運命という罠<小説:FE封印TOP
運命という罠
ベルンの力は、こんな所まで及んでいた。
直接の被害と言うわけではなく、かなり間接的なことだ。トリア候オルン様の側近だという男が我が物顔で仕切っていることで覚えた違和感は、謎の少女の言葉でほぼ確信に変わっていた。
案の定――
試してみたら、男はすぐ化けの皮を剥がした。
このまま逃げるよりも、一度この城を制圧した方がいい。
今思えば、僕はそのとき最高の選択をしていたのかもしれない。
軍のことではなく、僕自身の…

「え…女の子?」
カギを開けたチャドが呼んでいたため何事かと思いロイが入った先には、一人の長髪の少女がいた。
赤い服…民族衣装を着ているから、サカの民だろうか。細めの目は深緑色の瞳に強く光を宿しており、なんて強い意志を持っているんだろうとロイは直感で思った。
「…?…館の者ではない?」
小首を傾げて少女が質問する。ロイが名乗ると少女も『スー』と答えてくれた。
「外の『音』はあなたのせい?」
「え?」
「戦いの『音』」
その声は人を寄せ付けないような様子ではあったが、決してきつい感覚は与えなかった。
スーに言われ、ロイは現状を説明する。
「そう…なら、私はあなたの味方。…この館の者は、私にとっても敵だから」
この場が戦場だったので、それ以上の話は後回しになった。
弓を望んでいるようだったので、ウォルトを呼んで弓を貸す。
また戦闘の場に戻ったロイだったが、何故か先ほどの少女のことが気に掛かってしまい、戦闘に集中する事は出来なかった。
長い黒髪が目に入り、ロイは直感的に命令していた。
「あっ…スー!君は…こっちに」
彼女ならそこにいても無事だろうとは思うのだが、何故か彼女は自分の傍においておきたい――。
スーは顔色一つ変えず、ロイの傍まで走ってくると、ロイが見ていなかった方向へと矢を放った。
「え…?」
矢の飛んだ方向には、剣を持ってロイに攻撃しようとしていたらしい男がいた。
どうやらその一撃がとどめの攻撃になったようで、その場に倒れる。
「あなたを狙っていたわ」
彼女の対応の速さに驚くロイ。とっさに礼を言おうとしたようだが、それはなんともタイミングが悪かった。
「あ、ありが」
「ロイ様、後方から敵軍の増援です!」
軍の後方にいたランスが現在の状況を伝える。それ自体は大したことでもなかったのだが、聞いているうちにスーが違う方向を向いてしまったので改めて礼を言うのは難しかった。

「じゃあ君は、サカ草原の…」
「ええ」
城を制圧し、一段落が付いた所でロイはスーに詳しい話を聞いた。
サカもベルンに攻められているのは知っていたが、こうして話していると急に身近に感じられる。
「…なら、私も共に戦わせて」
その言葉にロイは驚いた。戦う相手が同じなので何も不思議ではないのだが、それでもこの軍がサカを助ける事になるかは分からない。
だが、そんなロイの心境を見透かすかのようにスーは続けた。
「この軍で、ベルンと戦う事は、じじたちを助けることになるわ。それに、親切にしてくださったオルン様の敵も討ちたい」
彼女がいてくれれば、どんなに助かる事か。
本人が良いと言うのなら…と納得しようとした時、ふとロイは目的地を思い出した。
「この軍は、オスティアへ向かっている。サカとは逆の方向だけど、それでもいいの?」
「構わないわ。たとえどこにいても、母なる大地がなくなるわけでもなく、父なる天が消えるわけでもないから」
さらりとそう言ってのけるスーに、ロイは感心した。
(これがサカの気風なのか…)
ロイがじっと自分の顔を眺めていたのに気付き、スーは不思議そうに首を少し傾ける。
「…?…どうしたの?」
あ、いや…と慌ててロイはごまかし、それ以上顔を見るのもなんなのでマリナスのほうを向いた。
(それにしても…なんだか…キレイな人だったなぁ…)



と言うわけで、6章:しかけられた罠から。(何
初対面ではどんな感じかなぁと考えてたらこんな話になりました。
って言っても、今更ですがもっと長く書きたかったなぁとも…精進します;

FE封印

TOP

最終更新:12:42 2006/06/27




100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!