その夢の始まり<夢小説:サモナイ2TOP
その夢の始まり
退屈で眠くなってくる終業式も無事終わり、は同じ学校の友人に挨拶をして自宅へと足を進めた。
「じゃーねー」
「バイバーイ。また二年生でね♪」
自転車のペダルをこぐ力も自然と強まる。終業式が終わったという事は、明日から数十日間、学校に行かなくていいのだ。
「さーて!家帰ったら何しようっ。スマブラかな、カービィかな……あ、FEもやりたいしサモナイもやらなくっちゃ!」
今の言葉の通り、は無類のゲーム好きだった。高校一年になっても、一日の大半はゲームである。
「まあ、宿題なんて少ないし、時間は沢山あるんだから思いっきり遊んじゃおう!」
家に帰ると、母親にいつも以上に元気な帰りの挨拶をして、は自分の部屋に走った。
制服を脱ぎ、いつものラフな私服に着替え、プレイステーションの電源を入れる。
「サモナイだけ借り物だしな……今日中クリア出来ないかな」
画面にバンプレストの眼鏡のマークが見えたとき、は兄がよくやっているスパロボのあの音楽を思い出した。




「こら!ゲームばっかりしてないで部屋の片づけでもしなさい!」
「このゲーム今ラスボス戦だから終わるまで待って!」
母の言葉には即答した。母は渋々部屋から出て行く。
そう言われるのも不思議ではないほど、その部屋は女性のものとは思えない様子だった。
生ゴミの空が全くないのが唯一の救いというところだろうか。
先ほど脱いだ制服のYシャツもそのままで、鞄も放り投げたまま。他がどうなっているかは説明するまでもないだろう。
ちなみに本人はベッドの上でのん気にTVゲーム中である。
「やった、倒した!ナイス、!」
言いながらガッツポーズを取る。やがて、会話が終わり、EDテーマが流れた後、画面いっぱいに髪の青年の絵が出された。
「あー……この絵を見るために頑張ったようなものよねー」
そう言い、は聞こえてくる声に耳を傾ける。
やがて、Webサイトで入力すれば壁紙やらがもらえるというキーワードを見た後、は『ふー』と満足げな息をついた。
一応クリアしたし、あんまりやる気ないけど片付けしよっか。
ゲーム機の電源を切って、埃がたつかなと思って窓を開けると、すでに月が出ているのに気付いた。
「あー……天気が良いから月がよく見えるねぇ……」
そう呟いて、ははっと数日前のあることを思い出した。机の一番上の引き出しをあけると、以前買ったい人形が見える。
確か、月の出てる夜、窓辺に置いとくんだっけ、と店員の言葉を思い出し、窓のふちに立てかける。何か起こると信じているわけではないが、折角買ってしまったのだからやってみないのも損だろうということである。
「さっ、片付けしよっか。夕食に呼ばれるときまででいっか。面倒だし」
本当はきちんと片付けをすればすぐに終わるのだが、彼女はこの様子。
自分の名を呼ばれた頃には、窓辺に置いた人形の事などすっかり忘れてしまっていた。



夕食後。
「さ、てと……明日には返さなきゃね、サモ2」
ゲーム機からCDを取り出し、専用のケースに入れる。それを枕の上に置き、『それじゃ、次は何しようかな』と言いつつ小型の青紫色のものを掴んだ。
「カービィ、ボスが勝てないのよねー……メタナイトに予想以上にダメージ喰らっちゃうし」
少しして、飽きたのかはカセットを交換した。だが、気分が乗らないのかすぐに換え、すぐにやめる。
最後には持っている『GAME BOY ADVANCE』と書かれたゲーム機の電源を切り、枕の上のほうに置いた。
「なんかやる気ないし、今日はもう寝よっか」
そう言い、私服姿のまま、ごろんとベッドに横になる。ベッドのそばの窓は開いたままだったが、どうやらそれには気付いていないらしい。
月の光が差し込んでくるまま、は眠りについていた。




翌朝。は息苦しさを覚え、気がついた。
(なんか……重い……?)
無意識のうちに布団を被っているのはよくあることだったが、普通布団だけでは息苦しさは感じない。
誰か、自分に乗っている?
そう考え、は眠いまぶたを持ち上げ、重い下半身の所の布団の上を見た。
「……すー……」
「…………へ?」
は一発で目が覚めた。
それもそのはず、今まで見たことのない、いや、会ったことがないが見慣れている男性の寝顔が見えたのである。
横になっていても、やはり一本の髪は立っていた。
っ!?」
その大声に、眠っている髪の青年は『う、ん……』とうなる。
服も、声も、全てが昨日やっていたゲームのままだった。
とおぼしき人物は、目を覚まし、辺りを見た。そして、必然的に、釘付けになっていると目が合った。
の目には、茶色の瞳が見える。
「な、なんで……が……こんなとこに……?」
「……?」
自分の名前を言われたはずなのに、髪の青年はなにやら理解できないような顔をする。
が驚いて無言でいると、相手は続けてこう言った。
「それは……か?」
「え……?」
は言葉を無くした。





どうやら、記憶喪失らしい。
色々と質問をして、たどり着いた答えはそれだった。
アメルのことも、のことも、何も覚えていないという。
(まぁ、自分の名前覚えてなくて、アメルとかのことを覚えてたら妙だけどさ……)
ふっと考え込んだは言う。
は……?」
その問いに、はそういえばまだ名乗ってないな、と思い出した。
「私は。 もうじき高校二年生……って、は知らないか」
ははは、と苦笑いしながらが言った言葉に、相手は反応した。
?」
「え……あ……」
そう質問され、は戸惑ってしまった。本当の事を教えるわけには行かない。
?」
(あ……そっか、記憶喪失ってことは自分自身のことも全く覚えてないんだ……)
どこか悲しげな顔でそう聞くは一瞬口ごもったが、直後、ニコ、と笑顔を見せた。
「えっと、どう説明すれば良いのかわかんないんだけど……でも!」
一息ついて、へ言った。
ない人じゃなかったのは、確実だよ」
満面の笑みで言うに、言われた相手は、心の中の不安が少し薄れたような気がした。
……」


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最終更新:12:24 2006/06/27




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