おそろいの品
「なあ、リューグの首に巻いてるそれって、ロッカの髪の色みたいだよな」 「ねえ、ロッカが首に巻いてるそれ、リューグの前髪の色してるわよね」 二つの隣同士の部屋で、二人の召喚師が各々の目の前にいる男に聞いた。 今までレルムの村に住んでいたその相手は、壁を挟んで同時に返事をする。 「ああ、これはな――」 「ああ、これは――」 僕らがまだ小さい頃……アメルとも親しくなってきた頃のことですね。 普段しないようなことをしてみよう、と僕が企画して、リューグを強引にあるお店の裏の玄関に連れて行ったことがあるんですよ。 ……確か、服を作って売っている店でしたね。 裏口から入ると、金庫やまだ加工されていない布が沢山あるところについて、普段見慣れない、 大きく長い布に僕もリューグも感心していたんです。子供にとっては何でも興味の対象になりますから。 ふうん。……それで? バカ兄貴に連れられて行ったとこで、俺は兄貴の髪の色にそっくりな青い布を見つけたんだ。 それを言ったら、兄貴は少し驚いた様子を見せてから、辺りを見回して、俺の髪の色にそっくりな布を見つけてきた。 それを眺めていたら……急に俺も兄貴も、デカい手に捕まれて。 そこの店のオヤジが、後ろに立っていやがった。 あっちゃあ……忍び込んだの、バレてたのか…… でも、そこの店の人は結構豪快な人で。 僕らが触っていた布を見て、その人は面白いことを思いついたような表情をしたと思ったら、僕らを連れてある部屋に入っていったんです。 二つの布をこのように加工して、僕にはリューグの髪の色の、リューグには僕の髪の色のをそれぞれ、くれたんです。 タダで!? 良いのかって聞いたら、そいつは笑って『お似合いだ』としか答えなくてな。 その後、俺らが入ってきた裏口の所まで連れてきて、俺たちを離したんだ。 『他の店には、こんなことはするなよ』とだけ言い残して。 へえ…… その後も、まだまだ子供らしい事ですけどね。 僕はこれを気に入って、リューグに言ったんです。 『二人が離れた時でも、これをお互いだと思って大切にしよう』と。 『絶対に、無くさない様にしよう』と。 何だかんだ言っても、あの頃は本当に、仲の良い二人でしたから。 確かに、子供っぽい約束事よね 兄貴がその約束を覚えてるのかは知らねェけどな。 ま、それからはテメエも知ってる通りだ。 成長して、気が合わなくなっても……俺も奴もこいつを手放しはしなかったな。 なんか良いな……思い出の品じゃんか 双子の二人は、相手にこの話をし終えてから、ふとあることを思い出した。 「トリスさん、僕がこの話をしたってこと……リューグには特に、言わないで下さいね」 「……この話のこと、バカ兄貴には言うなよ」 この言葉を聞いて、相手も笑顔で『ええ』『ああ』と同時に返す。 「「言わないよ」」 トリスとマグナの答えに、ロッカはにっこりと笑い、リューグは微笑を浮かべた。 壁を挟んでほとんど同じことが成されていたなど、当人達が気づくはずはない。 首に巻いてるアレ、なんと呼ぶのか分からなかったので曖昧に。(爆 あんなに大喧嘩してれば、相手を思い出すものなんて持っていたくなさそうなのに きっちりおそろいにしてあるもんですから、つい……(笑/何 |