やっぱりいつもが恋しくて。<小説:スマブラTOP
やっぱりいつもが恋しくて。
「ロイさんっ、食堂を水浸しにするのはやめて下さいっ!」
「まーまー、水だったらそのうち乾くだろー?」
「人にバケツいっぱいの水をかぶせておいて、よくそんなに簡単に言えるものだね……」
「マルス、風邪引いちゃうよー?」
「だいじょぶだいじょぶ、馬鹿は風邪引かないって言うしなー」
「ほぉぉ……? それは君に同じことをしても構わないってことかな?」
「いや、俺は寒いの苦手だからやだ」
「人の意思なんて初めから聞かないくせに、よく言うね」
「どちらにしても床が濡れて後片付けが大変になりますからやめて下さいってば!」
「あはは〜♪」





ロイの悪戯も終わり、その日がそれ以外に何事もなく終わった夜。
カービィは、いつもどおりに自分の部屋のベッドに入った。
「今日も、楽しい夢が見られますように♪」
ベッドのすぐ近くにある窓から夜空に浮かぶ星を見ながら、カービィはそう言ってから目を閉じた。
カービィが目を閉じた直後、彼が見ていた星の近くで流れ星が落ちる。
それは不思議なほどに輝いていたのだが、すでに眠りについていたカービィがそれを見ることはなかった。



小鳥がさわやかに鳴く朝。
開けっ放しにしていた部屋の扉から、何やら料理の良いにおいが漂ってきて、カービィはガバッと起き上がった。
そして、なんかいつもと違うなぁ? と違和感を感じ、時計を見る。
「あれー、なんでこんな時間なのー!? 朝ごはんーっ!!」
朝食に遅れていた場合は、マルスやらリンクやらが大抵自分を起こしてくれるはずなのに。
でも仕方ないかーとあっさりと考えてから、カービィは自分の分の朝食を食べるべく食堂へと走っていった。

食堂について、カービィは自分の目を疑った。
普段の食事は必ず屋敷の住人全員でと決まっているはずなのに、そこにいる人数はあまりにも少なかったのだ。
発見したのは、食器を片付けようとしているらしい赤毛の剣士と、その近くのイスの上であくびをしている緑服の人物。
そして、テーブルの端にあるイスに座って本を読んでいる、カービィがずいぶんと見慣れている青い髪の人物だった。
「あれ、カービィ。おはよう、今日は早いんだね」
そう彼に声をかけてきたのは、赤い髪が特徴の、幼げな少年だった。
――つまりは、ロイである。
「ロイ? なんでそんなしゃべり方なのー?」
「え? 何かおかしかった?」
カービィがなぜそんな事を質問するのかが分からない、とでも言わんばかりにロイは笑顔を見せてそう答えた。
その二人の話し声が聞こえたのか、リンクもこちらを向いてカービィに気づく。
「お、カービィ。はよっ」
「リン君ー……?」
カービィは先ほどロイにした質問をもう一度言いたくなった。
というのも当然である。カービィの記憶にある彼は常に敬語で話していたはずなのだから。
「腹が減ってやってきたのか? あ、飯は厨房にあっから、勝手に取って食えよ」
「別にそのくらい、用意してあげても良いんじゃないの?」
リンクのあっさりとした発言に、ロイが苦笑しながらなだめるように返す。
『だってめんどくせえもん』と彼はまたはっきり言って、両手を頭の後ろで組んだ。
「作る事ぐれーしか決まってねぇんだから、その他はどーだっていいだろ。早起きして作ってんだからそれだけでも感謝しろよ」
「リンク、そんな言い方はないんじゃない?」
そう言っても変化がないのは分かっていながら、ロイがまた苦笑する。
カービィはというと、現在のその状況に頭がついていかないのか、呆然としていた。
そして、ふと気づく。
「――マルスはっ!?」
「は?」「え?」
カービィが急に叫んだ言葉に、リンクとロイは驚いた様子を見せた。
そして、二人とも『なんでマルス?』とでもいうような表情をする。
本人――もといマルスは、本に向けられた視線をちらっと一瞬だけその声のほうへと向けていた。
「カービィ、マルスがどうかしたの?」
「おいマルス、お前カービィに何かしたのか?」
カービィに質問してくるロイと、離れた位置にいるマルスへと声をかけるリンク。
カービィが何を答えればいいかと迷っているころ、マルスは視線をこちらに向けることなく一言で答えた。
「別に、僕は何もしていない」
断定の口調で、カービィが覚えている普段の様子は微塵も感じさせない冷たい様子で彼は言った。
それにカービィは驚きで表情が固まる。
「だよなぁ、つまんねぇ事に興味なさそーなマルスがカービィに何かするはずねぇもんな」
「何か気になる事でもあったの、カービィ? ……カービィ?」
はははは〜と冗談のように笑いながら言うリンク。
ロイは、カービィの反応のない様子に不思議がっていた。
彼がカービィの返事を待って、少し間があいた後。
なんでぇーっ!?
「えっ!?」「んぁ?」
カービィの突然の大声に、ロイは驚いて半歩下がり、リンクは『何だぁ?』とでも言わんばかりにそちらを向いた。
「なんでマルスが優しくないのっ!? なんでリンクが敬語じゃないのっ!? なんでロイが『俺』じゃないのぉーっ!?」
「え? え? え?」
ロイは驚いており、マルスはその音量のでかさに表情を歪めた。
そして、リンクは。
「おい、カービィ。どういう事か話してみろよ?」
面白そうなものを見つけた子供のように、目を輝かせながらそう言った。

