でも、カッコいいのかもね。<小説:スマブラTOP
でも、カッコいいのかもね。
「ねー、ファル君ー!」
いつものピンク丸のそんな明るい声が聞こえて、ファルコは何か胸騒ぎがした。
呼ばれたので振り向くと、足元にカービィがいる。その頭の上には、透明なビンに入った、気持ち悪いほど真っ青な液体があった。
そしてカービィの表情は、いつもに増して楽しそうである。
「あァ?」
「これ飲んでー♪」
満面の笑みで言うカービィに、ファルコは相変わらずの不機嫌そうな顔で、『ふざけんな』と即答した。
「誰がそんな怪しげなモン飲むかってんだ」
「だめー!飲むのーっ!!」
少し怒ったような口調で言い、カービィは頭の上にあったビンを自分のそばに置き、ふたを開けた。
急に、青い液体からとは思えない甘い果物のような匂いがあたりに漂う。
カービィはそれをひょい、と、自分の頭の上に持ち上げた。ぽちゃんと中の液体が揺れる。
(…こいつ…まさか…)
「飲んでーっ!!」
そう言うや否や、カービィはそのままの状態で体当たりするようにファルコに向かってきた。
となれば、何やら先ほどから嫌な予感のするファルコは逃げることを選択する。
普段の足の速さならすぐ逃げ切って終わりなのだが、今日のカービィは異様に足が速く、追いかけっこ状態はしばらくの時間続いていた。
「飲んで飲んで飲んでぇー!」
「誰が飲むかっ!」
「ファル君がぁー!」
その追いかけっこが終わったのは、玄関に近い広間に差し掛かったときだった。
ファルコの視界には、自分たちの遊撃隊のリーダーが大きな買い物袋を両手に抱えている姿が入った。
自分の進行方向に丁度いるので、仕方なくファルコはそのそばを通り抜けようと避けた…つもりだったのだが。

ドン

「わっ!」「なっ…」
フォックスと同じく大きな買い物袋を持ったリンクと体当たりしてしまった。その衝撃でリンクの持っていた袋から野菜の類がこぼれ落ちる。
「ファルコ?何してるんだ、そんなに急いで…」
その様子に気づいたフォックスがそう言う。だがそれにファルコが答える前に、もう一人やかましい人物がこの場に現れた。
「おーじょーぎわが悪いぞーっ!」
ファルコの姿を追いかけて、上ばかり見ながらふたの無いビンを持って全力で走ってくるカービィ。
ファルコはそれに気づき、もう一度逃げるため走り出そうとしたのだが、フォックスに左の腕をつかまれてしまった。
「往生際が悪いって…。遊んでやれば良いじゃないか」
当たり前だが、何も知らずにあっさりとそう言うフォックス。
「そういう問題じゃ…」
「あっ、カービィ!危ないっ!」
ファルコがフォックスに返そうとしたセリフは、リンクの唐突な大声でかき消されてしまった。
いまだファルコに向かって走っているカービィは、その声に驚きつつもスピードは落ちず、ふと足が何かにぶつかりバランスを崩した。
「わっ!?」
カービィは転び、今まで持っていた物を放り投げる。今まで猛スピードで動いていたそれは、当然の如く、当初の目的の人物――ファルコの頭に思いきりかかった。

バシャアンッ

「あ…」
フォックスが腕を離すもやはり遅く、ファルコは全身青い液体でびしょぬれになってしまった。
カービィが振り向き足元にあったものを確認すると、そこにあったのは玉ねぎ。先ほどファルコとリンクがぶつかった時に落ちたものの一つだった。
「てめぇ…何しやがるっ!!」
そう言い、濡れた手のままカービィを掴もうとしたファルコ。
だが、その手がカービィに触れる前に、急にファルコの身体から溢れんばかりの光が出てきた。

ぱぁぁぁぁぁ…

「わ!?」「なっ…?」「え…?」
一瞬、全く姿が見えなくなったと思った直後、カービィはガシッとわし掴みされた。
カービィやフォックス、リンク、そしてファルコ自身も、先ほどの強い光によってくらんだ目が少しずつ戻っていく。
その四人が見た、カービィを掴んでいる手は――肌色だった。
「ファルコ!?」
フォックスの驚いた声にファルコはそちらを振り向く。そのそばに居たリンクも驚いた顔をしていたが、それ以上に違和感があったのは、視界にちらちらと入る、青い毛だった。
…否、『髪』と言ったほうが正しいか。
「わーっ、ファル君が人になっちゃったー!」
フォックスやリンクやカービィの目に映っていたのは。
目の下あたりに刺青のように赤色があり、そして、ボサボサで刺々しい印象を与える、真っ青な髪の毛の人物だった。
頭の先には、何故かいっぽんだけがくるんと丸まって上に跳ねている。

