とらぶるメイカー。<小説:スマブラTOP
とらぶるメイカー。
「あーもぅっ、悔しいぃっ!!」
そう叫ぶのは、いまだ発展途中の赤い髪を持つ少年。
その言葉を聞いて、今いるこの部屋の主でもある一国の姫は苦笑を見せた。
「って事だったんだよ……」
ロイはいつの間にか握っていた拳をため息とともに解いた。
今までの説明を聞いて、ゼルダは一息入れる。
「つまり、先の戦いでマルスに圧勝されちゃったのね?」
ゼルダの問いかけに、ロイは力なく頷いた。
「そりゃ、マルスのほうが剣術も上だし強いのは分かってるけど……」
つい先ほどまで、ロイはしばらく大乱闘をしていたのである。
だがゼルダが言うように、途中でマルスも乱闘に入り、あっさりと一位を取られていた。
それまで調子が良かったせいもあってか、居たたまれなくなって飛び出してきたのである。
「で、私としては気になる事があるんだけど……」
「ん?」
「それで結局飛び出して、来る所がどうして私のところなのかしら?」
もっともなゼルダの意見に、ロイは顔を上げて相手を見た。
そして、はぁ、とため息をまたこぼしてから言う。
「俺がマルスと稽古してるのは知ってるよな?」
「ああ、ええ」
確かよく庭で手合わせしていたのを見たわね、とゼルダは思い出す。
「でも、それでもマルスにはまだ勝ててないから、俺としてはマルスとの稽古以外にも修行時間を増やしたいんだよな」
「そう……なの?」
いつもクタクタになるくらいまで頑張っているような気がするんだけど。
ゼルダがそう思っていることなど露知らず、ロイは真面目な顔でまっすぐ相手を見つめる。
「何より、マルスと稽古するって事はマルスも同じ時間修行してるわけだから、それだけじゃいつまで経ってもマルスより強くならないんじゃないかって思って」
「あ、まぁ……それはそうよね」
「だから……」
ロイの言葉がそこで途切れた時に、ゼルダはずっと自分を見つめている相手に気づいて少し頬を赤らめた。
そのロイの行動は恐らく無意識なのだろうが、さすがに異性にじっと見られているのはいくらか気恥ずかしいものがある。
「特訓、したいんだよ」
「……え?」
そんな事を考えていたせいか、ロイの続く言葉をゼルダは一瞬理解できなかった。
「マルスに内緒で、特訓したいんだ」
繰り返し言われて、やっとゼルダは落ち着いてきたようである。
「特訓、ねぇ」
そう呟いた時、不意にロイは一歩 顔を近づけた。
その表情は変わらず、真剣そのものである。
「で……ゼルダ姫、特訓相手になってくれねぇかな?」
「えっ……?」
話すにしては近すぎるその距離に、ゼルダが小さく後ろに下がる。ロイもその行動に気が付いたようで、距離を取るように体勢を直した。
「知恵のある人が相手なら、戦う時の俺の短所とか……分かるかな、と思って」
どこか気まずそうに髪を掻きながら、遠慮がちにロイは言う。
ゼルダはそれに納得してから、また疑問に思うことを見つけた。
「……じゃあ、なんで私なの?他にもそういう人はいると思うけど」
「ああ、それは……」
一旦言葉を切ってから、ロイは苦笑を浮かべながらこう繋げた。
「頭が良くて、こういう訓練してることマルスに喋らなくて、俺と一対一で乱闘してても不思議がられないで、協力してくれそうな人。そう考えたら、ゼルダ姫以外に当てはまる人いなかったんだよ」
ゼルダの表情は、驚きと呆れの混じったような表情になっていた。
「そう……なの?」
ロイは、こくんと大きく頷く。
「マリオやルイージとかファルコンじゃうっかりマルスに言いそうだし、クッパやドンキーじゃそういう相手には向かないだろうし。ファルコやフォックスやサムスやミュウツーとかは協力してくれるか分かんねぇし、アイクラやネスやカービィ、他のポケモン達は頭が良いとは言えねえし。『マルス様ー』とか言ってるピーチ姫がマルス対策なのに協力してくれるなんてまず思えねえし、あんまり乱闘してないガノンが相手だと皆に不思議がられそうで」
この屋敷にいるほぼ全員の名前を挙げながら言うロイに、ゼルダはぽかんと呆れた顔をしていた。
「だろ?」
「うーん…まぁ、確かに……」
苦笑して言うゼルダに、ロイはぐっと力を入れるように強く言う。
「随分時間掛かるとは思うけど……付き合ってくれねえかな?」
「うーん……」
そんな曖昧な返事をしていたが、ゼルダには特に断る理由も無かった。
自分が相手で特訓になるんだろうかとゼルダがそんな事を考えているなど知らずに、その微妙な表情で渋っているのかと思いロイは声を大きくして叫んだ。
「頼む、ゼルダ姫っ!付き合ってくれ!」
そう言った後、ロイは無言でゼルダを見つめていた。
相手の一生懸命な様子を見て、ゼルダは小さく苦笑する。
「私でよければ」
相手の返事に、ロイは少し間を置いて喜びの混じった笑顔を見せた。
ゼルダもそれに同じように笑顔を返す。
直後、ふとロイは思った。
「あ、マルスの耳に入んないよう、この事は誰にも内緒にしてくれねえかな?」
「誰にも?」
「ナナとかの耳に入ったら次の日には全員にバレてそうだからな」
「あぁ、なるほどね。分かったわ」