「つまり、お前の記憶によると、マルスはもっと優しいヤツなんだな?」
その確認に、カービィはこくりと頷いた。
「それで、リンクは誰にでも敬語で話す礼儀正しい人、で……信じられない……」
「おいロイ、そりゃどーいう意味だ?」
リンクはそう言ってロイの頭の上にゲンコツを作ってぐりぐりと回す。
「痛い痛い痛いっ、痛いってリンク!」
「言葉の意味そのままじゃないか」
さり気なくさらっとつぶやいたマルスの言葉に、リンクが『そーですかい、無愛想王子様』と、手はそのままで顔をそちらに向けて答えた。
「俺にはマルスが優しいってののほうが信じらんねーけどな。あのピカチュウやらピチューやらが構うだけで手で払いのけるようなヤツが」
「読書の邪魔をするのが悪いだろう。僕にだって都合はあるんだ」
相変わらず視線は手元にある本に向けながら、マルスがきっぱりと言う。
『んなこと言って、都合良いときなんてねーくせに』とリンクがからかうように応えると、カービィがひょこっとこう言ってきた。
「マルスは、いっつもボクのほうに合わせてくれてたよー?」
「だそーだぜ、マ・ル・ス?」
カービィの意見をうまく利用して、リンクがマルスに揺さぶりをかける。
マルスは『ギロッ』という効果音が似合うような目つきでリンクを睨みつけた。
「それはそこのカービィが勝手に言っているだけだろう。僕には関係ない」
「ちょっ、二人とも……。喧嘩はやめてよ」
リンクの手から抜け出して、息を整えながらロイは弱々しくそう言った。
だが、マルスもリンクも、ロイの言葉など全く気にも留めていないようである。
「ロイも違うけどなー……」
カービィがポツリと呟いた言葉に、ロイは『え。』と言葉を濁した。
リンクはそのカービィの言葉に、またそちらを向く。
「ロイが俺みたいな性格なんだろ? こっちのロイとは大違いだよなー」
「り、リンク!」
リンクの言葉を否定するようにロイはそう言うが、マルスもカービィもそれに対して否定はしなかった。
「それで、彼をどうするつもりだ?」
ロイのことは無視してマルスが言った言葉に、だがリンクとロイは驚いた様子で彼を見る。
「マルス、どーしたんだ!?」
「やっぱり彼の言葉に心を打たれたの?」
その二人の反応に、マルスは心底嫌そうな表情を見せて顔を背けた。
カービィはその二人の行動の意味がよくわからないらしく、『?』マークを浮かべた表情をしている。
その様子に気づいたロイが言った。
「マルスが他の人のことを心配するなんて、全然なかったからさ。驚いちゃって」
「そうじゃない。このままここにいられても迷惑だから言ったんだ」
変わりないマルスの様子に、ロイは残念そうな顔をした。
「でもまぁ、事実カービィをどうするかは問題だよな。お前だって元の場所に帰りてーだろ?」
自分へと向けられたリンクの言葉に、カービィも頷くことで肯定する。
「ボク、マルスの頭の上がいいもん〜!」
『マルスの頭の上なんてよく言えるよな』とリンクが小声でロイに言った言葉に、彼は苦笑しながら返事をした。



