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第十一話
青・三国志
「あれ? 司馬懿、何してんの?」
唐突な声は、背後からだった。
私の記憶が正しければ、私の事を呼び捨てにするような女は一人しかいない。
振り返りながら、私は眉をひそめて女を見た。
「何をしているとは、どういう意味だ」
「だって、今日周瑜が来るんでしょ? 司馬懿はいなくて良いのかな? って思ってさ」
それを知っていながら、私の事は知らぬのか。――まったく。そういえば、この女も出ぬのだったな……。
「私は奴と話すような事はない。それよりお前、今は暇だろう。ついてこい」
返事を聞かず、私は自分の部屋へ歩き始めた。
「え? ちょっと司馬懿、どこ行くのー?」
以前言っていた、私や陸遜などをあらかじめ知っていたという事が気になる。陸遜から伝え聞いた話では、類似世界があるとのことだったが……。
「ちょっと司馬懿、無視しないでよ!」
言いながらは私の服の裾を掴んだ。やかましいわ、馬鹿めが。
「私の部屋だ。服を掴むな」
そう言うとはしぶしぶといった様子で手を離した。何をそんなにつまらなそうな顔をしておる。
自分の部屋の戸を開け中に入ると、背後で気配が変わった。
「うわー、司馬懿の部屋きれーい! すっごい整理されてるー!!」
その声と同時に、は私を抜かして部屋に入った。
「散らかしたら全て元通りにするまで部屋から出さぬぞ」
その声で、の動きが一瞬にして止まった。分かりやすい奴よ。
触るつもりはなくなっても興味は残っているらしい、私が椅子に座ってもこの女は立ったまま辺りを見回していた。
「適当に座れ」
私が言うと、それでやっと私が座っているのに気づいたらしい。は隣の椅子に座った。
この女には、警戒心がないのか? ……まぁいい。
「さて。お前が知っている事、全て話せ」
言うと、女は急に静かになった。直後、急に立ち上がったせいで椅子が倒れる音が部屋に響く。
「ってぇ、ちょっと待ってよ!? あたし無双のこと、どれだけ知ってると思ってんの!! 全部話すなんて疲れるっての!」
言い終えてから、は律儀にも椅子を直した。
「私は構わぬ」
「あたしが構うのよ!」
ふん、いつまでたってもやかましい奴だ。
「陸遜も姜維も周瑜の相手でおらぬ、しばらくは暇だろう。お前の知識を私が活用してやると言うのだ、その程度我慢しろ」
は子供のように頬を膨らませた。直後、ぷしゅうと息を漏らす。
「あたしの知ってることなんて曖昧だし、全体から見るとすっごい情報少ないと思うよ。いいの?」
「安心しろ、五割程度しか信用はせん」
「……それ、ちょっと腹立つんだけど」
ふん、と私が鼻で笑った直後、は思い出したように真顔になった。
「その歴史のなかで、陸遜とかが死ぬ原因になったようなことも、知ってるよ。話していいの?」
「構わぬ」
そう答えても、女の顔つきは変わらなかった。そんなどうでも良いことばかり気にしおって……。
「お前の知る私や陸遜がどのような死に方をしていようとも、我らには関係のない事だ。気にせず全て話せ」
はハアと溜息をついた。おい、それはどういう意味だ?
「全部って言ったら、黄巾の乱からかな……それ以前はほとんど覚えてないし。めんどくさいから、覚悟して聞いてねー」
そう言ってから、奴は話し始めた。






それは奴のいた所では『三国志』と呼ばれていたらしい。
曹操の建てた“魏”、孫家が建てた“呉”、劉備が建てた“蜀”の三つ巴の戦いとなっていた事からか……単純だな。
聞き覚えのある名前も結構出てくるな……。張遼、袁紹、二喬もか。
こやつの話に出てきているからには、こやつはほぼ知っているという事だが……。
「で、五丈原で対峙してた諸葛が寿命だか過労だかで死んで、蜀軍が退却し始めたのよ。それに気づいた司馬懿が追いかけたんだけど、蜀軍が急にまた攻めて来たから諸葛の罠だと思って、すぐに追跡をやめて固く守ったの。だけど諸葛は既に死んでるから、蜀軍は結局無事に退却できたってこと。はい、あたしが知ってるのは大体これぐらい」
「その後は分からぬのか?」
まぁ、予想は出来るが。
「んー、細かいところは覚えてない。蜀が魏に滅ぼされて、司馬懿の子だか孫だかが魏を乗っ取って晋って国になって、その晋が呉を滅ぼして三国統一」
やはり蜀が先に潰えたか。姜維がいようとも、君主があれでは――
「たしか陸遜の子が守ってる間は、斜陽の呉も滅びずに済んだんだってさー」
……当然だな。しかし……
「陸遜の事については妙に詳しい気がするのだが気のせいか?」
「え? あはは、気のせいじゃないかも。お気に入りキャラだし」
「きゃら?」
「あ、気にしないで」
私の知らぬ言葉を使うな、馬鹿めが。
ふん、まあいい。大半の情報は集まったな、後で書き留めておくか。
「ってか、何かに書かなくて良かったの? あたし、何回も話す気力はないよ」
思い出したようには言った。凡愚め、下らぬ所に気を使いおって。
「ふん、私の記憶力を甘く見るでない」
言うとこの女は驚いた顔を見せた。私はそれを無視して立ち上がる。
「えぇ!? もしかして全部覚えたっていうの!?」
目的の竹簡があるのは端の棚だったな。
「その程度、大した事でもない」
それを取り、机の方に向き直ると、の茫然としている顔が見えた。
それには何の反応もせず、私は机の上に竹簡を広げる。
「さて……お前も何か、私に聞きたいことがあるのではないのか?」
随分と手間取らせたからな。こやつは礼には感じぬだろうが、構わぬ。
「え? あたし? 司馬懿に? えっ別に――」
「例えば、天水付近の国の情勢、……などがな」
私が言い終わらぬうちに、女の目に炎が宿った。



4のEmpiresが発売しましたね〜。でもこの小説は融通が利かずに3設定のままです。(爆
領土がどのくらい増えても好きな武将を出撃させることができるとか、ありえませんけどね。
色々設定だけはあるので、話も進めて行きたいとです……。(何

平成18年3月25日UP


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最終更新:12:06 2006/06/27




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