友達が、もうすぐ誕生日でした。 その子は、とても可愛くて、優しくて、謙虚な子です。 ある女の子は、その子に誕生日プレゼントをあげようと思いました。 自分の誕生日の時に、小学生ながら盛大なパーティを開いてくれたことがあったので、 そのお礼の意味もかねて、立派なプレゼントをあげようと思いました。 女の子は、その子が時計を壊してしまったという事を知っていました。 以前、買い物に行った時に、その子の好みそうな可愛い時計を見かけたことがありました。 少々値が張りますが、これをあげたら喜んでくれるだろうと思い、 女の子はお小遣いを前借りして、それを買いました。 友達の誕生日当日。 女の子は、友達の家に行きました。 「誕生日おめでとう。誕生日プレゼントがあるんだよ」 女の子が言うと、その子は嬉しそうな顔をしました。 立派なプレゼントの箱を渡すと、その子は嬉々としてその箱を開けます。 ところが、中身である可愛い時計を見たとたん、その子はぽかんとした顔になりました。 喜んでもらえるかなと思っている女の子を、その子が見ます。 「これ、いくらしたの?」 突然の質問に女の子は驚きましたが、それでもその質問にきちんと答えます。 「来月のお小遣い、前借りしちゃったんだ」 苦笑いしながら女の子が言いますが、その子はニコリとも笑いませんでした。 「こんな高いもの、もうしわけなくてもらえないよ」 その子の言葉に、女の子はぽかんとしました。 「え? なんで? 時計、壊しちゃったんでしょ?」 「壊しちゃったのは、私が悪いことだから。これは、キミが使って」 その子は、時計を女の子に返しました。女の子は、それを受けとります。 「その気持ちだけで、とっても嬉しいよ。ありがとう」 そう言うその子の顔は、どこか困っているようにも見えました。 女の子は、その言葉を、どこかの雑音のように聞いていました。 友達の家からの帰り道。 女の子の目から落ちた涙は、手に持った時計を濡らしました。