「つっても……」
「手がかりはなし、かぁ……」
しばらく時間を掛けて調べたつもりだったが、この事について何も分かる事はなかった。
こういう不思議な事に詳しそうなドクターマリオも、部屋に鍵が掛かっていて呼んでも返事がなかったのである。
「どうして、今日に限って誰にも会わないのかなぁ」
「まぁ、元から交流も盛んじゃなかったしな。あいつみたいなヤツもいたし」
『あいつ』という言葉と同時に、カービィを肩に乗せていたリンクは横目でマルスを見た。
本人も納得しているのだろう、それに対し返事はない。
「ごめんね、カービィ。元のところに戻る方法が分からなくて」
ロイが申し訳なさそうな顔で自分にそう言うのを見て、カービィは『ううん』と笑顔で言った。
「こっちのみんなともお友達になれたから、いいよー♪」
「はははは、カービィらしいな」
リンクが笑うその隣で、マルスは『だからこういう能天気なヤツは嫌なんだ』とでも言いたげに微妙な表情をしていた。
「大体、友達になんてなった覚」
「そうだね! カービィ、僕らとも友達だよ!」
偶然なのだろうが、マルスの言葉を遮るようにロイがそう言った。
マルスの額に青筋が入った所を目撃して、リンクが顔を逸らし声を抑えて笑う。
「……ロイ」
「え?」
名を呼ばれてロイがマルスのほうを見て……彼は硬直した。
どうやら、マルスの背後にどす黒いオーラが見えたようである。
「わぁぁ、いや、そういうわけじゃ、じゃなくて、えーと、」
「言い訳はよさないか」
マルスがサラリと神剣ファルシオンを抜いたのを見て、とばっちりは御免だと言わんばかりにリンクがその場から少し離れた。
「わぁぁぁぁああ!! ごめんってばぁぁあ!?」
傍観者に徹したリンクとその肩に乗っているカービィは、笑ってその様子を眺めている。
「ロイも元気あんなー」
「みたいだねー」
あはは、と笑っていたカービィの元に、ふと、誰かの声が聞こえた。
「……ビィ」
「え?」
肩に乗っていたカービィが急に声を出したのを不思議に思い、リンクも『ん?』とこちらを見る。
「どうした?」
「カービィ!!」
ふと、カービィはそれまで自分が見ていた世界がぼやけるような感覚を覚えた。





カービィが気がついたとき、目の前にいたのはマルスだった。
「よかった、気がついたんだね」
「? マルス?」
「そうだよ」
優しい口調で言う青髪の青年に、カービィは一瞬目が潤んだ。
「マルスー!!」
カービィの動きにしては非常に速いスピードで、彼はマルスの胸元へと飛び込んだ。
その様子に驚いて体をのけぞらせながらも、マルスは彼の体が落ちないようにと手を添える。
「おい、カービィ。お前俺らの姿見えてないだろ」
ふとそんな声が聞こえて、カービィは視線をそちらへとずらした。
そこには、マルスより背の低い、赤い髪の少年。
ロイの後ろにリンクとDr.マリオの姿も見えた。
「ロイ? リンク? マリオ?」
「おはようございます、カービィ」
敬語でにっこり笑って言うリンクに、カービィもぱっと笑顔になる。
マリオのほうを見ると、彼はやれやれといった様子で頭を掻いていた。
「お前、俺の作った薬飲んだだろ?」
「くすり?」
「昨日、テーブルの上にあった、甘い匂いのする不透明な緑色の液体ですよ」
リンクの説明で、カービィもそれを思い出す。飲んだのは事実だった。
「あの薬のせいで、不思議な夢を見たんだろうなァ。あれは親しい人の性格の一部が欠けてる状態の――」
「おーい、カービィ理解してねーぞー」
白衣を着たマリオの言葉をロイが途中でさえぎる。カービィはというと、ロイの言うとおりマリオの言っていることの意味が分からず首をかしげているところだった。
「とにかく、夢だったんだよね?」
真上にあるマルスの顔を見ながら、カービィが聞く。
「ああ、そうだよ」
「これからも普通どおりなんだよね!?」
マルスはもう一度頷いてみせた。
「わぁあい♪」
カービィの今の喜びようから、一体夢ではどうだったんだろうなと、ロイとリンクは顔を見合わせた。



相変わらずオチが面白くないよなぁ、と思ってしまってなんとも……(何
あ、キリ番は小説とイラストと別々に進むので、イラストがまだでも怒らないで下さいね♪(殴
とりあえず、白樹サマ、6900Hit報告&リクありがとうございましたv

平成17年4月6日UP


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最終更新:18:11 2006/07/09




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