…」
ロイはそう命令するが、敵は当然待ってはくれない。スーに向けられた剣はいくつかあったが、それらは一つとして当たらなかった。
「私は平気」
心配してくれて有難う、と言おうかとも思ったが、こんな状態ではそんな暇はなかった。
やがて、ソシアルナイトや剣士、傭兵などの働きによって近くの敵は全滅した。
急いで一軍はリリーナが捕まっていると聞いている小部屋へと向かう。
が…ロイたちが小部屋に着く前に、進行方向から青髪の魔道士が走ってきていた。
「ロイっ!!」
その魔道士は、一同を見つけると大声で将の名を呼んだ。ロイもすぐに返事をする。
近づいてくるリリーナのほうへ走るロイの姿が見えて、スーの胸がズキンと痛んだ。
「良かった…とりあえず、これ。身を守る武器として持っていて」
幼馴染にサンダーの書を渡して、その後ロイはふと思い出した。
小部屋にとらわれているはずなのに、どうしてここに?
ロイが口にする前にリリーナは答えていた。
「盗賊がやってきて…宝箱があると思ったのかしら、開けてくれたの。隙を見て逃げてこれたのよ」
「そっか…。さすがリリーナだね」
二人の会話を離れた所で見ていたスー。そこに集中していたのか、近くにその盗賊がいることに気が付いていなかった。
近くの宝箱を取ろうとしていた盗賊は、それらをチャドやアストールに取られたので、逃げるため方向転換する。
「チッ…」
自分からはあまり攻撃しない盗賊だが、反撃を食らう恐れがなければ攻撃しても構わない。
つまり、弓兵相手には攻撃する事もあるということだ。
スーがその殺気に気が付いた時には、もう遅かった。

ズシャッ

「ぐっ…!」
スーの腰の辺りが見る見るうちに赤く染まる。声に気付き振り向いた時、ロイはやっと盗賊の存在に気付いたようだった。
「スー!!」
バランスを崩し、何とか馬にしがみついているスーのほうに駆け寄りながらロイは他の者へと指示を出す。トルバドールに回復を頼み、馬の背に蹲るスーの傍に立った。
「スー、大丈夫!?」
つい先ほどまで幼馴染にあえて嬉しそうだった顔は、とても心配そうな顔になっている。
普段通りの口調で『この程度なら…まだ平気』と将に呟いてから、ふとスーはリリーナのいるところを見た。
「…!…」
目が合った。そう思った次の瞬間、リリーナは視線を不自然に逸らしていた。
まさか…。
「この程度って、全然平気そうには見えないよ!」
この将はこんなにお節介なのか。クラリーネを急かすロイを見て、スーは感じた。

反乱軍の頭は、リリーナやルゥの魔法によってわりとたやすくやられたように見えた。
頭を失った軍の者は散り散りになる。それ以上戦う意志の無い者を、ロイは倒すようにとは言わなかった。
やがて…少しはゆとりの時間が訪れる。
フゥ、と一息ついて、自分の馬の傍に座ったスーは、意識してはいなかったのだがロイとリリーナの会話を聞いていた。
「ねぇ、お父様は?」
「……そうか、リリーナは…。…ヘクトル様は…亡くなられた」

リリーナの声が一瞬止まる。驚いているのだろう。
「わ…私だって…武人の娘だもの…。今は…泣いてなんか…」
「リリーナ…僕の前では、強がらなくてもいいよ」

ロイの声は、すごく優しい気が感じられる。ふとスーは、先ほどのロイの行動を思い出した。
「…お節介なだけ…なのね」
目を閉じても、二人の今の姿が瞳の奥に浮かんでくるのが嫌だった。



完成した後、盗賊は弓兵相手でも攻撃しないことを確認しました…(爆)。
まぁ、こ、この程度は!気になさらないで下さいぃ〜…;
さて、今回はスー視点で。8章のタイトルは『再会』でしたが、ここではこっちのほうが合ってるなと(笑)。
このサイトにあるかぎり恋愛の戦いはスーが勝つんですけどね(苦笑)。

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最終更新:12:42 2006/06/27




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