その夢の始まり<夢小説:サモナイ2TOP
その夢の始まり
一段落着いてから、はふとある事に気付いた。
目の前にがいるあたり、すでに非現実な事なのだが、彼らがゲームキャラクターとして登場しているものを見たらどういう反応をしてしまうのか。
(ヤバい……?)
そう考え、は昨夜サモナイ2のCDをそのあたりに置いたはずの枕元を見た。だが、の視界にはいくら目を凝らしてもそれらしいものは映らない。
急に目の前にいた人物がそんなそぶりをすれば、彼も不思議に思い。
?」
「え……!? あ、いや、何でもないよ」
本人に喋ってしまえば全く意味はないので、当然のようには誤魔化した。
「あ、ちょっと、気になることがあるから、ちょっと待っててくれない?」
……」
「ごめんねっ」
はそれだけ言うと、走って部屋を出て行った。
扉が閉まったのを見届けてから、はふと、周りを見渡す。
いくら細かく部屋の中を見回しても、彼が記憶を得るようなきっかけは見つからなかった。




(とりあえず……これは、私一人で判断するような事じゃないよね)
自室を出てが向かったのは電話のあるところだった。
幸か不幸か、兄妹達はこの場にはいない様子。
は受話器をとると、番号すらばっちり覚えている幼馴染へと電話を掛けた。
「もしもしっ」
『もしもし? っち? どしたの、こんな朝早くから』
「落ち着いて聞いてね。……なんか、私の部屋に……が現れたのよ」
自分自身をも落ち着かせるように一息入れながら、は親友へとそう伝える。
だが、相手の反応はの予想外のものだった。
『は? 誰それ?』
「……え?」
その返事に、はしばし呆然とし。
「私が借りたサモンナイト2の登場キャラクターじゃん!ど忘れしてないでよっ」
がやっていたのは、彼女が全キャラクターのEDを見て、もうやることもなくなったから、と借りたものだったのだ。
だが、相手から聞こえる声は相変わらずの呆れ声。
『そもそもさ……、あたし、っちにゲーム貸した覚えないんだけど』
その言葉に、は返事を忘れた。


 『ねぇ、これめっちゃ楽しいからやってみなって!』
 『シュミレーションRPG? そのジャンル、やったことないのよね……』
 『だいじょぶだって! 絶っ対楽しめるから!!』
 『……じゃ、楽しいゲームなら自分でやってれば?』
 『あたしはもう全キャラ全クリしちゃったもん♪ってことで、はい!』
 『……全くもぅ……』
 『あっ、傷つけたりなんかしたら弁償してね!』
 『無理やり貸したくせに……』


あそこまで積極的に貸してくれたときはなかったので、借り物が嫌いなも珍しく借りたゲームだったのである。
『おーい、ー?』
返事がないのを不思議に思ってか、そんな声が受話器から聞こえた。
ははっとして、電話の相手には見えないはずの苦笑を浮かべて言う。
「あっ、ごめんごめん。別の友達と勘違いしちゃってた」
『もー。ボケるのはまだ早いよー?』
「あはは、ごめん。それじゃあ」
は受話器を置いて、フウ、とため息をついた。
(とっさについた嘘の割には、ありえそうな話かも……)
苦笑いしてから、今までの結果から分かった事を整理する。
サモンナイト2のCDが行方不明。
友人は貸した記憶がない。
私は借りた記憶が当然ある。
記憶喪失のがいる。
つまり……。
が現れたから、サモナイ2の存在が消えた、……なんて言わないよねぇ」
は、自分の予想に大きな不安を覚えた。





「あ、うん……」
一人で見知らぬ部屋に居ても退屈だったのだろう、が入ってくるとはすぐにそう言った。
は改めてを見るが、どこからどう見てもやはり相手は
一体どうしたものかな、とはまたため息をついた。
「……
彼の言葉に、はっとしては相手を見た。

そのそぶりを『彼らしいなあ』などと思いながら、だがとっさには相手の先ほどの言葉を否定した。
「いや、私は別に、だなんて思ってないし。そりゃあ、大変にはなるかもしれないけど……」
が無意識のうちに強めの声で言っていたそのセリフは、だが部屋の戸が開く音によって遮られた。
、さっきから何一人でブツブツ言ってんのよ?」
「えっ……!?」
隣の部屋から顔を出したのは、と顔が似た、だが髪がもっと長い年上の女性。
の姉だった。
「お、お姉ちゃんっ!?」
相手を判断した瞬間、は『ヤバイ!』と思った。
姉妹なのだから顔はそれなりに似てはいるのだが、性格は随分と違う。が今まで男性と付き合ったことがないのとは対称的に、姉はよく男性と付き合い、すぐに別れる。
恋話が大好きな姉が、妹の部屋にいつの間にか男がいるのを発見したら――色んな意味で辛い。

が思っていることなど知る由もなく、はそう言ってくる。
半ばパニックに陥りながら、はきちんとそれに応えた。
「うん、そうだけど……ってそれどころじゃなくて!」
「なにが『そう』で何が『それどころじゃない』なのよ。さっきから一人でブツブツ喋ってて」
「……え……?」
姉の言葉に、ははっとした。も、今の言葉の違和感に少し眉をひそめる。
「『一人で』……?」
「だって、他に誰もいないじゃない」
ぽかんとした顔で、を見た。と同じように驚いた顔をしている。
「……何? その『どうしてあなたには見えないの?』とか言いたそうな目は」
相手の態度に腹が立ってきたのか、の姉は不満そうな声で言った。
だが、にとっては『そんなこと言われても』である。
「……本当に、?」
の声にも姉は全くの無反応。
その様子を見てから、は思い立ったように言った。
「あはは、ごめん。幽霊見える人はこんな感じなのかなーって、ふざけてみただけ」

「その割には、なんか本気っぽかったけど?」
「だから冗談だって。そもそもお姉ちゃん、自分の目に見えるものしか信じないでしょ」
「まー……ね」
を無視して、は姉と話し始める。
やがて姉がここの隣の自分の部屋に戻ったのを見てから、は声を出さないように大きなため息をついた。
「……
「あ、うん。ごめんね、さっき無視しちゃって」
に呼ばれ、は隣の部屋に聞こえないような小さな声で応えた。
?」
「そう……みたい。男がいたらあんな態度取らないだろうし」
『あの人、色恋沙汰には五月蝿いからさー』などと冗談めかして言ったが、はすぐに真面目な顔になる。
「どういうことなんだろう。何で……見えなかったのかな、のこと」

そういうは、少し俯き気味で、どこか淋しげだった。
はっと、はそんなの元へ寄る。
「……、……淋しい?」
「……
は唐突に相手の右手を、手を繋ぐように掴んだ。
「でも、私には見えるから、大丈夫だよ」
何がだろうね、と自分で心の中で問いかけながらが言った言葉に、




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最終更新:12:25 2006/06/27




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