話がまとまり、いつの間にか夕食時になっていたので二人はゼルダの部屋の扉を開けて。
そこで、ロイはある人物の姿が目に入った。
「あれ? リンク、何固まってるんだ?」
呆然とした姿でゼルダの部屋の前にたたずんでいるのは、夕食時にも忙しくなりがちな、緑服の青年。
リンクは、ロイを見て、直後ゼルダと目が合ったときにハッと意識を戻した。
「あ、いえ、えーと……晩ご飯の時間、だ、ったので……」
「あら。ごめんリンク、遅くなっちゃって」
恐らく自分を呼びに来たのだろう相手に笑顔を見せて、ロイの後ろからゼルダが言う。
それに対し『あ、いや……』と微妙な返事をするリンクを放っておくように、ゼルダは食堂へと歩き始めた。
ロイもその後についていくように行こうとしたのを見て、ハッとリンクは声を出していた。
「ロイさん、ゼルダ姫の部屋で何をしていたんですか?」
「へっ?……あぁ、何でもねえよ」
心なしか微笑しながら言うロイに、リンクは少々ぎこちないような笑みを返す。
ゼルダに続いてロイも歩いていくのを見ながら、リンクはポツリと呟いた。
「……付き合ってくれ、というのは……何でもない事でしょうか……!」
ハイリア人の耳は長い。
即ちそれは扉を挟んでも声が聞こえるという事で。
本当はゼルダを呼ぶというよりはただ通路を通ろうとしていただけのリンクが、ロイの叫んだ言葉を聞いてその場で固まってしまったというのが事実であり。
それ以前の会話を聞いていないリンクが、『特訓』という事柄に気づくはずもなく。
「……ロイ…さん……!」
歩き去った赤髪の少年の方向を見ながら、リンクは小さな、恋敵という意味での敵意を、確かに感じ取ってしまったのであった。



といっても別にシリアス話にはなりませんよ(笑)。
とりあえず、ロイとゼルダ、会話中に恋愛的なものは全くありません。
それでロイゼルって言って良いのかって感じですがー……(苦笑
ちなみにタイトルは一応ロイの事のつもりです。(汗

平成16年9月8日UP


スマブラ

TOP

最終更新:18:05 2006/07/09




100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!