「なっん…だこりゃあっ!!」

姿がどれだけ変わっても、その声は今までのファルコと同じだった。



フォックスに鏡を持ってきてもらって、自分の姿を確認したファルコは、ギロ、とカービィを睨んだ。
「丸。どーいうことだ、こりゃあ?」
怒り満点の低い声だが、カービィには大して効き目は無い様子。
ガシッとファルコがカービィを鷲掴みすると、それは痛かったらしく喋り出した。
「ネスがこれをファル君に飲ませてみてーって言ってたのー」
「あのガキが?」
「うん。ファル君あたりなら面白そうだからってさ」
きゃは♪と楽しそうに喋るカービィとは対照的に、ファルコの額には青い筋が浮かんだ。
「あのガキの部屋はどこだ」
「この状態じゃ連れてけないよー」
離して、と言っているカービィをファルコは地面に投げつけた。頭から落ちる体勢になったが彼の身体では特に痛くはない。
くるっと体を立て直し、小さな体で走り出したカービィを、今や完璧に人間となっているファルコは歩いてついていった。
…フォックスやリンクの事は全く忘れて。
「…あの状態で屋敷の中歩いたら、それこそ大変な事になりそうだと思うんだけどな…」
「確かに…。と言うか、一目でファルコさんだとわかる人はいるんでしょうかね」
「あ。それもそうだな」

「あれ?カービィ、随分楽しそうだねー」
「何かあったの?」
歩いている途中で、カービィはアイクラの二人に声をかけられた。通路なので、どうやらポポとナナの今の位置では彼の後ろにいる人物の姿は見えなかったらしい。
カービィは足を止めて二人を見たが、ファルコは歩みを止めなかったので、じきにポポやナナの視界にもその人物の姿が入る。
カービィが返事をする前に二人は驚いた。
「えっ、!?だ、誰!?」
「ちょっ…まさか…」
マルスより明るい青い髪に、目の下には赤くカラーペイントなのか刺青なのか色がある、男の人。そんな人物がカービィの後ろを歩いていたのである。見知らぬため、驚くのも無理はない。
服装がどこかで見慣れているような気がするなあとポポが思ったとき、ナナが先ほどの言葉の続きを言った。
「ファルコ!?」
ポポは相棒の言葉に、一瞬耳を疑った。
「え?」
「るせーな…イチイチ叫んでんじゃねーよ」
機嫌の悪そうなその声はまさしくファルコである。確かにファルコみたいだ、と思いつつポポはその人間となっている人物をジッと見ていた。
「ネスにもらった薬を被ったら、こんな風になっちゃったんだよー♪」
ニコニコと笑顔で言うカービィに腹が立ったのか、ファルコはブラスターをカービィの頭に落とした。
当たったカービィは頭を押さえ、半分涙目で振り向く。
「ファル君、ひどーいっ!」
「るせぇ」
そんな様子を傍目で見ていたアイクラの二人は――ポポは苦笑して、ナナは普通に笑った。
「まぁ、体に害がないなら良いんじゃない?」
「てことは、ネス君の部屋に行くのね?」
二人の異なる問いに、カービィは『うんっ!』と大きく顔を上下に動かしながら答えた。
「じゃ、ポーちゃんにナーちゃん、また後でねー!」
アイクラにそう言い、飛び跳ねるように走って行ったカービィの後を、ファルコがついていった。

そんなこんなでネスの部屋。
カービィとファルコが部屋の前に立つと、ノックをするより先に相手のほうから扉を開けてきた。
「や、カービィとファルコ。」
ネスの表情はいつもののほほんとした様子である。カービィがネスの挨拶に同じような調子で応えていると、ファルコがギロリとネスを睨んだ。
「どーしてくれんだ、これはよ」
「まぁまぁ、そんなに怒らないで」
「怒らねーでいられるかっ!!」
ファルコの尤もな反論に、ネスは本心では反省していないような苦笑を見せた。
「それにしても結構ちゃんと変化するもんだねぇ。ドクターの作った薬だったからちょっと自信なかったんだけど」
「あぁ?」「え、ドクターが作ったのー?」
ネスの言葉に二人がほぼ同時に反応する。カービィの問いかけにネスはうん、と頷き、『材料が珍しいから沢山は作れなかったらしいけどね』と呟いた。
「つーことは、ヤツの部屋に行きゃ治す薬があんのか?」
ファルコの問いに、ネスはそちらを見て…その質問に答える前に、カービィに対し言った。
「それにしても、頭に一本だけ丸まって跳ねてるの、揺れてて面白いよねぇ」
「そーだよねー♪あれだけくるって丸まってるから面白ーい」
それにそのまま返すカービィも含めファルコは『オイこらテメエら』と怒った様子を見せた。
仕方なしに、ネスがそれに応える。
「うん、今はあるよ。『擬人』の薬は『擬獣』の薬で相殺されるはずだから」
「ぎじゅう?」
ネスの言葉に、カービィがまた疑問を返す。ネスはくす、と笑ってから、あっさり答えた。
「造語らしいけどね。擬人は人じゃないものを人にしちゃうって事で、擬獣は人を動物にしちゃうって事として使ってるって」
その答えにさらに悩んでいるカービィとは別に、ファルコはすでにDr.マリオの部屋へと向かおうとしていた。ネスはそんな相手に話しかける。
「でも、そんな姿であるのも珍しいんだしすぐ治らなくても良いんじゃないの?」
「……違和感があんだよ」
後姿のままそう答え、ファルコはそのまま歩いていった。カービィが遅れて気づくが、すでにファルコの姿はなくなっていた。
ネスはファルコが歩いていった方向を見て、くすっと笑う。
「まぁ、確かに『今は』あるけど、ファルコは使えないんだけどね…」
その呟きはカービィには聞こえなかった。

マリオに聞いたところ、その薬は部屋に入ってすぐ左の棚に入っている赤紫色の液体との事だった。
ファルコは人間の姿をしていたのだが、マリオはルイージと一緒に沢山のキノコを並べて何か集中して話していたらしく、その事について反応はなかった。
そして、色々な意味で危険視されている通称“研究室”の、Dr.マリオの部屋についてから。
今までの事にうんざりしながら、ため息などをつきながらファルコはその部屋の扉を開けた。
と同時に、中で『げっ!?』などという聞きなれた声が聞こえた。
「やばっ!」
「あ?」
その人物は慌てて走ろうとしたらしい、うるさい足音が聞こえたかと思った途端、ガッと何か引っかかるような音がした。
扉を開けていたファルコが見たのは、いつも悪戯をしようとしている赤髪の少年。
…が、足元のビンに引っかかり、――ファルコの位置から見て――出入り口からすぐ左にある棚に向かって、倒れようとしている状態だった。

ガラッ ばしゃあぁんっ

「うわぁっ!」
「な゛っ…」
そこにあったはずの赤紫の液体は、体当たりするような形になったロイへと降りかかり、辺りへも散らばった。
そして、もくもくもくとあたり一面に煙が立ち始める。
「な…なんだ?」
薄赤紫色の煙に視界が遮られ、ファルコはその場に立ち尽くした。カラァンと、まるで剣の入った鞘が落ちたような音が響く。
少しすると、煙はやがて消え、…視線を落としたファルコの視界に入ったのは、空になったビンと、そのそばにいた…動物だった。
「…きゃん?」
犬。
ついでに言えば、そのもう一つ隣には封印の剣。
「きゃんきゃんきゃんっ!?」
ファルコはあることを理解してから、混乱しているのかうるさく吠える小型らしい犬を、乱暴に掴み上げた。
「なんて事してくれやがったんだ、ロイっ!!」
「きゃんっ!?」
ロイが被ったもの。それは言うまでもなく、先ほどネスの説明した『擬獣』の薬。
そして、ファルコが元の姿に戻るのに必要なもの。

結局、材料不足のため擬人の薬も擬獣の薬も作る事が出来ず、薬の効果が切れるまでの約一ヶ月間、二人はそのまま過ごすことになったとの事。



『擬獣』は造語ですんで、実際に使用はしないで下さいね(苦笑
とりあえず、擬人化ネタ。行ってみました。私の考えるファルコ擬人化はあんな感じ。
…言っておきますが、頭の跳ねた毛ってのはサモナイをやる前から考えてあったので、ロッカの真似じゃないですからね!(苦笑

平成16年7月1日UP


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最終更新:18:10 2006/07/09




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